メディアグランプリ

「殺してほしい」と夜道を歩いていた私が 「毎日が楽しい」と思えるようになったわけ


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:うえたゆみ(ライティング・ゼミ土曜コース)
 
 
「早く、だれか殺してくれないかな」
 
高校からの帰り道
そんなことばかり考えていた。
 
「支えなきゃいけない、母さんはもういない。今まで頑張っていたことは、すべて無駄だった。毎日、毎日、身体中が痛い。ご飯も喉を通らない」
 
「けれど、私が自殺したら父さんが悲しむ。母さんの自殺未遂を見た時の、私を見捨てていくのって辛い気持ちを味合わせたくない」
 
「いっそ誰かをかばって死にたい。そうすれば残される悲しみも薄くなるかな」
 
こんなことばかり考えていた。
明るい道がなぜか怖くて、光ひとつ差さない真っ暗闇を歩いていた。
早く命を終わらせてほしい、と願いながら……。
 
私は離婚家庭の子供だ。今でいう、シングルマザーの家庭である。
 
母は優しいが心の弱い人だった。人を助けては騙され、憂さ晴らしにお酒を飲む、そんな人だった。

そんな母の側にいなくてはと両親に「どちらと一緒にいるか?」と聞かれたとき、母といることを選んだ。
 
30年以上前になるが、選ばれるはずがないと諦めていた母の驚きと喜びの顔は忘れることはできない。
 
娘が支えて、母親が立ち直るハッピーエンド
 
となればよかったのだが、現実は違った。当時、小学生だった私では大人の心を支えるなんてできなかった。
 
母の自殺未遂を止め、近所に頭を下げて救急車を呼び、返ってきた母の看病をする、それが精一杯だった。
 
そんな生活に私の心もおかしくなった。
 
心の弱い母を前に泣くなんてできない、常に笑顔を保った。だが小学生の精神は未熟だ。感情コントロールなんてできない。
 
だから私は、選んではいけない手段を選んでしまった。
 
リストカット
 
毎日、毎日、休むことなく自分で自分を傷つけた。手首や身体だと気づかれるので、誤魔化しやすい手の指を小刀で切った。
 
そんな生活が突然、終わった。
 
近所の人たちが、見かねて父に連絡をしたのだ。
父はすぐに私を迎えに来た。
 
母は精神病院に入院することになり、私は父と一緒に暮らすことになった。
それまでは長期の休みに父と会っていたが、今度からは逆に母に会いに行くことになった。
 
無理に笑顔でいる生活は終わった。だがリストカットの癖は残った。
 
その頃には私にとって、リストカットは精神安定剤代わりになっていた。リストカットをしないと、不安で落ち着かない。「誰にも気づかれてはいけない」という気持ちも、更に不安をあおった。
 
父と母の間を往復しながらも、こっそりリストカットをする日々は15歳の夏まで続いた。
 
リストカットを止めたのではない、母が亡くなったのだ。
母は私との電話の最中に意識が無くなり、そのまま帰らぬ人になった。
 
母が死んだと知らせを受けた日の、無力感は忘れられない。
 
私は生まれつき身体が弱く、健康というものを味わったことがない。目が覚めている限り、身体のどこかは痛い。しかもリストカットにすがるほど、心もボロボロだ。
 
「大学は母の住んでいる場所の近くを選んで、また一緒に暮らそう」
 
それを支えに日々を頑張っていたのに、肝心の母が亡くなってしまった。
生きている意味が分からなくなった。
 
高校に進んでからも、やりたいことは見つからなかった。
相変わらず、心も身体も調子が悪い。
 
周りを笑顔でごまかしながら
「早く命を終わらせたい」と夜道を毎日、歩いていた。
 
そんな闇しかない日々に、光が差した。
きっかけは、友人に誘われてみたアニメだった。
 
スレイヤーズ
 
当時の一番人気のアニメは新世紀エヴァンゲリオンだった。その次に人気のあるアニメがスレイヤーズだった。
 
新世紀エヴァンゲリオンのヒロインの一人『綾波レイ』とスレイヤーズの主人公『リナ=インバース』、どちらのアニメのヒロインも林原めぐみさんが演じていたので、覚えている人がいるかもしれない。
 
スレイヤーズというアニメの主人公『リナ=インバース』は自分勝手としか言いようのないキャラだ。周りの迷惑を顧みず、ただ自分の欲望を優先する。
 
だが、とても魅力的だった。
 
『リナ=インバース』は自分の行動の結果から逃げない。どれだけひどい事態を引き起こしても、どれだけ非難されても逃げない。大きな困難にも立ち向かい。道を切り開いていく。
 
自由と責任を体現した、素晴らしいキャラだった。
 
スレイヤーズの世界は『リナ=インバース』だけではない。登場する人物すべてが、ありのままに生きていた。常識や世間の評判や周りのためでなく、自分の想いに正直に生きている人たちの世界だった。
 
強烈に憧れた。
 
物心ついた3歳の頃から、一度も本音を言ったことがなかった。周りの状況を観察して、望まれている表情をつくり、喜ばれる言葉ばかりしゃべっていた。そこに自分の意見なんてなかった。
 
自分の想いに正直に生きるスレイヤーズの世界を見て
はじめて思った。
 
「自分の好きなように生きたい」
 
その日から私は変わった。
 
望まれる自分がすることではなく、自分が好きなことをするようになった。
言いたいことを、批判されても言うようになった。
 
やりたいこと、好きなことに一生懸命になっていた。
身体の痛みを忘れるほど集中した。
 
気づいたら、リストカットをすることなんて忘れていた。
「死にたい」と夜道を歩くことも無くなっていた。
 
私の人生に、なぜか安定という言葉はない。
 
相続トラブルに巻き込まれたり、借金を背負ったり、寝たきりになったりと人生の荒波は何度も来た。けれども小刀で自分の指を切る日はなかった。
 
私は今、「毎日が楽しい」と感じて生きている。
 
身体の痛みがなくなったわけでも
過去の記憶に苦しめられる日がない、わけではない。
 
それでも毎日が楽しい。
 
なぜなら
自分に正直に生きていると
心から言えるからだ。
 
自分の人生を生きる道を教えてくれた
スレイヤーズの『リナ=インバース』には感謝の言葉しかない。
本当にありがとう。
 
 
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2019-02-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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