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うちのコタツが歴史を作っていたのに気が付いた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:加藤 智康(ライティング・ゼミ木曜コース)

年末の紅白歌合戦が始まる前に、中学1年の娘がコタツで丸くなりながらつぶやいた。

「あー、コタツでミカンってあこがれるぅ」

意外なあこがれ発言に、自分の耳を疑うとはこの時にぴったりの状況だと思った。
思わずビールを持ってコタツに座ろうとした自分の動きが静止した。
今どきの女子中学生があこがれる事かと思ったのだ。コタツでミカンに。
彼女のそんなに長くない人生の中で、コタツでミカンにあこがれるきっかけは何だろう? なにがこの一年にあったのだと、とっさに思った。

というのも、別に去年の年末年始もコタツを出していたし、きっとミカンもあったと思う。
なのに、なぜこんなセリフを心の底から安堵したようにつぶやくのか。不思議でならなかった。そんな彼女は背中を丸めてコタツの天板の上にほほをのせて、うっとりするようにミカンを見ているではないか。ちょっと気味が悪い感じがした。

うちは、別に歴史ある家庭ではない。そのためにコタツとミカンが禁止ということもない。せいぜいわたしの父の歴史と合体しても、15年もない。次男の父はその親から引き継ぐ歴史もない。そのため、大みそかとお正月の過ごし方にしきたりはない。親戚巡りもしない。いつもと一緒の年末のはずだ。

もう少し言うと、うちの家族はどちらかというとインドア派なので、外に出かけるよりは家にいて、ごろごろするのが好きな方だ。年末はだれからともなく、どこも混んでいるから出かけたくないと言い出し、そして全員が納得する。見事に統制が取れたインドア派だ。
なので、おおむね年末を外で過ごすことはない。あったとしても妻の実家に行ったことがあるかどうかだろう。ただ、わたしの父と同居していることもあり、ここ10年ぐらいは年末に自宅を不在にしたことはないはずだった。

つまり、意図せず毎年家に居て、紅白歌合戦をコタツに入って見ながら年を越すというのは、繰り返されているはずである。ミカンもあったはずだ。

でも、改めて考えると、コタツとミカンのセットをあえて意識したことはない。常に一緒にあるものだと思っている。伝統的な日本文化としての組み合わせだと思う。

西洋ではコタツはないはずだ。調べてみると、日本オリジナルだろう。そもそも、外国では床に座らないし、暑い地方には存在しない。寒い地方は部屋全体をあたためるようだ。確かにコタツに入っていても肩は寒い。そのためわたしは肩まで布団にもぐってしまって、目が覚めたら次の日の朝3時ということを何度経験したことか。すごく気持ちがいいのは理解できる。確かに寒すぎる地域では、コタツでは心もとないのだろう。

しかし、探すとイランに「コルシ」というコタツそっくりのものがある。写真を見るとテーブルの上に果物らしいものが載っていた。ミカンらしい。意外な組み合わせに驚いた。
広めたのは日本人じゃないかと勘繰るぐらいの近い形だった。言葉が3文字であることと、どことなく発音が似ているのは気のせいだろうか。これも日本製にくくっていいと思う。

さらに言えば、人だけがコタツを愛しているわけではない。日本の猫もコタツが好きなはずだ。童謡でもあったはずだ。「ネーコはコタツで丸くなる」うん、あった。雪という童謡だ。

童話になるぐらいだから、コタツには相応の歴史があるみたいだ。室町時代にコタツが始まったとウィキペディアに載っていた。思った以上に歴史があるのに驚いた。想像を超えていた。

わたしは、娘を尊敬し始めていた。そんなにまで日本文化を愛していたのか。
毎年、何気なくすごしてしまっていた正月を反省した。家族とミカンを食べて紅白歌合戦を見ながらワイワイガヤガヤする楽しい時間にいつもコタツがあった。トランプのババ抜きもするし、ボードゲームもできる。狭い空間に家族が集まって団ランする。
たまにコタツの中で子供たちと足がぶつかって喧嘩することもあった。でも、楽しいひと時である。喧嘩しても、みんなコタツから離れずにいる。会話する時も距離が近いし、ご飯の時になるとみんな集まってくる。素敵な空間だ。

娘は、「紅白歌合戦を見ながらミカンを食べられることが素敵。いつもは喧嘩が絶えないから。家族平和を感じられてうれしい」とわたしに話しかけてきた。

「だよね。うちは喧嘩ばかりだからね。すぐみんなどっか行っちゃうしね」

今の家では子供部屋や祖父の部屋もある。何か気に入らないことがあると、すぐ部屋に閉じこもってしまう。わたしも同じくパソコンのある寝室に閉じこもる。

そんな私たちを1年に一回でも居間に引き寄せて離さないコタツはすごい。
うちのコタツは既に20年ぐらい使っている年季の入ったものだ。独身時代から使っているコタツで、ずっと修理しながら使って来た。その間に、結婚もした、引っ越しも何度も経験した。子供も中学生になり、コタツの中も窮屈で足を入れられないぐらいになった。

はたと気が付いた。このコタツがわたし達家族の歴史なのかもしれない。そんなコタツに入りながらミカンを食べる。わたしも娘のあこがれに賛同するしかない。

今年一年もいろいろ喧嘩もあると思うけど、頑張って乗り切って、年末にはコタツのお世話になろうと思った。ありがとうコタツにミカン。うちの歴史を作ってくれている大切なアイテムだ。

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2019-01-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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