文章を書く時、誰かと付き合う前を思い出す
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:安居潤(ライティング・ゼミ日曜コース)
なぜ文章を書きたいのか。
文章を書く理由は、付き合う前が一番楽しい理由と同じだ。
フルタイムの会社員として、平日は朝から夜まで働き、1人暮らしゆえ家事も全て自分で行う。やっと全てのことを終えて捻出した自由な1-2時間に、なぜ文章を書くことを選んでいるのか。「好きだから」と言ってしまえば、格好良いし、わかりやすい。しかし、僕には自分の時間を奪われるには十分な「好きなこと」も他にある。24歳、インターネットと育った人間である。時間の潰し方については、プロフェッショナルの自負がある。月額定額制サービスで、映画やドラマも好きな時に好きなだけ見る。複数のSNSをパトロールして、友人の投稿で時間を消費できる。そんな自分が、なぜ文章を書くことに惹かれつつあるのか。
まず初めに、僕自身は、「小さい頃から文章を書いてきた」とか「小説家になりたかった」という、側から見てもイメージしやすい原体験やゴールはない。そして、ご覧の通り、文章を書く理由を文章にしている時点で、無意識に大量の文章を書けるような人間ではない。なぜなら、文章を書くという経験は、学校の作文、卒業論文や、エントリーシートくらいしかなかったからだ。つまり、文章を書くことは、誰かに課されて行うものである、というのがこれまでの自分が持ち合わせていた見解だ。
結論から先に言う。僕が文章を書こうとしている理由は、メッセージを誰かに伝えたいからだ。ちなみに、自分はインフルエンサーでも、経営者でもない。何を隠そう、僕は24歳一般会社員であって、例えるなら、アンケートの回答項目で、「その他」を選ぶことのない人間だ。それでも、もっと日常的に発信するメッセージを、誰かに主体的に伝えたい欲求があるのだ。
誰かにメッセージを伝えることは、誰もが経験しているはずだ。日常的な会話や、メールや、SNSもつまるところ全てが、自分のメッセージを伝えるという点で同じだ。その中でも、誰かにメッセージを伝えるということを一つのジャンルにした時に、最も難しいことがある。それは、好きな人へのアプローチだ。
好きな人に振り向いてもらうために、アプローチをする本人は、かなり工夫をする。相手と自分の共通点を探したり、相手に合わせた言葉遣いをしたり、相手が面白がるツボを探す。その努力の結果、少しずつ相手と噛み合うようになり、相手とデートに出掛けることができ、付き合えることになるかもしれない。
この過程で、本人はかなり頭を悩ませる。ただのLINEの文面でも、絵文字を入れたり消したりして、相手にどういう印象を与えるかを考える。遊びに行った先でも、リアクションを大きくして、相手の反応を見て、自分のキャラクターを変えているかもしれない。
アプローチの仕方は千差万別であれ、多くの人が相手の気を引くためのアクションをしているだろう。そして、こう思ったことはないだろうか。相手の気を引くために工夫する時間が、最も楽しかったりすると。「付き合う前が一番楽しかったよ」と居酒屋でビール片手に語る人は、僕の経験上5人に3人くらいはいる。
そう、誰かに何かを伝えることは、楽しいのだ。そして、その中でも文章で、相手に伝えることは究極的に難しく、相当頭を使う。それでも、それが楽しい理由は、付き合う前が楽しい理由と同じで、自分の頭を使って、相手を振り向かせるための工夫をすることと共通している。
文章を書く際には、自分の気持ちを言語化する。そして、メッセージを正確に伝えるために、その伝え方に頭を悩ます。何しろ、文字でしかメッセージを伝えられないのだ。写真や映像よりも工夫をしなければいけない。描写を加え、論理的におかしくないか見直す。読者を惹きつけるような工夫をしなければならない。ちょっと自分に酔って手直しをする。そして、自分の伝えたいことが伝わっているか、不安になる。その繰り返しだ。
それでも年齢とともに、その工夫の重要さが分かるようになり、僕は文章を書くことの醍醐味に気づき始めた。
そして、自分の伝えたいことを書くだけの文章に価値はない。文章を書くことを、好きな人にアプローチすることに置き換えてみると、そう言える。自分の思いが強すぎ、デートで延々と自分の話をした場合、相手にとってそのデートは良かったとは言えない。何かを伝えることは、自分の伝えたいこと言うだけではなく、相手に歩み寄せることが必要なのだ。
きっと、これまでの人生で与えられてきた文章の課題は、伝えたいことを書いているだけで、読者にアプローチしようという心意気がなかったのだ。だからこそ、文章を書くという行為に工夫がなかった。それこそが、これまで文章に面白みを感じなかった理由だ。
何かを伝えることは面白い。そして、文章の先には読者がいる。どう伝えれば、その読者をこちらに振り向かせることができるか。そこの工夫こそが、文章を書くことの魅力だ。
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