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メディアグランプリ

若作り営業マン上司から学んだ、営業女子の武器


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小倉みゆき(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「その笑顔、ホント武器だね」
闊達で細身スーツを着こなした、いかにも仕事ができますという風貌の上司が言った。
40歳には到底見えない。悔しいけれど格好いい。
 
きっと、私への労い言葉なのだろう。
が、上司はほとんどこちらを見ていない。
今日上司自身が失注した大型案件が頭をよぎっているのがわかる。
私の小粒案件なんてどっちでも良かったのだろう。
 
小さい時から笑顔はよく褒められていたし、
笑顔であることが美徳だと育てられた。
通っていた女子校の裏校訓は「誰からも愛される、かわいこちゃんでありなさい」だった。
 
ただ、営業歴も6年を終え、7年目に入ってきた私には、
この言葉が嬉しくなくて仕方がない。
「別に笑顔だけで契約とっているわけじゃないし」
この言葉を向けられるたびに、嫌味でちょっとうがった気持ちの私が顔を出す。
 
1年目、2年目の私は
笑顔を褒められることが嬉しかった。
まだ何もできなくても、自分が持てているものはちゃんと使って仕事に向き合っている、と評価されていると思った。
美人とは言えない自分が
笑顔という武装で愛想良く見せることは
私が生きていく上で必要不可欠だということは、就活時に思い知らされていた。
 
男性営業の中で、唯一の女性営業として働いている私は、
赤い魚たちの群れにいる黒いスイミーなのだと
自分の持っている武器を使うことが自分のためでありチームのためでありミッションであると
信じて疑わなかった。
 
使えるものは有効に使わなければ
ただのはぐれものになってしまう。
みんなから役にたたないと思われてしまえば、
共通要綱を満たしていない私は仲間外れにされてしまう、という危機感もあった。
 
ただ、今の私は違う。
 
6年間、メンバーと同じように、いやそれ以上に仕事もこなして、
仕事のスキルも上がった。
自信もついた。
女性で愛嬌がいいから多少のことは目をつぶろう、という契約なんて
ここのところはないと言える。
 
40歳の若作り上司に言いたい。
あなたが信頼度を高めるための武器にしている
鍛えている体、その体にあったスーツ、手入れの行き届いた靴。
それらと、私の笑顔は同じ効果しかない。
それが、印象をあげることはあっても、契約をもたらしてくれるものではない。
 
今後のスケジュールを軽く報告し、自席に戻る。
上司は上司で、大型案件失注の報告に忙しそうである。
その時にふと上司の後ろ髪がちょっと崩れていることに気づく。
いつもどんな時もピシッとした後ろ姿だったのに。
 
みてはいけないものを見てしまったような気持ちになった。
はっとした。
いつものピシッと決めてくれている上司も
努力で武器となるピシッとした印象を手に入れているのだ。
当たり前だったから努力なんて見えてなかっただけだったのだ。
 
メンテナンスを続けているものでないと武器にはならない。
当たり前だった。
私だって笑顔でいられない辛い時もあるけれど
それでも笑顔でいようとするから
武器として装備ができているのだ。
そう言えば、上司と飲んでいた時に、最近走るの辛いってこぼしてたっけ……。
きっと上司も自分の印象も維持すべく努力していたのだ。
 
笑顔が武器だと言ってくれたあの労いの言葉、
営業の共通のスキルだけじゃなく、
自分の強みを維持できている私を褒めてくれていたのかもしれない。
そう思うと、疲れた上司の労いに、良い顔をできなかった自分を反省する。
笑顔を褒められたのに、全く笑顔で返せていなかった。
 
ふとまた先日の飲み会を思い出す。
最近上司は、ちょっと渋くていい時計が気になるらしい。
ちょっと派手でゴツゴツした時計をしている上司からそんな言葉が漏れていた。
40歳の自分に、今の若作りは得策でないと考えたのかもしれない。
大型案件対応も増え、もっと貫禄が必要だと判断したのかもしれない。
笑顔が武器だね、と言われて嬉しくなくなった私と同じように、
上司も、若々しいね、という言葉が嬉しくなくなってきているのかもしれない。
 
私も嫌だ嫌だとばかり思っている訳にはいかない。
28歳。
次に手に入れる武器は何がいいのだろう。
大人の女の安心感や信頼感を手にしていきたい。
そろそろ色気なるものも出していかないといけないかもしれない。
上司の時計にあたる、私の格や印象をあげるもの……。
メイクだろうか、前髪でもかきあげればいいだろうか。
読んでいる雑誌の見直しも必要だな。
 
武器は欠かさぬメンテナンスを続けるとともに
ランクアップもさせていかなければならない。
 
さて何をえらぼう。
次の上司からの労いの言葉が楽しみだ。
 
 
 
 
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2019-04-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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