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美術ノート:ゴッホ君も頑張ってるんだよ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉田 健介(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「へーこんな作品もあるのか」
 
僕はオランダにあるゴッホ美術館にいた。
平日だというのに、入館するのに1時間程並んだ。
人の波をかいくぐりながらも、じっくりとゴッホの作品を鑑賞していた。
 
仕事の休みを使って、1週間ヨーロッパの美術館を巡っていた。
馴染みのある画家だけに、肩の力を抜いて見に行ったつもりだったが、見たことのない作品や知らない作品も多く展示されており、さすが本場だな、と満足して帰ったのを覚えている。
 
日本国内でも定期的に展覧会が開催されるゴッホ。
催されるたびに、豪快な筆使いと、ゴテっとした絵具に、毎回惹きつけられる。
 
筆のタッチや絵具の厚み、色の鮮やかさ、彼の辿った人生など、話題性のある画家であり、名前を知らない人は、ほとんどいないのではないか、と思うほど有名な人物である。
 
「日本はゴッホの印象が強いからね」
 
ある時、知り合いがそう語っていた。
油絵といえば、筆の豪快なタッチや、絵具の大胆な厚塗りをイメージする人が多い、という意味だ。
それはゴッホの影響が大きく
 
「油絵の作品を描いてるんです」
 
と聞けば、そうした大胆な画風をイメージする人が多いということだ。
 
だが、ゴッホが作品を描いていたのは19世紀末のことだ。
今から100年と少し前のことである。
ちなみに、油絵の技法が確立したのは15世紀頃だ。
 
油絵具自体、もっと前から存在しており、レオナルド・ダ・ビンチや、ルーベンス、レンブラントなど、有名な画家は多くいる。
しかし、彼らの作品のどれを取っても、ゴッホのような厚塗りはしていない。勢いのある筆のタッチではない。むしろ、その逆で、絵具は薄く、何層も塗り重ねられ、筆跡は繊細である。
なぜ19世紀の後半になって、ゴッホのような画風が突如として誕生したのか。
その理由は意外にもシンプルな所から来ている。
 
「まだまだスタートです。これから頑張ってください」
 
先日、天狼院書店主催の「写真で食べていくための全力ゼミ」が終了を迎えた。
昨年末から天狼院のフォト部としてカメラの勉強を始めた僕は、青山先生の写真ゼミを始め、京都天狼院主催の中尾先生の写真講座にも参加し、色々と写真について学んでいるところである。
 
「誰でも撮れるから」
 
青山先生も中尾先生も、今は誰でも撮れることについて語っていた。
デジタルカメラが登場し、スマートフォンのカメラも高性能になり、誰もが気軽に写真を撮ることができるようになってきた。
一昔前のフィルムカメラと比べ、カメラに対する敷居は気軽なものになっているのだ。
 
実は19世紀、油絵業界にも同じような現象が起こった。
それまでは、顔料を砕き、油と混ぜながら一色一色の絵具を練るなど、あらゆる工程を経て油絵具は完成していた。一言で言うと、面倒臭かったのだ。しかも、とてつもなく。
 
それが、ある物の登場で、油絵を誰もが気軽に描くことができるようになったのだ。
それが出来たことで、お気に入りの場所へ出かけ、気が済むまで制作に没頭できるようになった。自分で顔料を調達し、油と混ぜ合わせて、調合する必要がなくなったのだ。
面倒臭い工程は一切必要ない。
店に行けば、自分の欲しい色が変え、それを持って、いつでも好きな時に色を出すことができるようになったのだ。
 
チューブの登場である。
 
絵具、といえば、すでにチューブに入っており、今の我々からすれば、何ら珍しいものではない。
しかし、絵具のチューブが開発されたことで、誰でも気軽に絵を描くことができるようになった。
ポケットからスマートフォンを取り出し、綺麗な花や、美味しそうなパフェを撮影するように、チューブから好きな色をパレットに出し、好きな物をお手軽に描くことができるようになったのだ。
 
ゴッホが油絵を描いたのは晩年の数年間のことだ。
それまでは全く違う人生を歩んでいた。一般的な市民の一人であったのだ。
また彼は晩年、精神病を患っている。
 
面倒な工程が必要な油絵具は、ある程度、裕福でないと作ることが出来なかった。ある程度、落ち着きと、教養がないと描くことができなかった。
 
つまり、チューブが登場したことで、少し変わった人でも絵が描けるようになったのだ。
裕福でなくても、精神的に不安定であっても、表現したい、という欲求がある人なら誰でも作品を作ることができるようになったのだ。
 
改めて、あの自由な筆使いや、分厚い絵具を見てほしい。
やりたいように、描きたいように描いてるゴッホの姿が見えてくる。
○○でなければならない、といった、歴史的な流れや、慣習的な縛りはない。
純粋に、対象物へと向かう作者の熱量が感じられるのだ。
 
実は、今年、ゴッホ展が日本で開催されることになった。
関西に住む僕は、2020年の巡回時にチェックするつもりである。
 
特別な技法やテクニックではなく、描きたいように筆を走らせ、乗せたいように自由に絵具を使うゴッホ。
彼の作品を見て、今の自分に響いてくるもの、教えてもらえることを味わいたいと思う。
 
「ゴッホは天才」
「ゴッホは素晴らしい」
 
ではない。
 
「やるやんゴッホ君」
 
と、頑張っている知り合いを見るように、作品を見るつもりだ。
 
 
 
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2019-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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