「AKB」は優れた会社組織、「嵐」は青春の絆だと思った話。
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記事:noma(ライティングゼミ・土曜コース)
人気アイドルグループの、嵐が2020年で活動休止。
このニュースは日本中を驚かせた。
キンプリって、King&Princeなんだ……と最近知ったくらい、アイドルには疎い私でも、衝撃を受けた。彼らの番組や歌は元気をもらえるものだったから、それが終わってしまうということに、そこはかとない寂しさを感じた。
「嵐は、5人で嵐です」
嵐とはあの5人が集まった状態を指していて、それで価値がある。
だからこそ、メンバーの悩みと向き合い、嵐というものを活動休止にする選択肢をメンバー全員でとることにした。それはある種、高校時代の親友たちが、音楽バンドを組んだ時の結束のような、強固な絆である。
実際のところ、ジャニーズは全部そういう思春期の仲間同士で抱く強固な絆が、前提にあるようにみえる。ジャニーズはここ最近、脱退とか、解散とかそういうものがよくあるが、“欠員補充”という概念は存在していない。欠員補充がないということは、「そのメンバーの替えはきかない」というのが暗黙の了解なのだと思う。
確かに、そのメンバーでしか成り立たないと、半ば思い込みに近い思春期のつながりは、変えようのない美しさを秘めている。基本的にお互いの利害関係がなく(そもそも損得勘定では動いておらず)、互いと一緒にいて楽しいという信頼関係で成り立っており、誰がかけてもダメだという認識を全員で持ち続けている。たいていの場合、感情的なけんかや仲間割れという危険をはらんでいるのだが、その有限さも、脆さも含めて、思春期の、あのつながりは美しいと感じる要素になっていると思う。
そうした前提がありながらも、アイドルという特性上、当然表に出てくる側面は、仲の良い信頼関係だから、いつも仲の良いメンバーの様子を、楽しく応援ができる。それはある種の現実を彷彿とさせない、永遠に続く夢である。これがジャニーズというグループの素晴らしい価値なのだと思う。
一方で、AKB48(と、その姉妹グループ)というアイドルには“卒業”という概念がある。
ついこのあいだ、指原が卒業を宣言したときも、嵐ほどの動揺はなかった。それはもちろんファンにとっては衝撃的なことだっただろうし、AKBグループの指原、は見ることができなくなるので私もさみしい思いはある。しかし、AKBとは基本的に永遠とメンバーが残り続けるものではなく、“加入”も“卒業”もしているという前提があるし、なによりも永続的にAKBグループはありつづける。卒業を発表したメンバーを応援し、盛大に送り出すという文化もあるから、悲しみというよりも、ある種の儀式のように感じる。たとえAKBを卒業しても、卒業生としてつながっていてくれる安心感もある。
これは、会社組織と同じである。会社組織は、ビジョンがあり、お客様に提供する価値があり、そこに向けてメンバーが集まっている。退職するものもいれば、新入社員もいて、常に組織は新陳代謝される。しかし、この会社組織自体は残り続けて、永続的に価値を出し続ける存在として、認識をされるのだ。これはかなりすぐれたシステムで、組織の価値がメンバーに依存していない。もちろん個人を応援し続けることもあるだろうが、AKB48という組織そのものが好きなファンも当然いて、そのファンには永続的に価値を出し続けている。あくまでもAKBは女性をスターダムにのし上げるための機能をもった、優れた組織であって、個々人同士のつながりをベースにはしていない。
そういう意味で、ジャニーズとAKB48とは、男女それぞれの代表的なアイドルではあるものの全く異なる組織構造と、仕組みで、グループに対してのファンを獲得しているといえるだろう。
わたしはフラットにどちらのファンでもないので、どっちが良い、悪い、ないしは、優れている、劣っているというのは全くない。どちらもファンのために精力的に活動し、幸せや喜びを届けている点では同じだ。
しかしながら、私はそんなことを考えながら、嵐には、青春という夢をみさせてもらいすぎたのかもしれないと思ったのだった。
この5人の間には、卒業という仕組みはない。だから、たとえ(5人のことは好きでも)仕事としてはやめたい、と思っても言い出せない。5人の仲間の絆をファンは楽しみにしているから、裏切れない。そういうジレンマの中に、嵐は閉じ込められていたのかもしれない。
もちろん、仲の良い5人の姿を、いつまでも見ていたいという感情は、こんな「普通に嵐を知っている」くらいの人間にもある。熱心なファンなら、なおさらそうだろう。
でも、彼らが高校時代の親友のようなつながりなのだとしたら、そのつながりは誰のためでもなくお互いのためであり、彼らにとってはそれが仕事という形で、崩れてしまうことの方が問題である。各々が各々らしくあり、そして全員が納得のいく、関係性を続けていける方向性を考えていくことが最善策だと、今回は全員で結論をだした、ともいえる。
そう、嵐は永遠に続く夢ではなく、現実だったのだ。
あの仲の良さも、全員の笑顔も、演出ではなくて、きっと本物の強固な絆。私はそれを互いに尊重し、勇気をもって選択した姿は純粋にすごいと思うし、それでも仕事として、、ファンのためにと行動し、敬意と感謝をこめて行動する姿はプロだとも思った。
2020年で活動休止、その後どうなるかはまだ誰にもわからないけれど、残された期間の有限さを慈しみながら、新しいステップに進んでいくそれぞれを、心の底から応援したい。していつか、嵐という形でも、そうでなくても、また5人で元気な姿を見せてくれることを、祈りたいと思う。
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