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お葬式で教えてもらった当たり前への感謝


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記事:わだ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
高校時代にお世話になった先生が亡くなった。
卒業してから10年も経ってないがまだ若かったはずだと思い、地方の新聞に載っていたお葬式の情報を調べた。
新聞には55歳と記載されており、父と同い年であることに悲しい気持ちになった。
同い年だからか勝手に父と重ねてしまった。あと20年くらい年をとっていたら覚悟ができてくるかもしれないが、定年前の年齢ではたとえ闘病中だったとしても覚悟はできそうにない。
年を重ねるごとにいろんな人の死が身近になってくる事に胃がぎゅっとした。
 
先生にお世話になったと言っても個人的に深い関わりがあったわけではなかった。
3年間の学年主任、3年生の時の教科担当をして頂いた程度の関わりだ。
部活に所属していたり、教科担当が3年間連続であったりしたならもう少し関わりがあったかもしれないがいたって普通の、どちらかといえば薄めの関わりだったのかもしれない。
だからこそ、先生が亡くなったと聞いて思い出したのは、朝の補講や、放課後の授業でのわからない部分を質問した事だった。
 
補講は朝7時から開始。放課後は受験生だったので学校が閉まる20時まで居残りして勉強していた。
補講は1週間の短期留学した際に出席できなかった分遅れた授業を取り戻すためだったり、受験に必要な科目だが単位としては必要ない部分を学ぶためだったりしたものだった。
授業の遅れを取り戻させてくれる事にはありがたいと感じつつ、朝早く登校する正直面倒臭いと思っていた。
当時は補講も質問に答えてくれるのも先生だから当たり前だと感じていた。
 
同じ社会人になって朝早く出社しろと命じられて思うことは、当時と同じ「(仕事とはいえ)面倒臭い」だった。
学生と社会人。立場が変わっても感じることは変わらない自分を情けなく思いつつも、先生が朝早く出社して、夜遅くまで生徒に付き合ってくれていた事に、仕事に対する情熱と深い愛情を今更ながらに実感した。
当時は良い先生だなと感じてはいたがそれだけであり、その奥に隠された情熱まで感じ取れていなかった。
 
社会人になってから、父の仕事の大変さとその中で土日に遊んでくれたタフさに尊敬の念と感謝を感じることはあった。
しかし、お世話になった先生に対しては同じように尊敬の念を持つどころか思い出すことさえなかった。
社会人になって、働くことの大変さを知ってから4年。
思い出して、気づくことさえできていればお礼を言いに行くタイミングはいつだってあった。
気づかなかったために伝えに行くことはできなかった。
亡くなってから気づくのでは遅すぎる。
黙祷の最中や御焼香中にお礼は伝えた。
でも生きている間に伝えなければ意味のないことだってあるはずだ。
薄情なことだが、先生が亡くなった悲しさよりも感謝を伝えられなかった後悔が強く残ってしまった。
 
「感謝を忘れた人間は成長しない」
そのように教えてもらってから感謝を伝えること、感謝の念を持つ事を欠かさなかった。
しかし、教えてもらった前はどうだろう?
感謝どころか当たり前で済ましていることが多いのではないか。
2度と伝えられなくなってからでは遅い。
感謝は心の中だけで思うのではなくきちんと声に出して伝えたい。
 
お葬式当日に再会した担任の先生に挨拶を兼ねて高校時代のお礼を伝えてみた。
特に反応はなかったが、それで良い。
過去の感謝をきちんと伝えることがこれからの私のミッションだ。
 
これから先、たくさん感謝を感じることがあるはずだ。
しかしそれはその時初めてしてもらった行為ではなく、気づかなかっただけでずっと昔から続いてきたことだ。
先生が情熱を持って接し、成長を促してくれたように。
行為をしてもらったその時に、感謝するだけでなく、過去を振り返ってみて、見過ごしてしまっている事がないか探してみる。
悲しみよりも後悔が強い別れを2度としないために。
 
亡くなられてもなお、卒業生である自分に気づきと学びをくれる先生は、本当に良い先生だったと改めて感じた。
その都度だけでなく、過去に対しても感謝を伝え続けられる人間になりたい。
先生のような仕事に情熱と愛情を持てるような人間にもなりたい。
新しい目標を持たせてくれた先生に、ご存命の間には伝えられなかった感謝を込めて……
 
ありがとうございました!
 
 
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2019-02-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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