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メディアグランプリ

ありがとう、メタルスライム


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:町田和弥(ライティング・ゼミ平日コース)

7年前くらいだろうか……
僕はとある個別指導塾で講師のアルバイトをしていた。

教室長:「町田く~ん、また今年も一緒に働けるね!」
まさか、この言葉を3年連続で聞くことになるなんて思ってもみなかった。

僕は学校の先生になりたかったから、
教える経験を積むために、塾講師のアルバイトを始めた……
ずるずる続けて4年6か月……

教員採用試験は4年連続、不合格。
面接でいつも落ちるから、人格を否定されているようで落ち込んでいた。

毎年、試験に落ちるたびに、
「はあ、このままずっとアルバイトかあ」
「将来、どうしよう……」
「30超えたら、転職むずかしいかな」
なんて、弱気になっていたのだ。

そんな弱気の僕に、毎年、教室長の石黒さんは
「町田く~ん、また今年も一緒に働けるね!」
と声をかけてくれたのだ。

この言葉だけをみると、やさしく思える石黒さんは、実はかなりのくせ者だった。

だって、教室長のくせに、いつも塾にいないんだもの……
「町田く~ん、ごめん! 今日さあ、本部によびだされちゃってさ、教室頼むわ!」

教室長にごめんと言われるたびに、
僕は授業をしながら、電話番をして、保護者様と生徒と三者面談をして、
ひどいときは、講師の面接をしたり、新規入塾希望の親御さんと面談したりもした。

しかし、ときどき教室に現れる石黒さんは、
持ち前の明るさで、講師たちのモチベーションを上げ、
類まれなる営業力で、新規入塾希望の親御さんたちを口説いていった。

しかし、講師のヤル気を上げ、見事新規入塾者を獲得するやいなや、
石黒さん:「町田く~ん、ごめん! あと頼むわ」
と言っていなくなるのだ。

いつもいて欲しいのに、たまにしか現れず、
現れたと思えば、すぐにいなくなる。
しかし、彼が周りにもたらす影響力は絶大であった。

そう、彼はまるで、ゲーム『ドラゴンクエスト』のレアモンスター「メタルスライム」みたいな人だったのだ。
なかなか現れないし、現れたと思えばすぐ逃げるけど、倒せば経験値をたくさんもらえるメタルスライム……

経験値豊富なメタルスライムのおかげで、
僕は電話や面談対応の経験値をたくさんもらうことができたし、
メタルスライムは、後輩講師への教育といった貴重な経験も僕に与えてくれた。

「いや、ちょっと待てよ」
「冷静に考えれば、ただうまいようにこき使われているだけなのか!!」
「これが、やりがいの搾取というやつか!」
「あとは任せた! といって、夜の街に消えているのではないか??」
なんて、思うこともあった。

「教室長もしかして、サボっている疑惑」が、モヤモヤと頭の中を満たしていくと、
タイミングよく、メタルスライムは教室に現れて、
「町田く~ん、飲みにいこう」
「町田く~ん、ちょっと塾抜け出して、お茶しにいこうよー」
といって、僕を外に連れ出して、
持ち前の明るさで、僕をヤル気にさせてくれるのだ。

教室長のてのひらで転がされながら、塾講師4年目の年に問題が起きた。
「講師たちとうまく会話ができない……」

講師たちは、ゲームの話だったり、ワールドカップの話だったり、
話題の雑談は活発にできるのに、
塾の生徒のことになると、言葉が少なくなってしまうのだ。

アラサーだった僕は、
塾で一緒に働く大学生講師たちの模範にならねばと思い、
率先して生徒の話を振るけれど、いつも一方通行……

ビジネスコミュニケーションの大切さを教えようと研修もするけれど、効果なし。

「どうして、どうして、どうして???」

そんなとき、メタルスライムが現れた。
メタルスライム:「どうしたら会話が弾むと思う? 相手に興味を持つことだよ」

僕の頭の中を満たしていたクエッションマークが、消えていく。
「チャラチャ、チャッチャチャー」
レベルアップの瞬間だ。

僕は、後輩の講師たちを理解しようとしていなかったのだ。
彼らは授業でいっぱい、いっぱいで、いつも一生懸命だったのに……
一生懸命な彼らに、僕はもっと頑張れと言っていたのだ。

仕事に対する向き合い方も人それぞれなのに、
自分の仕事に対する価値観を押し付けていた。
そんなこと、自分がされたら、自分だって、嫌な気持ちになるだろう。

「相手の気持ちを考える」
僕はそれができていなかったのだ。

それ以降、僕は相手に合わせてコミュニケーションをとるようになった。
たとえば、
・生徒思いのA先生とは、生徒の話をたくさんしよう。
・教科指導に熱心なB先生とは、教材や教え方について話し合おう。
・電話や面談が苦手なC先生のために、僕がお手本をみせてみよう。
など、相手が何を望んでいるのか、どうしたら彼らが喜ぶのかを徹底的に考えて行動するようにした。

相手に興味を持ち、相手の気持ちを考える、そんな単純で大切なことを
メタルスライムは僕に教えてくれたのだ。

サボっているなんて、疑ってごめんなさい。

「ありがとう、メタルスライム」
「違う、違う、メタルスライムじゃなくて……」
「ありがとう、石黒さん」

そして、「相手に興味を持つ」ことを学んだ翌年、
僕はようやく学校の先生になれたのだった。

そして、石黒さんはいま長年の夢であるバーを開店しようとしている。
相手に興味を持ち、相手の気持ちを考えることが上手な石黒さんのお店なら
きっといいお店になるだろう。

「町田く~ん、飲みに来てよー」
僕のラインにメッセージが届いた。
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2019-03-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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