メディアグランプリ

のりたま夫婦の夫婦間条約


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【6月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:上野建(ライティング・ゼミ平日コース)
 
新婚生活は最悪だった。
3年の遠距離恋愛の末、結婚した。
夢の新婚生活は、理想のものとはかなり違った。
思い出すのも恐ろしい。
 
これは、自分の長所だと思っているのだが、私は、相当ルーズである。
ルーズは聞こえはわるいかもしれない。もうすこしいい言い方をすれば、『余計な部分で無理をしない』を信条としている。
 
疲れている時、無理に皿を洗う必要があるだろうか。
ちょっと休んで、できるときに洗えば問題ないではないか。
皿の泡を流して、食器の水をきるのだって、よほど水が溜まる置き方をしなければ、乾く。
 
だが、妻は違う。
私から見れば、余計な部分まで完璧主義なのである。
疲れていようが、気がのらなかろうが、やらないと気がすまないのだ。
水を流した洗い物の置き方は、きっちりと効率よく水がきれ、かつ、美しく規則的に並んでいなければならない。
 
私からみれば、「乾きゃいいじゃん」というものだが、妻はそれが許せないようだ。
 
洗濯にしても同様である。
どうやって干しても乾くような陽気であっても、私が適当に干すと、指摘される。私の干し方では、乾いてもシワになってしまうらしい。
私はシワを気にしない。
 
私は独り暮らしがある程度長かったせいか、「家事はやらなくても、最悪死なない」というスタンスであるが、妻は家事にクオリティを求める。
 
ここまで読んで、私が『夫婦の家事』について、話をしていると思っている人もいるかも知れない。勘違いしないで欲しい。
 
もはや、これは『外交問題』だ。
自分がどうしたら心地よい生活が送れるか。
もちろん、お互いが自分勝手を追求したら、夫婦としては成立しない。
とはいえ相手も“自分がどうしたら心地よい生活が送れるか”を考えている。
ぶつかり合う。ときには冷戦にまで発展する。
互いに自分の意見を通しつつ、時に譲歩し、譲れない部分はつらぬく。
夫婦とは、隣国との国境線を定める外交会議。
 
交際を開始から結婚するまで遠距離恋愛だったためか、結婚後にはじめて知る部分も多くあった。
 
私たち夫婦は、趣味も性格も全然違う。
不思議なことに何から何まで合わない。
例えば、音楽の趣味で言えば、私は激しいハードロック、パンクロックが好きだが、妻の好きな音楽は、もっと、牧歌的なポップスが好きだったりする。
 
恋人、夫婦の大事な事柄の1つとして、『食事の趣味が合う』ことだという。
しかし、私は蕎麦派、妻はうどん派。
私は辛党、妻は甘党。
私はこってり、がつがつした肉食やいわゆるB級グルメが好きで、妻はおしゃれなカフェでパンを食べたいような人。
 
また、
私は口下手、妻は口喧嘩チャンピオン。
私は浪費家、妻は倹約家。
私は格闘技の試合を見るのが好きで、妻はそれを野蛮という。
 
当初は趣味に関しても、二人で楽しみたい! 楽しさを共有したい! と思って自分の好きなものをプレゼンしていたが、全然合わず、話し合いは平行線。
いつの間にか、自然とそれを諦め、お互いの趣味を否定せず、許容するというルールができあがっていた。
お互いが相手に迷惑をかけない範囲で、勝手に好きなことをするという具合。
これも長きにわたる外交の末の結果である。
というわけで私たち夫婦は、なんとか互いに妥協点を見つけ、許容することによって、お互いの領土を侵略しないという和平合意に至った。
 
私たち夫婦は、夫婦だからといって、なにもすべてを共有しなくてはいけないというわけではなく、自分だけの世界と夫婦の世界と2つあることによって、バランスをとっている。
 
私たちは、いわゆる『似た者夫婦』ではない。むしろ『反対夫婦』。
たまに意見が合致するときは『嫌いな相手』や『許せない物事』とかに出会った時。これだけはなぜか合致する。敵の敵は味方。このときばかりは、がっちりと二国間同盟が組まれる。
「あの業者の言い分はおかしい」
「がつんと言ってやろう」
「こっちを素人だと思ってナメてるから、あんなことが言えるんだ」
「絶対にゆるさん」
なので、しいて夫婦に必要な共通点をあげるとするなら、『嫌いなものが同じ』ということです。好きなものは全然違ってもお互いが許容し合えば問題はない。
 
結婚して10年経った今、「夫婦とは何ですか?」とたずねられたら、こう答える。
「“のりたま”かもしれない」
ふりかけの代名詞のひとつに『のりたま』というものが何十年も昔からある。
のりたまは、“のり”と“たまご”の組み合わせがメインで、特別、共通点がない。『のりと塩』とか『たまごと鶏肉』だったら、近い感じがするが、『のりとたまご』。
どこでどう出会って、その組み合わせがうまれたんだ! と。
海ののりと陸のたまごが、どこで出会ったの? 共通点あるの? なのに、別物のふたつが、組み合わさって、もうこれしかない! というハーモニー、相乗効果を生んでいる。もうほかの組み合わせは考えられないくらい。
 
ちなみに、私たち夫婦の出会いは、私が東京から岡山に出張した際に泊まったホテルのフロントに務めていたのが妻だった。そこから交際が始まり、結婚を経て、今に至る。
それこそ、海ののりと陸のたまごという運命の出会いだったのかもしれない。
 
 
 
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/82065

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事