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メディアグランプリ

地団駄を踏める能力


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:タクサガワよしえ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「キーッくやしい!」
人生にはそう思う瞬間がある。なんであいつが。なんで私が。そんな悔しい気持ちを「地団駄を踏む」という言葉で表現することがある。しかし皆さんは実際に地団駄を踏んだことがあるだろうか? 片足を軸にして、もう片足を強く地面に打ちつける。いや~悔しくてつい地団駄を踏んでしまったよ、なんて人はあまりいないのではないだろうか。実は私もこの動きをした記憶がない。運動会で負けるはずがないと思っていた子にあっさり抜かれた徒競走の時も、涼しい顔で人の声をけなしてくれた秀才中学生男子にも、当時はそりゃあ悔しい思いをした。だけど、心の中で「キーッくやしい!」と思っただけだった。
 
しかしついに、本当の地団駄を目の前で見る日がくる。
3歳の娘と公園に行き、さあ帰ろうかと言った時だ。娘は帰らない! と怒った。じゃあ、あと15分ね? そう言って15分後に声をかけるとまた娘は怒った。でもそろそろ帰らなきゃいけないし、さっき約束したじゃん、と私が言うと娘はもっと顔を真っ赤にして泣き出した。そして怒りながら、地団駄を踏んだ。
おおっ! 私はびっくりした。本の中の表現だと思っていたことを目の前で見てしまった。まさか実際にこの目で見る日がくるとは。しかも娘は、怒りで涙を流しながら渾身の力で足を地面に叩きつけるという、小さい身体ながらお手本のような地団駄をやってるではないか。なんと鮮やかな!
 
必死な娘の前に一人感心していたが、結局納得できない娘を30分後に無理やり連れて帰った。3歳ならそんな行動だってあるだろう、と思うかもしれない。しかし私も夫も、長女も末っ子もそんな行動は思いもしなかった。地団駄を踏まない私が産んだ、2番目の娘だけが地団駄を踏むのである。
 
そう、次女はとにかく負けず嫌い。しかもいくら時間をかけても満足を知らないから性質が悪い。幼稚園ではうっかり将棋を覚えてきてしまった。最初はよろこんで相手をしていた家族も、次々と脱落していった。なんせ自分が負けると鬼のように怒るのだ。ずっと不機嫌なのだ。家族が相手にしなくなると、今度は家に来た知り合いの大人に「将棋しようよ」と声をかけるようになった。そこで私は相手に耳打ちする。
「時間大丈夫ですか? 1時間以上はかかりますよ」「えっ?」
子どもでしかも女の子だから、とニコニコ座ったおじさんたちは一瞬戸惑う。そこで笑顔の次女を見て「いやいや大丈夫だよ~」と笑顔で答えるのだが、次女は負けたら怒るし、時間切れで帰ってしまったらやっぱり怒るだろう。となると、後始末をつける私がどのみち大変なのだ。結局勝負が始まると、おじさんの顔から次第に笑顔が消え、顔に焦りが見え、お愛想笑いもどこかへ蹴り飛ばした次女が真顔で対局する姿を、あーあと思いながら眺めるのである。そんな次女が唯一勝てないのはパパだったが、幼稚園から小学校にあがり4年越しでついに勝った。その勝負はなんと2時間以上かかった。勝てた次女はこう宣言した。「もう、しばらく将棋はしない。負けたくないから」と。疲れたからもう当分いいよ、と弱々しく夫が呟いた。
 
そんな次女が小学5年生になり、授業で百人一首をやることになった。生徒の気分を盛り上げるのが上手い先生で、毎日百人一首大会をしてくれる。そこで一番になりたくて、また次女の地団駄が始まった。今日は何位だった、と毎日報告してくれていた。ある日、本が欲しいと言い出したのでタイトルを聞いたら「百人一首の本と百人一首のかるた」と答えた。リビングで時間があれば本を読み、札を丸暗記している。それなのに「どうしても一番になれない」というので「最初の3文字くらいでバシーン!と取る訓練をしたら?」と余計なアドバイスをしたら、まんまとできるようになってしまった。アドバイスした私はそんなことは出来ないので、毎日負ける勝負をすることになった。今では100枚で勝負しても、次女80枚、その他家族20枚となるので次女以外はちっとも面白くない。しかも、ハンデをつけて万が一負けるということがあってはならないようで、将棋に続いて百人一首も次女の相手は居なくなってしまった。次はチェスと言い出したので、ごにょごにょと言い訳をしながら逃げているところだ。
 
この、悔しいという強い気持ちをリアル地団駄で表現できるのは次女だけだ。
だからこそ、彼女は強くなる。負けても楽しければいいや、というお気楽な長女にはない向上心がある。メリットがなければ頑張れない末っ子に少し分けてやって欲しいとさえ思う。全ての面でこの地団駄パワーが生かされればとつい期待したくなるが、子どもは親の期待を裏切るもの。獲物はいつも彼女自身で見つけてくる。親は目の前に引きずり出されたものを見て対処していくしかない。最適なライバルを見つけてやりたいと思うが、正直いって結婚相手を見つけるより難しいと感じている。次女のことだ。そのうちライバルもどこからか見つけてくるに違いない。
 
人には持って生まれた能力というものがある。
悔しくて地団駄を踏める能力。それは私にも、他の子にもない。そして長女の楽観的な感覚、末っ子の自分本位の思考だって、きっと能力なのだ。能力は備わっているものだから、無自覚で逃げようがない。
あなたにも、特殊な能力があるに違いない。
 
 
 
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2019-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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