メディアグランプリ

一回の失敗体験にしがみつくな


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記事:丸山ゆり(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あ~、また出なくなってきたやん。これって、もうアカンわ」
 
そんなふうにがっかりしたのは、1年くらい前のことだ。
 
わが家では、トイプードルを二匹、親子で飼っている。
 
昔、実家でも犬を飼っていたが、当時とはペット環境に関して言うと、全く事情が違う。
あの頃は、犬と言えば番犬目的で、外で飼っている家が多かった。
ごはんとして与えるのは、家族の食べ残しだったりしたものだ。
 
ところが、今の時代、犬のケアは人間のそれと同じくらい細やかなものだ。
例えば、歯のお手入れ。
わが家の犬は、歯磨きをいやがるので、歯石をとるためのスプレーを動物病院から勧められた。
歯が大切なのは、人間も犬も一緒で、私もすぐにそのスプレーをネットで購入したのだ。
食後に口の両側から、「シュッ」とひと吹きずつするだけの簡単なもの。
幸い、犬もいやがらないので、これなら続けられるとホッとしたのだ。
 
ところが、順調に使っている途中から、そのスプレーから以前のように勢いよく液体が出なくなってきたのだ。
 
「あれ? 目詰まり?」
 
少しずつ出なくなっていって、とうとう全く使えなくなってしまったのだ。
そこで市販の詰め替え用のボトルを買ってきて、残った液体を詰め替えてみた。
それも、最初はうまくいったのだが、やっぱり途中からはダメだった。
液体自体が目詰まりしやすい成分なんだろう。
 
私はがっかりして、メーカーに文句を言いたくなったのだが、そこに労力をかけることもやめ、愛犬の歯石とりを断念したのだ。
そう、私は、いつもこうだ。
 
何か一つでも不満や不具合があると、そこで相手との関係を断絶してしまう。
猶予もゆとりもないのだ。
 
心の中では、しっかりとそのスプレーや製造している会社を批判しているのだけど。
 
「これは、ダメだわ」ってね。
 
そうして、感情も意識もストップしてしまうのだ。
 
そういうクセは、昔からあった。
 
友だちとのやりとりで、相手から少しでもマナーに欠けたことをされると、
「この人は、ダメだわ」
と思って、もう付き合うことをやめたり。
 
お稽古事や何かのサークルなどの集まりでも、内容ややり方が気に入らないと、
「ああ、ここにいても学ぶことはないわ」
と思って、もう参加することをやめたり。
 
出会ったもの、人、事に対して、いつもそんなふうな対応をしてきたのだ。
 
相手に文句を言うことはないけれど、何か一つでも気に入らないと、そこから先一切、心を閉ざしてしまう。
 
ところが、今回その歯石スプレーを再度購入することにしたのだ。
やっぱり、犬の口腔の衛生が気になり、他の手段を知らなかったからだ。
とにかく少しだけでもいいから、でも使ってあげようという気になったのだ。
うせ、また途中からは使えないだろうと予測しながら。
 
そして、前回のようにネットでオーダーし、商品が届き、封をあけると・・・。
なんと、今回は商品とともに、ノズルの替えが入っていたのだ。
きっとほかの消費者からの意見があったのだろう。
誰かがメーカーに問い合わせたのだろう。
 
そうだ、私と同じ思いをしている人は他にもいたはずなんだ。
そして、同じ思いをした人は、別の行動をとったのだ。
 
私は、相手に対して、不満があると、一方的に断絶していた。
けれども、そのことを相手に伝えることで、相手にとっては改善のきっかけとなるのだ。
それは、結果として消費者である私たちに還元されるのだ。
 
そんな行動やかかわりを一切とってこなかった私。
 
そのノズルを見たときに、一気にこれまでの人生での行動が蘇ってきた
 
ああ、あの時に私がイヤになって断絶したすべてのもの、人、事にもみな、その先があったはずだ。
 
私が断絶してしまったことで、私だけがその先を知る機会をなくしていたんだね。
 
誰だって、失敗はする。
最初から、最良の商品を作れるとは限らない。
始まったばかりのお稽古事やサークルも、時間をかけて良いものになってゆくのだ。
 
最初からベストなことばかりではない。
それは、ものも人もそして、事も。
 
それを、そこでかかわる人間たちで改善してゆくその先に、さらなる進化、それに伴う喜びや幸せがきっとあるはずだ。
 
そう、一回の失敗体験にしがみつくな、ということだ。
 
これからは、一回の失敗や不具合があったとしても、断絶するのはやめよう。
その先の展開を、是非自分自身も巻き込まれながら、作ってゆく中に自分も入っていたい、そう思った。
もの、人、事を断絶しないその先には、これまでとは違う世界がきっとあると信じられるから。
 
そして、今日も順調に、犬の歯石とりスプレーを使っている。
誰かの意見が反映したカタチの恩恵を受けながら。
 
ありがたいな。
 
 
 
 
***
 
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2019-05-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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