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なぜ、人は「フリーダイビング」に魅了されるのか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小林祥子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
皆さんは「フリーダイビング」という競技を知っているだろうか。
「フリーダイビングをやってる」という話をすると、大抵「スキューバ?」と聞き返される。
親戚のようにも感じるが、スキューバダイビングとフリーダイビングは海に潜る以外、全く違うといって良い。
 
では、競技フリーダイビングとは何か?
それは、ダイビングで使用するような空気が詰まったタンクやレギュレータといわれる空気を吸うための機材を一切使わない、自分の肺の中に入る1回の呼吸だけを頼りに水に潜る行為。
そして、競技というからには競うものがある。どれだけ長く水に潜っているか。
一般的に海で実施されるフリーダイビングの競技は、どれだけ深く潜れるかを競う。
 
フリーダイビングを始めた当初、私は良く友達に聞かれた。
「何それ? 魚とか見れるの?」
「何も見えないよ。ロープ沿いに潜るから、そのロープと海があるだけ」
そう答えると、きまってこう聞かれる。
「え? 何も見ないの? ただ、苦しいだけじゃない? 何が楽しくてやってるの?」
そんな事言われても即答できない。というより、私が聞きたい。自分自身に。
「なぜ、フリーダイビングを続けるのか?」と。
 
気づいたら、フリーダイビングを始めて7年が過ぎていた。きっかけは、当時結婚していた旦那にやってみたいと言われ、なかば強制的に足を踏み入れた。
初めた当初のフリーダイビングのイメージは最悪だった。
もちろん、やりたいわけでもないのに付き合い的に始めたこともある。
ただ、理由はそれだけではない。
もともと、スキューバダイビングを趣味としていた私は、好きな時に息を吸えない苦しい環境の中、なぜそのような思いをしてまで潜らないといけないかが理解できなかった。
 
フリーダイビングを始めるにあたって、旦那が探してきた団体は、主に日本海で練習している非営利サークルだった。
日本海には良いイメージがなかった。東映の映画で最初に映し出される荒波、沖縄のキラキラした青い海とは全く反対の印象。トロピカル色をした可愛い魚ではなく、魚屋の店先で売っている銀色のサバやイワシがそのまま海に戻った感じ。
そんな勝手なイメージを持ち、私の気持ちは後ろ向きだった。
 
実際の日本海は想定を上回るものだった。
私が訪れた海には、魚がいなかった。正しくは、いたのかもしれないけど、めったにお目にかかることはなかった。
海と安全に潜るためにと水面から垂らされた一本のロープ。ただ、それを見つめて潜った。
海の透明度が悪く、視界が悪い時は潜ることが怖く感じた。
ただただ、薄暗くて冷たい海が続く。
もう一度水面に戻ってこれるのか、不安になった。
 
何が私をつなぎ留めたのか、それでもフリーダイビングを続けた。
そもそも、私は周りの人に比べ、あまり潜れる方ではなかった。
身体能力が高く、潜る時に耳にトラブルを抱えない、いわゆる耳抜きができる人。そのような人達が、私の後からフリーダイビングを始め、私よりぐんぐん潜るようになっていった。
私が目にしたことのない光景、私が感じたことのない体験。それは、とても手の届かない領域……。
 
旦那と離婚した後、フリーダイビングを続ける理由が無くなったはずだった。
私は少しそこから身を引く、そのはずだった。
もう、続けることはないだろうと。そのはずだったのだ。
 
気づいたら、私はそこに戻っていた。
日本海で、ただただ潜るその場所に。
そして、より深く潜ることを目指し、海外にまで遠征するようになっていた。
 
何が私をフリーダイビングにつなぎ留めるのか?
 
何かが私をより深みに連れて行こうとしていた。
フリーダイビングは息を止めて、どこまで深く潜れるかという競技。言葉で表現すればそうかもしれない。
だが、そこにはそれ以上の深みがあった。
体一つで、小難しい機材を使わずにどこまで潜ることができるか、自分の限界に挑戦するということ。すなわち、それは自分と向きあうということであり、自分を知ることでもあった。
何も考えず、ただ海に沈んでいくということは、まるで自分がまだ母親のお腹の中にいた頃に戻ったような、そんな懐かしい気持ちにさせる。
あれだけ怖がっていた海は、もうそこにはなかった。
母なる海。生命の源である海。フリーダイビングはまさに、その海に抱かれることだったのだ。
 
そして、フリーダイビングを通じて多くの仲間を得た。
共に限界に挑戦する仲間。前に進めない恐怖を分かち合い、限界に挑戦する時は心おきなく挑戦できるよう、そばで見守ってくれる。そして、その限界を超えた時、自分ごとのように喜び合う。そんな仲間が私の周りを取り囲んでいた。
 
最後に、なんとフリーダイビングには年齢制限がないのだ。
私の知り合いは60歳になってからフリーダイビングを始め、今でも自分の限界を伸ばしている! こんな競技が世の中に多くあるだろうか。
 
これが、フリーダイビングに惹かれる理由。
皆さんもまずは門を叩いてみてはどうだろうか。
 
 
 
 
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2019-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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