中学校の勉強は包丁のようなものだ
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記事:髙山 彩子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「中学校の勉強は何の役にも立たない」という人がいる。それは本当だろうか。
私が中学生だったのはもう30年も前のことだ。その時確かに私は、何のために勉強するのかわからないと思う中学生の一人だった。頑張っても報われない、大して変わらないと思っていたし、同じ点数に何人も並ぶ受験戦争にうんざりしていた。第二次ベビーブーム真っただ中の一人で1クラス45人ぎっしり、県立高校は定員を1~2学級増やして募集するも人気のある所は100~200人が落ちる計算だった。都市部ではない新潟県だったにもかかわらずだ。正直、将来就きたい職業なんてわからなかった。目的のはっきりしていた子はモチベーションの維持やアップができていたのだろうか。成績が下がると怒られるから勉強していたと今になるとはっきりわかる。もちろん、中学浪人なんてしたくなかったし、落ちたらいやだからという気持ちもあった。どちらにせよ、いやいや勉強をしていたのは確かだ。最悪の事態を避けるためだけの勉強なのだから、受験生になっても10時きっかりで就寝する習慣は変わらなかった。それでも勉強はしていた。無事、志望する高校には入れたのだから。
そんな私は今、学習塾を経営している。小学生や中学生が通ってくれている小さな学習塾だ。中学生の私が見たらなんというだろう。間違いなく「嘘だ」というだろう。うちの塾は基本積極的に勉強を教えない。いわゆる自立型個別学習というやつだ。皆それぞれにやってきて好きな席につき、テキストやプリントをやる。私はその様子を観察している。困っている子がいたらそばに行って、声をかけて、辞書や教科書で調べてもらう。たまにはコピー用紙に類題を問いて見せてそのまま渡す。うまくいっていない子にはコーチングセッションで引っ掛かりを一緒に探したり、一緒にマインドマップを描いて思考の整理をしたりする。生徒たち曰く、学校の勉強の内容なのに、ここでの勉強は全く違うんだそう。時々みんなで冗談を言ったり、楽しく実験をしたりする。異年齢でも一緒にだ。お迎えを待っている小さな子に、中学生が折り紙を折って見せたりする場面もよく見かける光景だ。
入塾の面談の時、あるお父さんが私にこう言った。「勉強なんて嫌ならやらなくてもいいんだといっているんです。どうせ役に立たないし。ほかのことを伸ばすのでもよいのでは」と。そんなとき私はこう答える。「そうですね。ほかのことを伸ばすのは良い考えだと思います。お父様はお子さんのことをよく見ておいでですね。得意なことを伸ばしてあげたいと思われるのは素敵な考えだと思います。でも中学の勉強が役に立つか立たないかは、使い方次第なんです」と。
中学校の勉強は即座にそのまま役に立つものも結構ある。例えば料理をするときにレシピにのっている材料が3人前だったとして、4人前を作るにはどうしたらよいかなどは比を使ったらよい。山登りをして山頂付近でインスタントラーメンを作ってもなんとなく心が残った感じになるのは沸点が低いせいだ。差込口で断線したコンセントはソケットを買ってきて付け替えればまだまだ使える。Tシャツを作るとき、そでぐりと見ごろ側の長さが合わないと縫い合わせた時に袖がごろごろする。
中学で教えてくれることはほかにも結構たくさんある。勉強をどれくらいどの時期からやればテストに間に合うのかは、作業時間と自分の能力から仕事の納期に間に合わせられるかの試算に役に立つだろう。これは一生懸命やったという経験からしか得られない。生徒たちにはわかりやすく「本気で頑張りたいと思ったときに100の力を出すために勉強しているんだよ」と伝えている。そしてその本気は別に勉強じゃないことに使ってもいいんだと。そのためにはたくさんのトライアンドエラーが必要だ。痛い思いをしてもよい。中学校は安全に失敗するためにあるはずだ。勉強なんて失敗してもバツがつくだけ、ちょっと嫌だけど、命がとられるわけではない。
最近の風潮なのかもしれないが、「かわいそうだから」と失敗させないよう先回りにする大人が増えたように思う。子供は意外と図太い。リカバリー力こそ子供の特長だろう。だからどんどん失敗させたらいいのだ。フォローは大人がしたらいい。それが分かっていれば子供はどんどんトライアンドエラーをする。だって、そういう生き物だから。
中学校の勉強は包丁のようなものだ。怖がって使わなければいつまでも使えない。上達なんか絶対にしない。痛い思いもしてしっかり習得すれば結構一生使える。うまくいかないときは上手な人を観察して、取り入れられそうなことを取り入れてみる。自分なりに使いやすい包丁になればしめたものだ。そのためにはやはり一度しっかり向き合って習得しようとする必要があるのだ。
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