メディアグランプリ

私がへこたれない理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:髙山彩子(ライティング・ゼミ日曜コース)

何度探しても番号はなかった。
「そんなはずはない」と「やっぱりな」がせわしなく頭の中で鳴り響いていた。
周りの声が遠くなる。
「おめでとう!」と抱き合う親子がぼんやりと目の前に見えた。誰かが胴上げされている「うおーっ!」と男の子たちの声がする。

こんな時、大学の近くの家は嫌だなと思いながら家に帰った。両親共働きの家には誰もいなかった。それがかえって自分を冷静にさせた。母の職場に電話をかける。母は「そう」といって、あとは事務的な話をして電話を切った。あっけなく終わった私の大学受験、志望学科のランクを下げたにも関わらず結果は「不合格」だった。この日の記憶はこれだけである。もう、20年以上も前のことだ。一年後私は同じ大学の違う学科に合格している。

高校は何とか志望する高校に入れたものの、あまり成績の芳しくなかった私は、家庭が裕福ではないこともあり、大学進学は心のどこかであきらめていた。どこかに就職するんだろうなと思いながら高校3年になっていた。進路相談では一応志望高を書くが、担任が進めるのは私立の遠くの学校ばかり、うちの経済状態では到底無理なところばかりだった。そんな私に高校3年の時、母が地元の国立大学に進学してほしい、どんなことをしても出してあげるからと。自宅は大学の近くだったから、当然といえば当然だったのかもしれない。高校3年の夏だった。受験準備には遅すぎたが、行けると思うと行きたくなるのが子供の心というものだ。そこからは必死で勉強をした。あんなに勉強をしたことは後にも先にもない。食事中に母に「いい加減にしなさい」と参考書を閉じられたくらいに勉強をした。夜2時、3時に寝て5時には起きてもくもくと机に向かったのだ。秋に受けたセンター模試は合格圏内に入ることができた。

異変は12月から起きていた。何年も飼っていたインコが死んだ。丸一日何も手がつかずにおいおいと泣いた。家族みんなが悲しんだ。それくらいかわいがっていたのだ。センター試験前日、コンビニに行こうと外へ出て、凍結した道路の真ん中で思いっきり転んで頭を打った。しばらく起き上がれないほどに激しくぶつけて、車の進行を止めたくらいだ。センター当日、国語や英語は予定通り、社会もまぁまぁ、理科は最初からこの位取れればよいと踏んでいた。あまり問題視していなかった数学で私は大きなミスをした。1問目の最後の問いを後回しにしたのだ。その時、マークシートが一つずれてしまった。気づいた時には残り3分、必死で書き直すも半分までで時間終了。あぁ終わったと思った。自己採点の結果は散々で5教科すべてが必要だった志望学科は絶望的だった。そこで考えてもいなかった学科に志望変更をして願書を出した。やる気というものは準備にも表れる。過去問を一度も見ることもなく二次試験、あれで受かろうなんて今思えば都合がよすぎるというものだった。そして不合格。付け焼き刃の努力ってこんなもんなのか、何とか自分の心をごまかして予備校に通うことにした。私は自分に起きた悪いことをすり替えて自分のせいじゃないと思い込んでいた。

予備校にも「入学式」があったのだ。どちらかというとリベンジの決意式みたいなものだった。ほかの大人たちが「努力は報われる」「一緒に頑張ろう」みたいなことを並べる中で、一人だけ「お前ら、にやにやするな!」と言い放った講師がいた。ナイフで腹をえぐられたような気持だった。「お前らは失敗したんだ。ちゃんと傷つけ。目をそらさず、自分にしっかり×をつけろ」大きな講堂の中がしんと静まり返った。なんだよ、とぶつぶつ言う声も聞こえた。すすり泣きの声も聞こえてきた。「なにくそと思え。私を見返しなさい」講師の声は続いた。

今年起業したばかりの私は人から「たくましいよね」とか「パワフルだよね」と言われる。へこたれないわけじゃない、へこたれている場合じゃないと思っているだけだ。そんな暇があるなら、新しいお客様につながることを、今のお客様が喜ぶことを考え、行動するべきだと信じている。正直、ビジネスは順風満帆とはいいがたい、でも前を向いてやるべきことを必死にやっている、どんなことでも真摯に向き合えば突破口は見える、私の信念は20年前のあの時に生まれたに違いない。悔しかったら、ぶつぶつ言わず、やることを淡々とやる、続けていればあきらめなければ、最初に思い描いたことと違っていたとしても道は開ける。18歳の私が切り開いた未来を精いっぱい生きようと思う。少しずつ、仲間が増え、信頼してくれるお客様が増えてきた。さぁこれからだ。立ち止まるな、恐れるな、自分をよく見てしっかり×をつけろ、そしてやるべきことを心を込めてやり切るのだ。

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2019-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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