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20代を顔色悪く過ごした私が、30代後半にちょっと変わった件


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:與十田喜絵 (ライティング・ゼミGW特講)
 
 
20年くらい前の話になってしまうが、社会人2年目の4月のこと。私は通勤電車の中で急な腹痛に襲われた。体中から汗が吹き出し、「これは無理だ」と思って途中下車。人生で初めて救急車に乗って病院に連れていってもらい、入院。急性腸炎だった。
 
同じ年の秋に、今度は職場で腹痛に見舞われた。また救急車のお世話になり、入院中に手術の必要があるところが見つかった。時期を改めて手術ができる別の病院に入院し、会社も長期休暇をいただくことになってしまった。
 
健康がとりえだと思っていた自分が、1年に3回も入院してしまったことがショックだった。会社でも「体の弱い、取扱い要注意の社員」という印象になってしまったと思われる。
 
社会人4年目に転職した会社では3年勤続した。忙しいながらも同僚にも仕事内容にも恵まれ、楽しく働くことができていた。が、最後は体調を崩して約1カ月の長期休暇を取得。復職する気力がわいてこず、退職を願い出た。
 
「自分は3年しか仕事を続けられない、忍耐力の足りない人間なのではないか」
「この先、どんな職場にいっても3年で逃げ出してしまうのではないか」
そんな不安を抱えつつ、転職サイトに登録したり、ハローワークに通ったりしながら次の仕事を探した。
 
そして入社したのが今の職場だ。
 
「また3年しか続かないのでは」ジンクスを乗り越え、勤続13年目を迎えることができている。30歳になる数日前が今の職場への入社日だったが、そこから干支1周以上が過ぎた。
 
私が今の職場で働き続けられているのはなぜか?
 
学生時代から携わりたかった分野の仕事で、やりがいがある、というのも理由の一つだが、それだけではない。今の仕事でも、前の職場でそうだったように「逃げ出したくなる」状況に陥ることもあれば、ストレスでお腹が痛くなる日もある。割と、しょっちゅうある。
 
それでも、逃げ出すことなく、お腹の痛さも乗り越えて仕事が続けられるようになったのは、休みの日に体を動かして汗を流すようになったからではないか、と自分では分析している。「積極的休養」と言うらしい。
 
思い起こすと、20代の私は本当に顔色が悪かった。
平日は深夜までの残業をする日が多く、休みの日はお昼頃まで寝ていることも少なくなかった。悶々とした気持ちと真正面から向き合い、でも向き合ったところで解決するでもなく、暗い顔をしていた気がする。
 
私には年の離れた姉が2人いる。年に数回しか会わない姉だが、常に私の数年先を生きている人生の先輩として、妹である私に何かと助言をしてくれる。
 
「20代はがむしゃらに働いてもなんとかなるけど、35歳をすぎるとガクッとくるよ」
「そうそう、風邪をひくと長引くし、ちょっとした傷もなおりにくくなる」
 
そう聞いてはいたが、なかなか実感がわかなかった。あの日が来るまでは……。
 
忘れもしない2013年12月29日。
前日に仕事納めをして、ようやく年末年始休暇を迎えるという朝。
首に激痛が走って目が覚めた。何が起きたのか分からない。
痛すぎて起き上がることもできず、「あいたたた……」と呻くことしかできなかった。
ぎっくり腰、ならぬ、ぎっくり首、というものがあるらしいと、後から整形外科で聞いた。
特に神経に異常があるわけではなく、長時間パソコンやスマホを見すぎていることが原因のようであるとのこと。
 
痛み止めの飲み薬と湿布で年末年始を乗り切り、年明けに通院して電気治療を受けたが、なかなか良くならなかった。
 
友人に紹介された整体に通って症状が良くなったものの、1年ほどして分かったことは、整体も対処療法でしかなく、また痛みがぶり返すということ。
 
2015年の夏、とあるランニングサークルの皆さんとの出会いがあった。月に1度、皇居ランイベントを開催しているそのサークルでは、ただ走るのではなく、参加費の一部を寄付して社会貢献につながる仕組みにしたいと考えて寄付先団体を探していた。その寄付先団体に、私が勤めるNGOを選んでくださったのだ。なんとありがたい!
 
そんな素敵な皆さんに一度ご挨拶に行かねばと、皇居ランイベントに参加してみることにした。
 
近年ランニングブームで皇居の周りを走るランナーが増えていることは聞いていたが、私は「長い距離を走るなんて無理。気が知れない……」と思っていたほうだった。
 
が、「一度ご挨拶」にうかがった皇居ランで5キロ完走することができた気持ち良さは私の想像をはるかに超えていた。土曜日の朝8時に皇居近くのランニングステーションに集合する若くて心身ともに健康な皆さんがこんなにもたくさんいる! ということも衝撃だった。
 
以来、毎月1回の皇居ランへの参加に加えて、土日のどちらか1日は家の近所を走るのが徐々に私の習慣となっていった。走る距離も少しずつ長くなり、ハーフマラソンを数回走ったのち、ついにはフルマラソンに出るまで「はまって」しまった。自分でも予想しない展開だった。
 
「そんな長い距離を走るの、しんどくないの?」
「仕事が忙しいのに、なんでそんなに元気なの?」
 
と聞かれることがあるが、
「仕事で疲れているときほど、走ったほうがむしろ疲れがとれて気持ちいいんだよ!」
と答えている。
 
体の中の悪いものや仕事やプライベートでのもやもやした気持ちが、汗と一緒に体の外に出ていくような感覚があることも説明するが、なかなか信じてもらえない。首の痛みで悩んでいたこと、走るようになってから、整体にも整形外科にも行かずにすんでいることを伝えると信憑性が少しアップする。
 
平成最後のゴールデン・ウィーク初日、大学時代をともに過ごしたメンバーで集まった。
久しぶりに会った女の先輩から、「なんだかイキイキしてるね!」と声をかけてもらえて嬉しかった。
 
その女の先輩も、仕事と子育てで忙しい中でも走り続けている筋金入りのランナーだ。
 
 
 
 
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2019-04-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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