雑用と大聖堂
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:tomop(ともぴー)(ライティング・ゼミ日曜コース)
「どうせ、雑用だから」
17歳の息子にアルバイトの内容を聞いた時に返ってきた返事だった。
どうせも、雑用だからも気に入らなかったけど、そこで息子にとうとうと説いてもきっと聞く耳を持たないだろうと思い、この時はそのまま流しつつ、返事を返した。
「でも、工夫できることとか、その中でも自分だからできることとかもあるんじゃない?」
そうだ。
私は、つまらないことも楽しくできるようにすることが大好きだ。
そして、努力することも大好きだ。
どんなにつまらないと思われる仕事だって、楽しくできるようにしようとか、時間を短く終わらせようとか、工夫できるところはたくさんあると思っている。
とはいえ、今だからこう思うのかもしれない。
社会人になりたての頃に勤めていた会社では、気働きOLの勧めみたいな本を勧められて読んだ。
そこでは、一般職の女性社員が気がつく範囲で先回りをして気遣いをしましょうというような内容だった。
そして、電話対応一つでも仕事の成果に大きく関わることとして、電話対応が素晴らしくよかったから、受注量が増えたといったような内容もあった。
それまでは、私自身もそんなに重要なことだと思っていなかったかもしれない。
雑用と思っていることでも、あなどってはいけないと、その時に学んだ。
私はそれからもいくつか職を変えていき、どの職場でも雑用と思われる仕事はあったけど、多分手を抜いたことは無いと思っている。
だって、その方が楽しいと思ったから。
今の職場でも、一つひとつの仕事を楽しく効率的に行なっている同僚がいる。
OPPという透明の袋にパンフレットとサンプル小袋を入れて、サンプルセットを効率的にキレイに作成しているのだ。
彼女はサンプルセットを空いた時間でせっせとそれはもう効率的に作っている。
別の同僚は、写真のように残ったサンプルを部内のメンバーで分けるのに、いらない空き箱を工夫して、瞬時にわかりやすいメモと共に共有スペースに置いていた。
私はこれを見た瞬間、何て素晴らしいアイデアなんだろうと、写真を撮り、友だちにもシェアした。
そして、そのことを同僚にも伝えた。
こういう工夫をできる人は、日々の生活も工夫できるに違いないと思う。
先日、この話を読んだ。
ある旅人と3人のレンガ職人の話だ。
世界中をまわっている旅人が、ある町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しい顔をしてレンガを積んでいた。旅人はその男のそばに立ち止まって、
「ここでいったい何をしているのですか?」
と尋ねた。
「何って、見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろ。朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日レンガ積みさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」
男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。
「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに……」
旅人は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。
もう少し歩くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会った。先ほどの男のように、辛そうには見えなかった。旅人は尋ねた。
「ここでいったい何をしているのですか?」
「俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事でね」
「大変ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけた。
「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べいくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ」
旅人は、男に励ましの言葉を残して、歩き続けた。
また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうにレンガを積んでいるのに出くわした。
「ここでいったい何をしているのですか?」
旅人は興味深く尋ねた。
「ああ、俺達のことかい? 俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」
「大変ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけた。
「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ! 素晴らしいだろう!」
旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに歩き続けた。
引用終わり。
[引用元:福山市教育委員会PDF(福山市立城北中学校の生徒指導だより)『イソップ寓話』]
どんなに単純でつまらない仕事でも、そこに給料が発生しているのであれば、きちんとその職務を果たすべきだと思う。
そして、どうせだったら、感謝をしておもしろく仕事をできた方がいい。
さらに、歴史に残る大聖堂を作っていると思ったら、どんなに単純な作業でも、自分のやってる作業が歴史に残る偉大な事業の一つと思える。
自分のやっていることは、もちろん偉大な作業の一つだし、大きな仕事を成し遂げるために必要なことの一つだと思ってやると、気持ちも違ってくるに違いない。
私はこの話を、2年目女子が辞める時のチームの送別会で新人男子にとうとうと話した。
今も、これからも、単純な作業をお願いすると思う、でもその作業の一つひとつは、大聖堂ではないかもしれないけど、これからのことにとても大切な仕事だし、自分なりの工夫をしたり、偉大な仕事のひとつと思ってやってほしいと伝えた。
彼は淡々と単純な作業を一つひとつやってくれて、ひとつの大きなものを仕上げてくれた。
「ありがとう」
と彼に伝えた。
そして、毎晩23時すぎに帰ってると言った私に
「お手伝いできることは何でも言ってください」
と、とても爽やかに言って帰っていった。
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