fbpx
メディアグランプリ

京都銭湯のススメ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【3月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《火曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:赤尾 実法(ライティング・ゼミ特講)
 
 
ここ数年の日本への外国人旅行者の激増により、京都市内では「こんな所に!?」というお店でも、外国人の方を良く見かけるようになった。勿論、清水寺・知恩院・金閣寺・二条城といったメジャーな観光地。又、祇園の有名なレストラン、お菓子屋さん等は、以前から賑いを見せていた。しかし近年では、大手の外食チェーン店、大学生が使うような居酒屋、マニアックな個人経営の焼き肉屋さんでも、彼らの姿を見かけるようになった。そしてそれは、私の大好きな京都の銭湯でも同様である。
小路を入った奥にある、小さな銭湯。地元の常連さん、学生街京都ならではの大学生の集団、そして前述の外国人旅行者達。彼等は何故わざわざ銭湯へと出向くのだろうか。昨今では、各家庭や下宿には風呂設備が有るところが大多数であろうし、旅行客でも大半の宿にはお風呂が設置されているであろう。それなのに、人が続々と集まる、京都銭湯の魅力とは一体何か?
思うに、良い銭湯というのは、映画館で見る名作映画と似ているのだ。音と光の洪水を映画館で浴び、私達はその2時間余りの非日常を、スクリーンの前で過ごす。恐怖映画を見れば本当に心から震え上がり、良質なアクション映画を見れば自分がその体験をしたかのように、一種興奮状態に陥る。手を変え、品を変え、演出されたストーリーに、我々観客は息を呑む。上映後は、珈琲でも飲みながら同行者と熱く感想を語り合ったり、一人の場合でも感想を噛みしめたり、ネットで感想を探したりする人が多数であろう。
片や、銭湯である。お湯と煙の(文字通りの意味で)洪水を、私たちは自ら浴びに行く。老いも若きも、男も女も、日本人も外国人も、お金持ちもそうでない人も、この場に行けば皆平等。あっという間にすっぽんぽんだ。メインの湯船が有り、水風呂、サウナ、露天風呂と、多種多様で魅力的な施設が満載で有る。友人と連れ立ってわいわいと賑やかに、または一人でのんびり、じっくりと浸かる。どんな楽しみ方も、この場所は許容してくれる。サウナと水風呂の往復で身体から逃げ出した水分を、風呂上がりにぐっと補給する瞬間。正に至福の一時である。
私がおすすめする一件は、京都市の北区、金閣寺の近くにあるK温泉。大学生の頃に通い始め、もう十年以上もお世話になっている銭湯だ。西大路通りから、嵐電北野白梅町駅より少し路地に入り込むと、年季の入った4階建てのビルが見えてくる。この4階分が全て銭湯となっている。入り口の暖簾を潜って靴を脱ぐと、番台のおばちゃんが朗らかにいらっしゃい、と出迎えてくれる。430円を払い脱衣所で服を脱ぎ、タオル1枚もって扉を開ければ、そこは正に夢の国だ。1階にはメインの大風呂に加えて、ジェット風呂、水風呂、電気風呂と多様な風呂が私たちを待ち構えている。バラエティに富んだお風呂を回るだけでも十分リラックス出来るのだが、上3階層も全て銭湯だ。
裸のままで階段を登るという、普段中々有り得ない体験をしながら2階へ進むと、大きなサウナが扉の先に暖まっている。温度が約100度まで上がった薄暗い室内にじっと座り、発汗を促していると、汗と共に身体の中の悪いものが全て出て行くかのような気分になる。もう限界だ、という所まで水分を絞り、扉を出れば、目の前には上へと続く階段が。
3階へ上れば目に入るのは、冷凍サウナ、という見慣れない文字。奇数日が男子、偶数日が女子、と案内している。2階のサウナとは逆に、この室内は氷点下4度まで室内が冷やされている。機械で冷風を送っているので、体感温度はもっと低いだろう。わずかな時間で髪の毛やまつげが凍り始めてくる。だんだん手足の感覚も無くなってきて、こりゃたまらん、と外へ出れば、小さな檜の露天風呂が待っている。この露天風呂で凍えた身体を解凍し、温まったらまた冷凍の室内へ・・・・・・。何故わざわざこんなことをしているのがわからなくなってくるが、3度ほど風呂と冷凍サウナの往復を繰り返していると、なんだか皮膚がピリピリして、身体中が引き締まってきたかのような気になる。ここでしか味わえない別世界だ。
残る4階は数人が入れる露天風呂。身体を休める椅子も用意されている。学生の時にはこの場所で、冷えた身体を温めながら、友人や後輩達と何時間も下らない話で盛り上がっていた。全てを満喫して脱衣所に戻れば、冷えた牛乳が待っている。瓶を片手にぐっと一息、得も言われぬ幸せの一時だ。
昔は京都で500軒以上有った銭湯も、各家庭に給湯設備や風呂が整った現代では、一気にその数を減らし、現在では200軒を下回る数字まで落ち込んでいる。けれどもそんな厳しい状況下で、次々と新しい試みを行い、輝いている銭湯が、京都には無数に有るのだ。
フリマや寄席を行う銭湯フェスを開催したり、湯舟にアヒル人形を浮かべ、親子の貸切イベントを開催したり、番台に本格的にDJブースを設置してみたり、複数の銭湯が協力して、アート作品を展示する催しを行ったり……。こういった試みを切欠に多くの人が集まれば、京都の銭湯は益々盛り上がっていくことだろう。
服を脱ぎ捨て、身も心も解放してお湯に浸かる、というのは、極上のレジャー体験である。そんな素晴らしい幸せを、銭湯に行くことで味わえるのだ。まだこの幸福を未体験の方々、是非タオル一本もって、京都の銭湯へと足を運んで欲しい。既に行き着けの銭湯をお持ちの方も、是非その一軒だけでなく、色んな銭湯へと足を運んで欲しい。貴方自身の銭湯の幸せが、必ず京都の銭湯全ての幸せへと、結びついていく筈だから。
 
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【3月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《火曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《2/20までの早期特典あり!》

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事