アダムに魅せられて
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記事:綿貫晶子(ライティング・ゼミ平日コース)
ズンズンチャッ! ズンズンチャッ! ズンズンチャッ! ズンズンチャッ!
我が家のアレクサに「クイーンかけて」とお願いすると、必ずこの曲が最初に流れる。
やっぱりクイーンはこれなんだよね、と思わずにいられない。
昨年11月に「ボヘミアン・ラプソディ」が公開されてからの、異常とも言えるクイーンブーム。日本での興行収入はクイーンの母国イギリスでのそれをはるかに超え、全世界1位だという。かくいう自分も、映画館に3度足を運んだ。少し前に発売になったブルーレイディスクももちろん買った。小学校4年生で初めてクイーンを知ったときは、同時期に流行っていたKISSのファンで、クイーンを聴くようになったのは中学生になってからだ。以来、フレディを生で観る機会は何度かあったけれど、ついぞ生フレディを観ることはできなかった。初めての生クイーンは、アダム・ランバートをボーカルに迎えてからだ。
1975年4月17日。クイーンが初めて日本にやってきた。クイーン人気は日本から火が付いた、とよく言われるけれど、どうやらそうでもないらしい。73年にデビューした彼らは、74年にリリースした「キラー・クイーン」で全英2位、全米12位というヒットを飛ばしている。だから、日本で火が付いた、というのは言い過ぎだろう。けれど、2018年11月に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」がこれだけロングラン上映され、その興収は日本が世界一、ということを考えると、日本人が世界のどこの国よりもクイーン好き、というのはあながち間違ってはいないだろう。
「ボヘミアン・ラプソディ」の公開以来、フレディ・マーキュリーがどんな人生を送ってきたか、どれ程優れたボーカリストだったかはそこここで語られている。けれど、今のクイーンを支えているボーカリスト、アダム・ランバートのことはほとんど語られていない。来年1月にクイーン+アダム・ランバートとしての来日が決まっているが、アダムのことを知っている人はどれほどいるだろうか。
私がアダム・ランバートを知ったのは、「アメリカン・アイドル」というオーディション番組だった。2009年に放送されたシーズン8で初めて彼を観たとき、その圧倒的な歌唱力に驚いた。番組内でも順調に勝ち進んだけれど、名物審査員だったサイモン・コーウェルからは度々強烈なダメ出しを喰らっていた。「ドラマチック過ぎる」「劇場的であり過ぎる」と。
この頃のアメリカン・アイドルは、とにかく派手なステージ演出をしていた。最後の二人にまで残ったアダムは、結果発表前のフィナーレのショーで、KISSやクイーンと共演した。彼はどのステージでも輝いていた。だから、当然優勝するものだと思っていた。恐らく誰もがそう思っていた。しかし、優勝したのは、もう一人のファイナリストだった。
準優勝で終わったアダムはしかし、その後すぐにクイーンのギタリスト、ブライアン・メイに、クイーンのボーカルとして一緒に活動することを打診されたという。けれどすぐに参加することはなかった。自身のアルバムを制作し、ツアーなども行ってきた。ゲイであることをカミングアウトしたり、バックバンドの男性メンバーとステージ上でキスをするパフォーマンスで物議を醸したりと、お騒がせシンガーのように扱われていた。ビルボードのチャートにも顔を出すことはあったけれど、爆発的に売れた、とは言えない。それでもシンガーとしての活動を続け、2012年、クイーンのボーカルとして初めてツアーに参加することになる。
2014年にはサマーソニックという日本の夏フェスにもやってきている。そこでのパフォーマンスは、一部のコアなアダムファンだけでなく、アダム・ランバートというボーカリストを日本で知らしめるのに十分な役割を果たした。当然、希代のボーカリスト、フレディ・マーキュリーと比べられることになり、「やっぱりフレディじゃないと!」という声もあったが、そんな声なんて、彼にとってはどこ吹く風だったはずだ。
フレディは、ただのボーカリストではなかった。クイーンのフロントマンであり、クイーンの見せ方を1番よく知っているパフォーマーだった。アダム・ランバートもまた、歌が上手いだけのボーカリストではない。サイモンに「ドラマチック過ぎる」といくら言われようと、それを曲げずに自分のスタイルを貫いたパフォーマーだ。ボーカリストとしてクイーンに参加する、ということが決まったときから、彼はきっとフレディ・マーキュリーと比べられることなんて折り込み済だっただろう。フレディはフレディ、でも自分は自分。
2016年9月に初めて生クイーンを観た。クイーン+アダム・ランバートとして来日した際の武道館公演だ。生フレディを観ていないことは、大きな後悔として残っている。けれど、アダムを迎えたクイーンを生で観ておいて本当によかったと思う。
去年からのブームで、そもそもクイーンなんて聴かなかった層までもが、ズンズンチャッ! で盛り上がっている。来年1月の日本公演は、チケット争奪戦になるだろう。ラミ・マレックが演じたフレディ・マーキュリーしか知らない人々もきっと観に行くことだろう。どうか「やっぱりクイーンのボーカルはフレディじゃないと!」なんて言わないで欲しい。アダム・ランバートもまた、優れたボーカリストでありクイーンの見せ方を熟知したパフォーマーなのだから。
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