メディアグランプリ

男か女か、それ以外か。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:浜松 幸(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
昔から人類は2つにわけられてきた。男か女か。この2つに。
男は青、女は赤。男はズボン、女はスカート。男らしさ、女らしさ。男女という2つでわけられているが、ここに疑問を抱いたことはあるだろうか?多くの人はないだろう。しかし、私は疑問を抱き生きてきた。いまから、女に生まれ、男で生きる私の話を少ししようと思う。
 
父と母と姉。普通の家庭の「次女」として生まれた。姉のことが大好きで、なんでも真似をしたがって、ずっとあとをついてまわるような子。だけど、リカちゃん人形で遊ぶのが好きになれなかった。おさがりの「スカート」も嫌がった。
 
小学校にあがると、「赤いランドセル」が嫌になった。最初はガマンしていたが、耐えらず、黒いマジックで塗りつぶそうとした。すぐに先生に見つかり、あえなく断念。
 
中学校。男女をわける「制服」の登場。入学前の制服注文で「学ランで行きたい!」と母に言った。相手にされなかった。わかっていた。相手にされないことも、変なことを言っているのも。この頃から「来世、生まれ変わったら男になろう」と諦めと希望を抱くようになった。
 
そして、大きく人生を変えた高校生。
「ちゃんとした女子高生にならなきゃ……」と決意。「ちゃんとした女子高生」は、大げさでもなくモテた。でも、付き合えば付き合うほど、違和感が大きくなった。誰と付き合ってみても、彼氏というより一緒にいて楽しい男友達の感覚だった。
 
「みんなの言う、彼氏へのドキドキがわからない……」
 
と同時に、うっすら気づいた自分の気持ちがあった。
 
「女の子が好きかもしれない……」
気づきはじめたら止まらなくなった。彼氏がいても、「あの女の子かわいい!」とはしゃいでしまうのだ。
 
そして事件は起きた。
隣のクラスの加奈。保健室で偶然出会い、バンドの話で盛り上がり、クラスがちがうけど、急激に仲良くなった。黒髪ロングストレートがよく似合ってた。
 
高校2年の9月。北海道への修学旅行。
最後の夜に部屋に呼ばれたと同時に先生の見回りがはじまった。見つかってはまずい。加奈は、ベッドに引っ張り込んだ。2人で布団をかぶってやり過ごそうというのだ。これはこれでまずい。加奈が、目の前。お互いの息がかかる。
心臓の音が聞こえるかも、なんてマンガのようなことが頭をよぎる。嬉しいような困ったような初めて味わう感情が一気に押し寄せてきて思わず言ってしまった。「こんなに近いとチュウしちゃうよ……」
 
しまった! と思ったときにはもう遅い。取り消せない。言葉は残酷だ。
 
チュ。
 
ん? なんだ。なにが起きた。私からはしてない。してないぞ。
「たしかに、しちゃうね……」って加奈が言う。おでこにキスをされたのだ。それを合図に、止まらなくなった。いままで押し殺してきたものが一気に溢れた。
 
人生で1番長いキスをした。
少女漫画のような、恋愛ドラマのような1シーンだった。
 
東京に戻ると再び事件が起きた。デマが広まった。
「あいつら付き合ってるらしいよ」
残念ながら付き合ってはない。しかし、このままにするわけにもいかず、私は大きな決断をした。
 
彼氏をつくろう。その彼氏と年を越せたら、女の子が好きだというのは思い違い。年を越せなかったら、女の子が好きだと認めよう。
 
そう決めた9月の終わり、彼氏ができた。とても楽しく一緒に過ごした。趣味も合った。顔も悪くないし、優しい。だけど、一度気づいてしまった自分の気持ちは隠せず、年は越せなかった。
 
自分の気持ちに気づき、インターネットで「レズビアン 出会い」と検索。同じ境遇の人がどれくらいいるのか気になった。「マイノリティ」って言われているけど、たくさんの人がいた。人生初の彼女もできた。
「カミングアウトはしない方がいい」とネットの仲間からの忠告と受けたが、どうにもこうにも自慢したくてたまらない。たかだか17年の人生。友達すべてを失っても伝えよう! そう思った。
 
が、やはり怖い。いままでの当たり前がたったひとことで崩れるかもしれない。そう思うと怖い。でも、一歩を踏み出さなきゃ。
 
「いまから伝える話を聞いて、もしかしたら友達をやめたくなるかもしれない。もし、そうなったらそれは仕方ないのだけど……。彼女ができました」
 
長く長く感じた。顔を見ることができなかった。
「話ってそれだけ?」
嫌われたと思った。覚悟した。
 
「よかったね! おめでとー!」
「やっぱそうゆう話かー! どんな人?」
 
拍子抜けした。あれ? なんで?
「別に誰を好きでもあんたはあんたでしょー!」
 
覚悟を決めたけど、本当はやっぱり怖かった。だから、とっても安心した。
みんなが彼氏の話を嬉しそうにするとき、私は彼女の話を堂々とした。
 
それから3ヶ月。また大きく人生を変える出来事が起きた。
生まれて初めて「オナベ」の人に出会った。女に生まれ、男で生きる人。歌舞伎町のホストじゃなくて、介護業界で働く人。衝撃が走り、すべてが繋がった。
 
「あ、そうか、男だったのか」
 
女の子を好きな女の子。ではなくて、女の子を好きな男の子だった。その日から男の子で生きることにした。
 
当時17歳の子どもがするには大きな決断だった。まだまだ世の中に情報がなく、「LGBT」という言葉もなかった。だが、いま世の中は変わりつつある。男か女の2つではなく、その間にいくつもの「性」があると考えられている。そう、まるで虹のように、性はグラデーションなのだ。
 
 
 
 
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2019-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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