メディアグランプリ

平成最後に読む本は、君に決めた!


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:うえたゆみ(ライティング・ゼミ土曜コース)
 
「どうしよう」
 
私は悩んでいた。
 
「平成から令和への元号越しは、どの本と過ごそうか?」
「経済の楽しさを教えてくれた『百万ドルをとり返せ!』、自分に正直に生きることを魅せてくれた『スレイヤーズ』、かけひきの師匠『孫子の兵法』に『韓非子』、人生のコンパスになってくれた『7つの習慣』、お金の人生の関係を知った『ユダヤ人大富豪の教え』、日本人の根本を伝えてくれた『古事記を教えてくれる 天命追求型の生き方』、身体を軽くしてくれた『うつ消しごはん』、人類の歴史をひも解いてくれた『サピエンス全史』」
「どれを、どれを読めばいいんだ」
 
どの本も”私といっしょに過ごそうよ”と六本木の客引きのごとく誘ってくる。どの誘惑もはちみつのように甘く、目移りをして決められない。嬉しい悩みだが、答えは出なかった。
 
私は、本に人生を救われた人間だ。ベッドから起き上がれない日は、冒険に連れ出してくれた。いっそ殺してくれと願った日は、眼の前を照らしてくれた。学校に行けない日は、先生になってくれた。今の私がいるのは、本のおかげである。
 
平成から令和へと変わるこの時、共に過ごす相手は本しか考えられなかった。だが、私は一人しかいない。すべての本と過ごすことはできない。たった1冊を、決めなければいけない。だが、どれほど悩んでも決められなかった。
 
そんな悩み続けていた私の頭に、ある人のイメージが飛び込んできた。京都天狼院書店の池田さんだ。同時に、会話も思い出した。
 
「ツイッターで、この本を熱く推してましたね。熱い想いが伝わってきました」
「この作家さんを、ご存知ですか?」
「お恥ずかしながら、まったく知りません」
「私ね、この方の文章が大好きなんですよ」
「わかりました。池田さんが勧めるなら、買います」
「ありがとうございます」
 
私は、間違っていた。新しい元号を迎える節目なのに、過去にとらわれていた。むしろ読んだことのない本に、挑戦すべきなのだ。これまで池田さんから聞いた本に、ハズレはない。それどころか、いつも心の鐘を鳴らされる。池田さんのオススメ漫画『虫の歌』をライティング・ゼミ前に読んで泣き、困ってしまったぐらいだ。
 
本は決まった。
 
あとは、読むだけだ。
 
新しい本を開く時は、ドキドキする。高鳴る胸を抑え、小林秀雄氏が書いた『読書について』の世界に突入した。
 
ゆっくり読むつもりが、最後まで突き進んでしまった。夕方だったのに、もう夜の9時だ。なのに、全然疲れていない。
 
『読書について』は、文章への愛情が捕らえられないぐらい込められていた。本だけではない。作家も読者も、本に関わるすべてを愛している。特に読者への想いが熱かった。
 
だれかの批評なんて、気にしなくていい。
 
ただ、目の前の作品を味わえばいい。
 
ワインを楽しむかのように、じっくりと。
 
小林秀雄氏のその想いが、心の重荷をソッと降ろしてくれた。私は高校まで卒業しているが、他の人に比べれば、机に向かった時間は半分以下だ。ほとんどが布団の上だった。家にお金も無く、図書館に行く体力も無かった。読んだ本の種類はとても少ない。私の読書は、体調の良い日に書店に行き、心惹かれる本を1冊だけ連れて帰る。その1冊を、ページが外れるほど繰り返し読むだけだ。他の人のように、流行の本も読んでいない。定番の本も読んでいない。自然主義文学だとか、心理派だとか語れない。それが、私の負い目だった。
 
だが『読書について』はそれでもいいと、ただ本が好きであればいいと
教えてくれた。「何百回も同じ本を読むなんて、おかしい」「この本知らないとか、遅れている」とバカにされた私の読書を、受け入れてくれた。涙がでるほど、嬉しかった。
 
君に決めた!
 
なんて、羽毛のように軽すぎる、上からの視線だろう。ポケモンを決めるよりも軽い、ひどすぎる言葉だった。「あなたと過ごさせてください」と、こちらが頭を下げるべきだった。私は恥ずかしい。
 
そんなダメな私に待ったをかけてくれた『読書について』、そして勧めてくださった池田さんの両者に、感謝の言葉しか無い。「誠にありがとうございます」
 
ノリノリで読んだ結果、令和になる前に読み切ってしまった。だが、問題はまったくない。いつものように、F1の周回のごとく何回も、何回も『読書について』の世界にお邪魔するだけだ。
 
令和も本と過ごす時間は、減りそうにない。
 
 
 
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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