「時間が忘れさせてくれる」ことの恐ろしさ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:唐土大毅(ライティング・ゼミ日曜コース)
「時間が忘れさせてくれる」は便利な時がある。仕事で大きな失敗をした。失恋した。こういうとき、この言葉を頼りにすることはあるだろう。
でも、「時間が忘れさせてくれる」はときに恐ろしい側面を見せる。
最近、震災から何年、何か月、という特集や特番をよく見かける。個人的に、特に目についたのは、8年前の東日本大震災のテレビ特番と半年前の北海道胆振東部地震の雑誌の特集だ。
思い返せば中学三年生の卒業式を終えた2日後、東日本大震災は起こった。震源は東北の三陸沖。当時私は川崎市に住んでいたが、短い時間ではあったが停電が起きた。二次災害も悲惨だった。原子力発電の事故。これを機に、原子力発電の議論が活発化した。今でも東日本大震災に関わる裁判が行われていることを、先日テレビを通して初めて知った。
北海道胆振東部地震は記憶に新しい。偶然にも、私は転勤で北海道に住んでいた。夜中3時過ぎ、大きな地震が訪れた。揺れが激しいなと思いつつ、少ししたら収まったので再度就寝した。朝起きて仕事へ向かう準備しようとすると、テレビがつかない。水が流れない。異変を感じた私は外へ出ると、信号の光はついていない。
食料を確保しなければ、と感じた。コンビニへ向かうと人だかりが。店内の電気も当然ついてない。お会計は手で計算。図らずも店員さんの胸には若葉マークがついていた。業務にも慣れていないのに、自分も生活が心配なはずなのに、やってくるお客さんのために誠意をもって働いている姿を見た。
夕方テレビをつけると、厚真町で土砂崩れが起き、山肌があらわになっていた。停電も全道起こっていたことが判明。順々に回復していった。
その日の夕刊も発行されていた。北海道新聞社は路上で販売。通信がつながりにくく情報が欲しかった私は、わらにもすがる思いで購入した。新聞には厚真町の土砂崩れの様子が大きく一面に。被害の悲惨さが伝わってきた。他にもライフラインやコンビニの状況などの市民が欲しがる多数の情報が。
震災の翌日も悲惨な光景を目の当たりにした。
液状化で話題になった札幌市清田区。仕事で新千歳空港に向かう途中通ったが、道路は波打っていて、唯一の移動手段である車を運転するのも危なかった。
空港にはたくさんの人が。飛行機が欠航になり帰れない人が大勢いた。いち早く情報を伝えようとマスコミも押しかけていた。空港内の本屋さんの棚からは本が消えていた。どこにいったのかと思ったのも束の間、床にばらまかれたように散乱していた。
鮮明に覚えているのは、北海道胆振東部地震だ。東日本大震災の方が規模は大きかったにもかかわらず。なぜだろう。
いくつか考えられる。
ひとつは体験したかどうか。実際に被災するのとしないのでは、やはり感じ方が違う。電気がない生活がこれほどまでつらいとは思わなかったし、生活に支障をきたすとは考えたこともなかった。通信もそうだ。震災後、人との連絡が取りづらかった。電気も通信も手や足のようにいつの間にか私たちの体の一部になっていた。なければ不自由を感じる生命線だった。
それともうひとつ。経過している時間が違う。8年前の東日本大震災と半年前の北海道胆振東部地震。規模にかかわらず時間が経っていない方をよく覚えている。
多分、みんなそうだ。時間が経てば、嫌なことも忘れる。
でも、被災という体験は時間がいくら経過しても忘れてはいけない。
日本は地震大国と揶揄されるくらい地震が多い国だ。私が生まれる前は阪神淡路大震災が起きている。近年は2016年に起きた熊本城が崩壊した熊本地震や、2018年6月の大阪北部地震など、規模の大きい地震が頻発している。けれど誰も予知できなかった。
また、災害は地震だけではない。台風や豪雨による被害も2018年は多かった。7月に起きた西日本の大洪水や、台風21号による全国の被害。
平成に起きた災害をすべて挙げようとしたらきりがない。危険はたくさん、そしてどこにでも潜んでいる。
でもこれらのすべてを、鮮明に覚えている人は果たして何人いるのだろうか。災害を自分事として捉え、備えをしている人は何人いるのだろうか。
もしあなたが備えを怠っているとしたら。
それは今まで実際に被災したことがなくて災害に対する備えの必要性を感じないから? それとも時間と共に記憶が風化してしまっているから?
それで大切な人を失ってしまったらどう感じますか?
大切にしていたものがなくなったら何を思いますか?
私は考えただけでぞっとしてしまう。そうならないためにも、災害を思い返すことがなにより大事だと思う。
そのための東日本大震災のテレビ特番だし、北海道胆振東部地震の雑誌の特集だ。それらはすべて警鐘となり、私たちの周りで鳴り響いている。
個人個人が備えを忘れないように努力することは必要だ。その意識がいつか、私たちを守ってくれる。
平成が終わるその節目に、いつ起こってもおかしくない災害の対策をする時間をつくってみてはどうだろうか。
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