メディアグランプリ

写真を撮ること、恋をすること


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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吉田史香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
フィルムカメラで写真を撮ることは、恋をすることに似ている。
 
インスタントカメラの「写ルンです」が、最近また流行っているらしいと聞いて買ってみた。台湾に旅行をすることになり、持っていこうと思ったのだ。スマートフォンやデジタルカメラとは違うレトロな画質がインスタグラムでも人気とのことで、調べてみると最近ではほとんどの写真店で、撮影したフィルムをプリントするのではなくデータで送ってくれるサービスを展開している。何となく買ってみたのだが、これが意外と難しかった。
まず、27枚あるフィルムを全部撮り終わらないとどんな写真が撮れているのか分からない。写真の明るさやボケ加減まで確認できるスマートフォンとは違って、だいたいの位置を確認するための穴が開いているのみ。しかもレンズの位置とはずれているので本当に目安にしかならない。ズームもできない。設定できるのはフラッシュを焚くか焚かないかくらいだが、今時フラッシュを焚いて撮影する人は珍しいので周りの人を驚かせてしまうのではないかと思うと使えない。
こんな不自由だらけのカメラが、びっくりするほど、楽しかったのだ。こうするとこんな風に撮れるんじゃないか? とか、このくらいの明るさならフラッシュがなくても綺麗に写るんじゃないか? とか、予想しながらシャッターを切る。でも、すぐに答え合わせをすることはできない。それでも何故か、楽しかった。
27枚撮り終えたのは、撮り始めてから一週間後だった。写真店でデータにしてもらった画像を確認すると27枚中4枚は暗すぎてほぼ何も写っていなかった。7枚は、思っていたより暗くて写っている人の表情がよく見えない。つまり、写真として後から楽しめるクオリティのものは27枚中16枚だった。
でも、没になった写真のおかげなのか、綺麗に撮れている写真を眺めることはいつもより嬉しく思えるし、一見失敗と思える写真も、よく見れば味があるように感じられてくる。
 
センター試験を受けたときにはその日のうちに自己採点をして点数を確かめたし、資格試験のための一問一答式問題集は裏のページを見れば答えがあった。デジタルカメラでもスマートフォンでも、写真を撮ったらその場で確認ができる。何でもすぐに結果を知れる環境にいて、答え合わせまでの時間が長くかかることがどれだけドキドキするか、わくわくするか、私は写ルンですを通して思い知った。
 
27枚早く撮り終えて写真を見てみたいと思う気持ちと、撮り終えてしまうのがもったいないような気持ち。私が「こんな風に撮れるだろう」と予想してシャッターを切ったその判断は正しかったのか、答えを知るのが待ち遠しい気持ち。写真店に持って行ってからデータを確認するまでの1時間が過ぎるのが遅く感じられること。
 
フィルムカメラで写真を撮ることは、恋をすることに似ている。
 
相手に好きだと言ってしまいたいような、相手の気持ちを早く確かめたいような気持ちと、ずっとこのままでいいと思ってしまう気持ち。相手のことを思いながら言葉を選ぶこと、一緒の時間の過ごし方を考えること。自分の気持ちを共有してほしいと思うこと。LINEを送ってから返信が来るまでの待ち遠しさ。
答えがすぐにわからないドキドキとわくわくは、まさに恋をしているときのそれだった。
 
スマートフォンで写真を撮ったとき、私はいつも撮った後でトリミングをしたり明るさやコントラストを調整したりするのだが、フィルムカメラではそれができない。シャッターを切るその一瞬で、どんな写真になるかはほとんどすべて決まってしまう。
恋人や片思いの相手には、常に誠実で相手のことを思いやることが大切だ。一瞬の間違いを、後から取り繕おうとしても間に合わない。でも、だからこそ、また恋をしてみたいと思ってしまうのではないだろうか。
 
好きな人の好きなものや気持ちをもっと知りたいと思うように、フィルムカメラで撮影するときに最適な明るさや構図を知っていきたいと思う。過去の恋愛を懐かしく思うように、上手く撮れなかった写真も大切にしたい。(そしてできれば、同じ失敗を繰り返さないように!)
 
恋愛においては、5年前より今の方が上手く立ち回れるようになったと思う。次、2台目の写ルンですを買ったときには、きっと今より上手く撮れるようになっているだろう。
恋愛もフィルムカメラも、経験がものを言うのだ。
 
 
 
 
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2019-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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