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バレンタインを前に思い出した大切なこと 〜80歳のボーイフレンドに気づかされた、婚活がうまくいかない理由〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:美友(ライティング・ゼミ土曜コース)

ここ数年バレンタインと無縁の私は、少し複雑な思いで、今年もGODIVAのチョコ売り場を通り過ぎようとしていた。

そういえば、20代の頃、忙しい彼に仕事の合間に食べて、とGODIVA の2粒入りのチョコをあげたら喜ばれた。若い私は1粒500円のチョコを少し奮発して買ったな、なんて、少しむずがゆくなる想い出を思い出しながら。

「婚活」という言葉が市民権を得ている中で、30才を過ぎて結婚をしていないと、なぜ周りから色々言われるのだろう。年末年始に実家に帰る度に、親からもちくちくと言われて、一気に休暇気分台無しである。

だけど、周囲に言われれば言われるほど、なぜか婚活はうまくいかない。

5年前に結婚しようと真剣に考えたことがあったが、別れた後は、この人と思う人には出会えなかった。一方、どんどん周りが結婚や出産をしていく中で、妙な焦りを感じていた。

婚活アプリで結婚した人がいるよと友達にすすめられて、半信半疑だったが、登録してみたりもした。気が合いそうだった人と、直接会うことになり、
条件や趣味もばっちりで、ノリもあっていそうで、いい感じになるかもしれないと思った。

ところが、実際会ってみると、何か違うな、の連続だった。うまくいかないのである。

お宝鑑定団みたいに、結婚にふさわしい相手か、厳しめの査定に入ってしまうモードからかもしれない。なんかイメージと違っていて、1回会って、ほとんど終わりであった。

なぜ、婚活がうまくいかないのだろうか。このままもう恋愛することもないのか。

恋愛体質だった20代の私が、今の私を見たらなんと思うだろう。こうなってくると、自分に自信もなくなってくる。気楽な独身生活の代償として、結婚というある種の「幸せ」を味わっていない自分は、人生負け組なような気さえしてきた。

「はあ〜、もうなんで結婚できないんだろう、私」

とため息混じりに、通り過ぎようとしたチョコ売り場の前で、ふとあの人達のことを思い出した。正直名前すら覚えていない。でも20年近くも経つのに、その記憶は鮮やかだ。

高校時代に南アフリカ共和国に留学していた時、学生向けキャンプに参加し、木から落ちて、入院したことがあった。幸い大きな怪我もなく、不幸中の幸いだった。

少し落ち着いた次の日から、病室の向かい側にいる80歳のおばあちゃんが、話しかけてくれるようになった。もう離婚していて、子供はお見舞いに来ないらしい。まだ留学して間もない頃で、片言での会話だったが、遠い異国の地でいきなり死にそうになった後の、私の心細さを埋めてくれて本当に感謝している。

そんなある日、おばあちゃんの話に衝撃を受けた。

「今から、ボーイフレンドがくるの。おめかししなきゃ!」

「え!? ボーイフレンドいるんですか?」

まさか、80歳のおばあちゃんから、そんな言葉を聞くとは思ってもみなかった。日本のおばあちゃんと比べて、随分ハイカラに感じた。海外だからだろうか。

口紅をすっと引く姿は、80歳であることを一瞬忘れるくらい、とてつもなく輝いて見えた。

やってきたボーイフレンドもこれもまた、しわくちゃのおじいちゃんだった。軽く挨拶をして、思わず2人の様子を見ていた私に対して、80歳のボーイフレンドは言った。

「いくつになっても、何かを始めるのには遅くないんだよ。人生楽しまないと!」

病魔に侵されているハイカラなおばあちゃんは、残された命を楽しもうと、毎日の日々の中で、ボーイフレンドにときめいたり、何か新しい発見をしたり、自分なりの幸せを見つけていた。年齢とか、周りがどう思うとか、病気とは関係ない。ただ、今ここで自分なりの幸せ探しが上手だった。

いくつになっても、幸せは自分から取りに行くものなのかもしれない。
何が幸せなのかとは、自分が決めることなのかもしれない。

恋に限らず、何かに夢中になっている人、頑張っている人、自分なりの幸せを大事にしている人は、すごく素敵に見えるものだ。

さて、あれから、20年近く経った今の自分はどうだろうか。

そんなことはすっかり忘れていた。

婚活で出会った人とも、結婚を意識しすぎて、その時の時間を純粋に楽しもうとしていなかった。自分の理想と違うとか、忙しいとか、疲れたとか不満ばかりだった。傷つくことをおそれて、どこか受け身になっていた。

そんな自分からは、あのおばあちゃんみたいな、内側から滲み出る魅力が出てくるわけはない。

婚活は結婚をすることだけが目的ではない。
本質は、自分が幸せになることで、結婚とはその1つの手段だ。

私は大事な本質を取り違えてしまっていたのだ。
相手が云々ではなかった。結婚より前に、自分から幸せになる努力を怠っていた。

それが婚活がうまくいかない理由だった。

結婚というある種の世間が思う幸せに在り方に当てはまらなくて、なんだか苦しくなっていた。過去の思い出に浸り、現状への不満ばかりで、自分なりの幸せってなんなのかを再確認したり、毎日の人生を今ここでもっと楽しむことを忘れていた。先のことばかり考えすぎても、心の余裕もなくなり、相手も幸せにできるわけがない。

今思えば、ふっと力が抜けて自然体な時や、恋愛のことを考える暇もないほど、何かに対して頑張ったり、夢中になったりしている時ほど、恋愛が始まることが多かった気がする。

そう、今の私に必要なのは、「婚活」ではなかった。
広い意味で、今ここで、自分にとっての幸せは何かを見つけていく「幸活」だった。

今までやろうと思ってずっとできなかったこと、好きなことをもう少しやってみたり、現状を変えたり、何か新しいことを始める時の不安と期待は、どこか恋の始まりと似ている。そうして日々の楽しいことやときめきを積み重ねていく中で自分の輝きを取り戻せたり、また新しい恋が見つかるかもしれない。

大きなことでなくてもいい。ちょっとした視点を変えて、自分の生活を見渡してみると、幸せの種は結構色々と転がっているのかもしれない。

今年は久々にGODIVAのチョコ売り場を通り過ぎず、足を止めた。もう義理チョコさえも最近は買わなくなっていた私だったが、2粒のチョコを自分へのご褒美として買ってみた。甘いときめきを味わうために。上品な大人の甘さが広がった。

何かを始めるには、35歳はまだまだ遅くないのだ。

婚活に縛られず、広い意味で自分の幸せを見つける「幸活」を始めてみようと思う。

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2019-02-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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