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メディアグランプリ

「リハビリでも予防でもありません。マジなんです」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:タムラユキコ(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
「はい。50歳です。女です。全くの素人です」
「あ〜、うちではちょっと……」
これで、7軒目。 断られたのである。「熊本・剣道・習う」で検索したリスト。残りは
最後の一軒だけ。“白川剣悠会“ その名前をみつめ、「はぁ〜……」と大きな息を吐く私。
名前だけでも本気の道場の雰囲気だし、50歳だし、女だし、全くの素人だし。ここに電話したら、その瞬間に私の希望は終わるんだと思うと、なかなか番号を押せなかった。
 
 
50歳になり、白髪は増え、階段では息が切れる、1日のほとんどが、「あれ、あれ、」と言ってるし、化粧品のCMが言ってるまんまの、たるみ、シワ、しみもバッチリ! 何となく自分の人生が終わりの方向へシフトしていってる感じがして、毎日に気合がなかった。それでも、日々は淡々と繰り返し、「このままでいいの?」と思う自分と「これが自然の流れなのよ」よ諭す自分がいつも葛藤していたのだ。
だから、50歳記念の中学校同窓会は行くのをためらった。 近所に住む親友の幸子が役員でなければ確実にパスしていたが、半ば無理やり参加したわけだ。
会場に着くと、笑い声がBGMになっていた。あちらこちらで「いや〜ん、懐かしい!元気だった?」という会話が弾んでいた。
その中で、一人、とても懐かしいと感じる男がいた。向こうも同じ感覚だったのだろう。
「何で一緒だったんだっけ?」
「中学のクラスは違うもんねえ」
「塾?」
「高校?」
結局、彼とは小学生の時、同じクラスだったとわかったのだが、色々会話を楽しんだ。
彼はノルゥエーに駐在していて、趣味の剣道をノルゥエーでも続け、文化交流をしていることを楽しそうに語った。全く剣道には無縁の私だったが、あまりにも純粋に一生懸命語る彼の話に少しづつ、同化していったのかも知れない。彼が勧めてくれた“名勝負〝をユーチューブで観たのは帰宅したその夜だった。
 
 
観戦した私には衝撃が走った。思考回路が誤作動を起こしたに違いないのだが、見終わると同時に「剣道を習う!」と決めたのだ。
断られ続けること7軒。リストの残りは1軒。私の思いつきが正しいのか勘違いなのかは神のみぞ知ると言い聞かせ8回目の
「50歳です。女です。全くの素人です」
すると、先方は
「ワハハ!いいですね〜。どうぞご一緒しましょう」
キタ〜!!!!!!!!!!!!!。
人生の中のどの合格発表より嬉しかったかもしれない。
それから、2年。土曜日の夜にお稽古する生活を送っている。後から入ってきた子供達にどんどん
抜かれ、未だに昇段試験を経験することもなく。もっと真実を言えば、道着も着れずジャージで竹刀をふっているのだ。剣道経験者の友人はこう言った。
「剣道をジャージでしてる人いるのぉ?」と。
 
 
50歳、女、全くの素人。でも、背筋が伸びてお腹の底から声を出し、裸足で感じる自分の体と心。素通りしやすかったきちんとする礼儀。お道具を労わる心。剣道を通じて感じる様々な感覚。忘れかけていた日本人という心。
50歳だから感じられるのかも知れないと思う。有段者にはなれないかもしれないが、私にはそれ以上の収穫である。
 
 
日々、50歳を憂鬱に感じていた私だったが、剣道ではまだ50!!なのだ。
私を受け入れてくれた道場はたくさんの有段者を育て世にだしている本気の道場。その中でジャージで一向に上達しないオバさんが一人。きっと周りはリハビリ?予防?と思うかも知れない。
いやいや、本気ですから。
師匠はこう言ってくれた。
 
「100歳までご一緒しましょう」と。
人生、もう50歳と捉えるか、まだ50歳と捉えるか、本当に自分次第ではなかろうか。
 
 
背筋が伸び、声が腹から出て、新しい仲間もでき、目指すものがある。
私は、私の毎日がとても貴重に感じている。

 
 
 
 
***
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2019-05-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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