メディアグランプリ

今の自分を超えていく


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松本 ようこ(ライティング・ゼミ火曜日コース)
 
「人より頑張ることなんてとてもできないんですよね。あくまで測りは自分の中にある。それで自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくということを繰り返していく。そうすると、いつの間にかこんな自分になっているんだという状態になって。だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。」
 
ああ、なんと素敵な言葉だろう! イチロー選手の引退会見での話を聞いて、晴れ晴れとした気持ちになった。そして腑に落ちた。
 
イチロー選手は、誰しもが認める様々な偉業をなし遂げている。彼が話すことは、その結果に裏打ちされて真実味があり、説得力がある。だが、イチロー選手が話したことは、なにもスーパースターだからできたことではない。私のような普通の主婦でもできることなのだ、と気付かされた。ああ!あの時の体験はまさに私が私を大きく超えていった出来事だったのだ。
 
5年前、私は大きな不安と少しのワクワクの気持ちでいた。私の人生の中でも5本指に入るであろう一大イベントがその夏に予定されていたのだ。娘が10年間続けてたいたお稽古事で、一人で海外のサマースクールに参加することになったのだ。
 
お教室の先生に了承を得たものの、個人的に参加するので応募から全て自分たちで手配をした。将来その道のプロを目指そうと思う人なら入学を希望する憧れの学校のサマースクール。それだけに、世界中から応募があり、応募書類も事細かい記載が必要だった。更に医師の診断書や本人の動きを確認するための動画も準備しなくてはならない。
 
年齢制限もあり、チャンスが何回もあるわけではない。その夏にとにかく行きたいという娘の希望を叶えるべく、私もやれるだけのことは全てやろうと覚悟をした。何をどうしたらいいのか見当もつかず、霧の中を彷徨いながら歩いているようだった。コミュニケーションをとる英語力はあるものの、細かい応募書類に書くべきことを正しく理解できてるわけではない。恥ずかしいとか、相手が煩わしく思うだろうかなど考える余地もなく、何回も担当の人に確認のメールを送った。それこそ、自分がはっきりわかるまで、何度も。書類を記入してからも、私より英語の能力がある人に確認をしてもらったり、医師の診断書を訳してもらう業者を探したり、どういう動画の撮り方がアピールできるのか。何もかもが初めてで手探り状態。ヒントが一つ見つかると、とりあえずその方向で進んでみる。そうやっていくうちに、行くべき方向・やるべきことが少しずつわかってきた。
 
奇跡的にサマースクール参加の許可を頂いてからは、その間2週間の宿や現地への飛行機の手配など、新たな問題が出現。下の子の学校が夏休みになる前にサマースクールが始まり、会社員の夫は当然、私もずっと付き添うことができなかったのだ。娘が一人でホテルに泊まれる年齢ではなく、困り果ててしまった。娘にとっても初めての海外。一人で2週間を過ごさせるのは、あまりにも不安だった。せっかく許可をもらっても、あきらめなくてはならないのか。担当の方に相談すると、同じサマースクールに参加するアメリカ人の女の子のお母様が、年齢も近いし一緒に面倒をみると、申し出てくださった。知らない人に娘を長期間預けるのも初めてのこと。それでも、泣きたいほどありがたく思い、申し出に甘えさて頂いた。
 
ある年齢に達していないと、子ども一人で入出国ができない国が海外は多い。保護者か、または保護者が依頼している大人の同行が必要だ。行きは夫が同行し、お世話になるアメリカ人の親子に引き渡し、帰りは私が引き取りに行った。私は海外旅行の経験はあったものの、10年以上出国していない状態。パスポートを作ることから始まり、自分が泊まる宿の予約、空港から宿までの移動手段、娘たちが泊まっている所までの行き方等々、確認してなくてはならない課題が次から次と出てきた。土地勘も当然なく、安全な場所、危険な場所、公共交通機関の乗り方などを、いろんな人のブログや体験レポートをインターネット上で検索しては、片っ端から読んでいった。これこそ、「無我夢中」と言っていいだろう。その時の自分がやれること一つ一つを全力でやった。
 
よく「ようこさんだから、できるんだよ。」と言われることがある。そうなのだろうか。このサマースクールの件は、ただただ娘の希望を実現させてあげたい、という一心で頑張れた。私がしたことは、実現に向けてやれそうなことが見つかったら一つ一つこなしていったこと、そしてあきらめなかったことだ。それでも5年たった今、どうやってあれを成し遂げられたのだろう、と自分でも不思議に思うことがある。よくやれたなぁ、と。だが、確実に私はやり遂げた、という実感がある。そして、次に同じようなことがあっても、きっとやり遂げるであろう自分を信じられる。今の私は、5年前の私を超え、更に大きなことにチャレンジしていけるように思うのだ。
 
こういう「少しずつの積み重ね」に付け加え、「やると覚悟」をし、そして「あきらめな」ければ、誰でも今の自分を超え、更なる可能性を持った自分になっていけるのではないか。そうする、と自分で決めるだけなのだ。イチロー選手の言葉は、それを明確に私に示してくれたのだった。
 
 
 
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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