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メディアグランプリ

懐かしくて新しい旅に出る


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:名古屋ゆき(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
木々を葉がかさかさと風になびいて揺れる音と、時折木の上の方からピチュピチュと鳴く鳥の声。可愛らしい声で鳴いている鳥の姿はまだ捉えていないけど、どんな姿形をしているんだろう。雀とは違うみたいだ。
自然に帰るような暮らしって、こういうことなのかもしれない。ただただ自然に身を任せているのは、普段の生活から考えると、とても贅沢なことに思える。
とりあえず休暇中は好きなだけここで過ごすとしようと決めて、早3日。何もないわけではないけれど、テレビやスマホとはすっかり縁が遠くなった。
20度から25度ぐらいの気温がとても心地よくて、気がつくと昼寝をしている。持ってきた本は読み切ってしまったから、この後はどう過ごすか。書くものも持ってきていないし、地面に絵でも描いて遊ぼうか。
首都圏で育って仕事をして、これが一番肌に合ってると思い込んでたけど。こういう大きな自然に包まれて呼吸をすると、それがただの思いこみだったことに気付く。
2年ほど前、この辺はブームになってたくさん話題になっていた頃があった。今はあまり聞かなくなったけど、当時のブームのおかげでガイドブックも充実しているし、口コミ情報もたくさんあったので安心して遊びに来ることができた。
友達からも「絶対に良いところだから!」と強く勧められて、ようやく時間と予算の都合が付いた。ひとりの静かな時間。本当に、贅沢だ。
 
やることが無いわけでもないけれど、ここら一帯は野の特産が多い。採れたての魚を焼いたり、地場の果物をいただいたり。ガイドブックによると、きのこ類も名産らしく、あちこちに出来ているものを採って来ては、適当に調理している。
ワイルドといえば聞こえはかっこいいが、のんびりだらだらとしているのとあまり変わりはない。でも、だらだらしてるようで、人らしさを取り戻しているのかもしれない。私たちには、こういう時間がたまには必要だ。
 
このあたりには古代遺跡が点在しているので、時間をかけて少しずつ自分の足だけで回っている。遠回りをしてしまうこともあるが、それもまた旅の楽しみ。
マチュピチュ、マヤ文明、ナスカの地上絵、古代文明ティオティワカン……「失われた文明」は、どうしてこうもワクワクさせてくるんだろうか。こちらでは機械式の遺跡も発見されているという。今にも動き出しそうな生々しさで、静かに眠るような遺跡を見て回っていると、あっという間に日が暮れる。
そういえば、あんまり人に出会わないことに気付いた。ガイド情報もあるし、さしあたって困ることはないけど。ちょっと話したい気分になると、途端に寂しくなってくる。
この3日で一番そんな気分になるのは夜だ。この辺の夜空は星が見え過ぎるほどで、ロマンチックと言うよりも圧倒されてしまう。飲み込まれないように、誰かとあれは何座だとか、どうでもいい世間話をしようにも、なかなか人に出会えない。つくづく寂しい。
でもまぁ、一人旅はこんなものかもしれない。誰に気兼ねすることもなく過ごせることと、トレードオフなんだと言い聞かせる。
 
ここに来たのは初めてだけど、2年前ブームになった時に「懐かしい」という声が多かったように、自分もそう感じている。自分が目の当たりにしている景色は、新しいものばかりなのに、なんだか懐かしい。
ここはハイラル。
聞いたことがある人もいるだろう、今この大きな平原の中にいる。子供の頃から親しんでいたNintendoのゲーム、ゼルダの伝説の2017年の最新作だ。
ゲームらしく目的もあるが、まだしばらくこの広い世界を味わいたい。この世界は、どこまでいっても再読込が掛けられることなく、地続きの広い世界になっている。まるで普段の現実の世界のように、途切れることなく続いている。
時間も流れれば、天候や気温も変わる。寒いところに軽装で出向けば、しっかり冷え切ってしまう。生きていく工夫を発見しながら、この画面の世界を生きている。
「世界の見え方がちょっと変わるよ。”あ、あれ取れそう”って、渋谷とかで普通に思っちゃって、ちょっとびっくりする」と友達が言っていた。
今日、現実の中で片付けをしながら、自分の背丈では届かないところに物をしまうのに「あの道具でこうすればできるな」と想像してしまっていた。すっかり染まっていることを、ちょっと恥ずかしく思いつつ、面白く受け止めてしまっている。
 
「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」は、Amazonのレビューも話題になっていた。
「電車の窓から見えた名前も知らない山を見て、「登れそう」と思った瞬間、涙が溢れて止まらなかった」「時間に追われるサラリーマンにこそプレイして欲しい」そんな言葉で書かれている。
ハイスペックなゲームではリアルで生きる感覚を、ゲームの世界にも感じられる。
そして、ゲームの世界で得た感動は、私たちの日常にも、もちろん存在している。
 
「アップダウンが激しい日常を過ごしていたんだし」と自分に正当な理由をつけて、日々ちょっとずつゲームの中のハイラルの風を聞いている。
結構、悪くないもんです。
 
 
 
 
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2019-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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