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寝たきり目前だった母にかけられた禁断の魔法?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中比奈子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「こんな状態で生きていても良いことないし、早く迎えに来てほしい! 元気な年寄りはたくさんいるのに、なんで私ばかり?」と、毎晩毎晩繰り返す後ろ向きの発言を聞き、あれこれと励ましの言葉をかけながらも、私自身「母はこのまま寝たきりになって人生を終えていくのか」と諦めた気持ちになっていたあの頃。
 
それから数ヵ月。現在は、あんなに折れ曲がっていた母の背はまっすぐに伸ばせるようになり、常に足腰にキリキリと走っていた痛みもほぼない様子。痛みで楽しめないからと、行きたがらなかったデイサービスにも、大喜びで出掛けています。着ていく洋服にも気を使うようになり笑顔も増え、誰がみても驚くほど雰囲気が若返りました。
 
いったいどんな魔法が?
 
事の起こりは3年ほど前のある日、ひさしぶりに実家に戻った私は、母を見て言葉を失い
ました。70代に入ったばかりの母の背が海老のように曲がってしまい、まっすぐに立てなくなっていたのです。生まれながらに病弱で、40年以上も糖尿病と付き合い、足腰のしびれはかなり以前から訴えていたものの、見た目には何も問題ないように見えていたのに、本当にあっという間の変化でした。
 
整形外科では対処療法の痛み止めの座薬を処方されるのみで、薬の効き目も徐々に弱くなり使用間隔も短くなっていきます。知人の紹介で通い始めた整体でのマッサージでも、つかの間の安らぎは得られるものの改善の兆しはみられません。椅子に座ってテレビを見るのも辛くなり横になる時間が増えるとともに、あんなに快活で明るく朗らかだった母でも、あれこれ不安な事ばかり考えて泣き出す事が多くなり、いつしか毎晩1時間あまり母の愚痴を聞くというのが私の日課に加わっていました。
 
その頃から私は、再びスポーツジムに通うことにしました。若い頃は、ダイエット目的やただ単に楽しいからと通っていましたが、50才を超えたことで、「将来の健康のための先行投資」と割りきって少々高めの月会費を払い、年配の方々に評判の良いスポーツジムに入会したのです。ここでの出会いが母を若返らせる事に繋がりました。
 
私の通い始めたスポーツジムは、エアロビクスなどのエネルギー燃焼系のプログラムが非常に少なく、ストレッチやヨガなど身体を整える系が充実しています。トレーニングマシンもムキムキ筋肉を鍛えるものはなく、普段なかなか使わない筋肉を「使う」という目的のものが主になっています。元々の理由は、雑居ビルの高層階にあるので階下に気を使っての事のようですが、激しい運動の代わりに取り入れられた「身体を整える系」のプログラムこそが、「元気な老後を支える魔法」だと、私は母を通じて体感しました。
 
以下が私のイチオシ「若返りの魔法の基本的な考え」です。
 
「筋膜リリース」というストレッチの新しいジャンルが数年前から出ていたようですが、恥ずかしながら初めて知りました。
・筋肉は筋膜に覆われていて、筋膜とは全身タイツのようなもの。
1ヶ所が固まり縮むと他も引き連れてあちこちに不調が出る。
・筋膜は動かさなければ固まる。
・固まっているものを無理に動かせば痛い。
 
「背骨、仙骨を整える」
・背骨の基である仙骨がずれると背骨や首などに歪みが出て神経にさわる。
・筋肉をほぐして、適度に動かし、正しい位置に骨格を戻す。
・整えた骨格が歪まないよう筋肉をつける事が大事。
 
母の住んでいる私の実家は田舎で、そんな気の効いたスポーツジムなどあろうはずもなく、私が覚えてきた事を伝えただけで改善したので、全然難しいことはなく誰にでも出来ると思います。
 
まず始めに、あれこれ運動を教えても痛くて思うように動かせないので、「ブルブルちゃん」(命名 母)を買い与えました。電動のストレッチローラーです。本格的な使い方は色々ありますが、母にはとりあえず寝起きなど動き始める前に、足腰に当ててブルブルする。いつでもいいので痛いところも痛くないところも順番にブルブルを押し付けて筋膜をほぐすように言いました。たったこれだけでかなり痛みが軽減したようです。そして、ある程度動けるようになった頃ケアマネージャーさんに一人で出来る無理のない運動を教えてくれる先生の派遣などは介護保険でできませんか?と聞いたところ「出来ますよ」との返事。「あるならもっと早くに提案して欲しかった」と思いつつ早速手配してもらった所、これがまた大当たり。おしりの奥の凝りをほぐしてもらえたことで、足腰の痛みやしびれが飛躍的に改善したのです。痛みが消えたことで、がぜん張り切って身体を動かすようになり、デイサービスなど行動範囲も広がりました。人と会う機会が増えればおしゃれにも気を使うようになり、みるみる雰囲気が華やいで若返ってきたのです。
 
母の若返りには、整形外科の先生は何の役にもたっていません。整形外科の先生にこそ痛みを取り除いて健康を取り戻すための筋膜リリースのような勉強をして、外来に来る患者さんたちに広めてほしいものです。医療費削減にも寝たきりを回避して健康寿命を延ばすことにも繋がっていくのに「なぜ?」と思わずにはいられません。本当に勉強不足で知らないのも問題ですが、真しやかに囁かれる製薬会社との癒着など大人の事情があるために、お医者様には使えない禁断の魔法になっているのかも? と思うとやりきれなさを感じます。
 
 
 
 
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2019-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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