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メディアグランプリ

眩しい笑顔が教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「西さん、今日もありがとうございます」
靴を履いて店を出る。
帰り道に綺麗な月が見える。
今日も行って良かったなと思う。
 
まさかこんな近くにあると思ってなかった。
自分にとっての癒しの場所が。
癒しの場所は温泉とか海とか森とか日常とは離れた遠い場所にあるのかと思っていた。
こんな近所のゴチャゴチャした商店街の中にあったなんて。
 
2年ほど前からホットヨガ教室に通っている。
ちょっと体を動かしたかったのだ。
近所にスポーツジムもあったが、走ったり筋トレするなんて芸当は私には無理だ。
そんな矢先にヨガ教室を見つけたのだ。
 
やってみるとこれがまた気持ちよかった。
全身がポカポカになる。
冷え性の私でも手足の指先までちゃんと血が通ってるのが実感できた。
やる前は大した運動ではないと思っていたが違った。
意外と腹筋や臀筋などの体幹の筋肉を使うのだ。
とりあえず入会することにしてみた。
 
「自分と向き合いましょう」
「できなくても大丈夫です」
「ポーズがぐらついてもOKです。そのままの自分を受け入れましょう」
 
ヨガの先生のこんな掛け声に頭の中が「!!!」となった。
そんなこと、考えたこともなかった。
 
今まで自分と向き合ったことあったっけ?
自分って何が好きで何が嫌いだっけ?
できないことは悪いこと、欠点だと思っていた。
そのままの自分ではダメだと勝手に思ってた。
 
気づいたら頭の中で先生のコメントにいいねボタンを1000回くらい押していた。
気づいたら夢中になって毎週ヨガに通っていた。
 
ただ一つだけ、苦手なことがあった。
雑談である。
ヨガ教室に到着した際もしくは帰る際に受付の方に話しかけられることだ。
え?そんなことで?
と思う人もいるかもしれない。
でも人見知りな私にはレベルが高かったのだ。
そこまで仲良くない人と当たり障りのない話をするのができない。
もしかしたら人見知りとかそういう問題じゃないのかもしれない。
 
なんていうか、眩しいのだ。
いつも素敵な笑顔で
「お疲れ様です」
「今日も頑張ってくださいね」
「いつもありがとうございます」
と丁寧に言ってくれるもんだから。
眩しすぎて根暗な私には直視できない。
しかも特定の一人だけではなく、受付の人みんなだ。
受付が混んでいても笑顔を絶やさないで丁寧な接客をしてくれる。
 
社内で教育されているのかもしれないけど、いつも笑顔で明るくってしんどくないのかな?
なんてこと思ったりする。
たまに日本のサービスは過剰なんじゃないかと思うこともある。
 
少し前に上海に行った時のこと。
エッグタルトを買いたくてパン屋に入った。
エッグタルトを乗せてトレーをレジに持っていくと、そこにはスマホをいじった若い女の子がいた。その女の子は明らかに不機嫌そうな顔でレジを打ち、エッグタルトを袋に入れ、お釣りを渡してくれた。
まるで私のスマホをいじる時間を邪魔するなとでもいうような投げやりな仕草。
日本だったら考えられないことだろう。
 
でも私にはなんだか気持ちよかった。
むしろ爽快だった。
私はエッグタルトを買いたいだけでその勘定をしてくれれば別に良いのだ。
お釣りを渡す時の丁寧な仕草や笑顔なんて特に求めてない。
最低限のことをしてくれさえすれば十分だ。
こういう接客の方がむしろこっちも気が楽だなと思った。
 
ある日、ヨガ教室を退会しなければならなくなった。
四月から引っ越すためだ。
そのことを受付の方に申し出ると、
「え〜西さんどうしたんですか? 引越しですか?」
正直この反応に私は驚いた。
「せっかく長い間通ってくれてたのに」
なんだか残念そうな顔をしていたのだ。
社内教育とか、そんなんじゃない。
本当に残念そうな顔だった。(多分)
「また戻ってきてくださいね」
と言ってくれた。
なんだかすごい嬉しかった。
 
実は退会を申し出るとき、私も寂しかった。
ヨガが大好きなのでもっと続けたかったのはある。
でも何より寂しかったのは、その教室に通えなくなることだ。
ヨガ教室なんてたくさんあるけれど、私はこの近所のヨガ教室が良いのだ。
自分でも気づかないうちに、最初は苦手だと思っていた眩しい笑顔が私を癒してくれていたのだ。
夜遅くても、雨の日も、寒い日も笑顔で迎えてくれていた。
そう言えば、通っているうちに雑談も苦手ではなくなった。
むしろ楽しくなっていた。
 
あ、そうだ。
受付の方たちはみんな今風のイケイケな感じで、地味で根暗な自分はなんか苦手だなと勝手に思い込んでしまっていたのだ。
自分はあんな素敵な接客はできないから彼らを眩しいと感じていたのだ。
上海でのパン屋の接客は日本風の接客はできなくていいんだと私に新しい価値観を教えてくれた
から新鮮ではあった。
でもヨガ教室でずっとこのような接客だったらここまで好きにはなってなかっただろう。
なんだか自分を恥ずかしく思った。
結局キラキラしたように見える人が羨ましかっただけじゃないかと。
自分が勝手に卑屈になって心の壁を作っていたことに気づいた。
そういう卑屈な考えは無駄なんだなということを眩しい笑顔から教わった。
そのままの自分を彼らは受け入れてくれていたのだから。
 
これからもし自分とは違ったキラキラした人に出会っても、心の壁は絶対に作らないと決めた。
引っ越すまで、なるべく癒しの場に通おう。
そして自分も彼らに負けないくらいの笑顔で挨拶しよう。
そう心に誓った。
 
 
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2019-02-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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