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人生筋トレ


 
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記事:めいこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「あなたの職業はなんて書けばいい?」
区民台帳を記入している家族から問われた。
 
うーん、難しい。
「面倒だから会社員で」と答えたが、実際には会社員ではない。
 
私はいわゆるパラレルワーカーで、複数の仕事についている。
少ないながら給与所得を得ていて、同時に、数件の会社の仕事を請け負う個人事業主でもある。
報酬や時間の比重はもちろんそれぞれに違うのだが、どれが本業かは明確ではない。だから、本業プラスαの「副業」というよりは、全く違う複数の仕事を並行して行なっている「複業」、つまりパラレルワーカーであると認識している。
もともとこういう働き方を希望していたわけではないのだが、結果的にこうなってしまった。
 
雇われ人として、日中の数時間はある職場で働いているが、夜間や週末は、個人事業主として事務代行をしている。
会社員の8時間勤務という概念からは全くはずれていて、勤務時間でいえば「24時間いつでもOK」である。ただし、昼夜逆転の生活はしたくないため、マイルールとして夜は0時で仕事を打ち切ることにしている。
もしかすると、劣悪な仕事環境のように聞こえるかもしれないが、私にとって自分の裁量で時間配分できることはとても都合がいい。仕事の合間に、ジムでトレーニングをしたり、友人と食事に出かけるのも可能である。
働く場所は自宅中心であるが、パソコンと通信環境さえ整っていれば、どこでも構わない。
常時何がしかのタスクを抱えているので、会社員の友人から憐れみの目で見られることもあるが、私にとっては、毎日イヤイヤ通勤して、忙しかろうがヒマだろうが8時間拘束される方がはるかに苦痛である。
 
もともとは新卒で大企業に就職した。
毎朝8時半に出勤し17時半まで会社にいることを疑問に思ったことはなかったし、毎月自動的に給与が振り込まれ、どこにも負けない福利厚生を享受できるこの会社が一番だと信じていた。
ところが、大企業ならではのことか、粒ぞろいの優秀な社員ばかりで、人と違うことをやってみたり、失敗して再挑戦することが許されない雰囲気に、次第に違和感を抱きはじめた。多様性を認めないようなところに抵抗を覚え、5年で退職した。
 
その次に働き始めた職場が、結果的に私をパラレルワーカーの道へと導いた。
上司となった人は、私が今まで出会った中で一番の変わり者で、頭の回転が速く、超がつく短気だった。この人が私にスパルタトレーニングを課した。
自分にも他人にも厳しい人で、その要求を満たすことに必死になった。
一年中海外を飛び回っている上司とのコミュニケーションは、メールとスカイプが中心で、時差のため、連絡が深夜・早朝、休日に及ぶことも珍しくなかった。
そして、タイミングが悪いと指示が仰げないこともあり、自分で調べ決断しながら働く習慣がついた。
最終的には、その厳しい上司から「俺のトレーニング済」のお墨付きをいただくまでになったが、なんと悲しいことに、ここでの私の身分は非正規雇用だった。
上司の定年とともに退職を余儀なくされた。
こんなに長く、こんなに一生懸命働いたのに、そして再就職するには年をとりすぎてしまっている。
人生のがけっぷちに立った。毎日胃が痛かった。悪夢もみたし、円形脱毛症にもなった。
のほほんと働いている(ようにみえる)会社員や専業主婦の人を見るにつけ、うらめしく思い、「こんなことがあっていいの?」と叫びたくなった。
しかし、こんな状況に陥ったのは、他でもない自分の選択の結果である。誰を責めるわけにもいかないし、それよりなにより生活していかないと!
 
そこで、自分の経験を棚卸しした。
いったい私は何ができるのか?
不在中の上司の仕事はほとんど私が片付けていた。
自己管理し、一人で考えながら働くことには慣れている。
メールやオンラインミーティングで仕事が成り立っていた。
ということは、パソコンがあってインターネットさえつながれば、もしかしたらどこでも働けるのでは? 毎日職場に出かける必要ってある?
一念発起し、パラレルワーカーとして生きることを選択した。
けれど営業などしたこともなく、どうしたら仕事をえられるのか全くわからなかった。それらしいセミナーも受けてみたが、ちょっと違う気がした。
またしても途方にくれたが、今度は救いの神がいた。くだんの上司を含む知人関係から、いくつかの仕事を紹介してもらい、スタートダッシュとはいかなかったが、徐々に仕事が増えていった。
 
パラレルワーカーとして成功するかどうかは、自分の力量と運次第だ。
交渉スキルを身につければ、瞬時の報酬アップも可能である。またその反対もしかりで、小さなミスであっという間に無職にもなる。自分に非がなくても、世情により仕事が打ち切られる可能性もある。毎日が綱渡りといっても大げさではない。
おかげで、先々の状況変化を予測しながら準備的に活動するクセがついた。
常に恐怖心と隣り合わせだが、同時にやる気スイッチが入るのか、問題が起きるたびに、不安を抱えながらもどこかでワクワクしている自分がいる。
さぁ、次はどのカードを切ろうか。
 
ずいぶん鍛えられたものだ。上司のスパルタトレーニングで、「仕事する」筋肉はついてきた。もしかしたら「生きる」筋肉もついてきたかもしれない。

 
 
 
 
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2019-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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