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天然の青いクラゲが教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:芦野 雅代(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
高齢者ドライバーによる、交通事故が連日報道される。
幼い子どもが犠牲になってしまったという悲しいニュースを耳にすると、胸が締め付けられる。
 
高齢ドライバーは危険だから70歳以上は運転すべきでないとか、80歳になったら全員運転免許を返納する仕組みにすればいいなどと提案するつもりは毛頭ない。
都市部と地方で大きく異なるが、地方では車を運転することが生活に必要不可欠なものである場合があり、運転能力や適性は、必ずしも年齢やましてや性別によって区切れるものではないからだ。
 
私も運転歴は20年以上、ここ15年以上はいわゆるゴールド免許である。大きな事故や違反は無いものの、毎日運転しているとヒヤリとする場面は過去に何度も経験している。
 
自分では安全運転を心がけているつもりでも、制限速度を守って走行していたがために、思いもよらぬところで急ぎの後続車に無理な追い越しをかけられたり、信号機のない横断歩道の手前で減速をしたら、クラクションを鳴らされたりと、殺伐とした現場に出くわすことも多々。
 
いろんな人がいろんな事情で運転しているのだから、とにかく自分は常に安全運転をして巻き込まれないように気を付けている。
 
ただ過去に一人だけ、この人は適性が低いな、運転して欲しくないなと思った人がいる。
 
その人は元同僚で、いわゆる天然系女子のSさん。
見た目も中身もかわいいのだが、とにかくいろいろボケているSさんは、普段は自分専用の軽自動車を運転し、たまに旦那さんの車を運転することがあるという。
あれは確か、お昼休みの何気ない会話の中で、
「そう言えば、旦那の車を運転するとき、青いクラゲが出るんだよね、なんかあれ、かわいくて好き」
と言っていたのだが、私はそれが何のことだかわからずに軽く聞き流した。
 
確か、Sさんの旦那さんの車はクラウンか何か、割と大きめの高級車だったはずである。
旦那の車の車種を聞いてあげればいい所なのか、意味不明の発言に突っ込んであげればいい所なのかわからなくて、面倒くさいから優しくシカト。
 
時に天然系と言われる女子の発言が、純粋な天然ボケなのか、綿密な計算の上に成り立つ天然風なのかの判断が難しいため、天然系にはできれば関わらない主義である。
 
時は過ぎ、ある日、私が札幌近郊の農業地帯を夜間に走行中、なんと私の車(当時の愛車ファミリア)にも、あの青いクラゲが現れたのだ。
それは対向車がいなく、街路灯もまばらな暗い農道で、車のライトをハイビームにした瞬間だった。
 
「あーーーー、青いクラゲだ」
 
いつかSさんが旦那の車に出ると言っていたと思われる、青いクラゲを自分の車で発見してしまった。
 
青いクラゲの正体がわかって、妙にスッキリしたのと同時に、Sさんは運転中ずっとハイビームで走っているのかと思うと、軽蔑に近い感情がわきあがった。
 
なんと迷惑なドライバーよ。
天然だからといって、何でもヘラヘラしてて許されるわけじゃないんだぞ! と思った。
 
だが、この一点に関して、後に私は自分の無知を思い知らされることになる。
 
なんと、
道路交通法第52条(車両等の灯火)の第1項で前照灯は基本的にハイビームを主たる前照灯とし、第2項の「灯火を減ずる装置」となるのがロービームとなる。
 
つまり、基本的にはハイビームで走って、歩行者や対向車がいたりする時にロービームに切り替えるのが正しいのだそうだ。歩行者や対向車がいない場合にロービームのままでいたら、違反になるのだ。
 
知らなかった。
そんなことも全く知らずに、ゴールド免許であると豪語し、今までずっと札幌市内全域をほぼロービームで走り続けてしまった。ハイビームで走ったのは、一部の農道や峠のみ。
 
私は、夜に旦那の車を運転すると青いクラゲが出てかわいいと言ったSさんを軽蔑できる立場になかったのだ。
 
無知と勝手な思い込みで、ほぼロービームで走り続けてしまっていた。
そして、それが正しいことだと信じていた。
悪気の無いマナー違反とは、たちが悪い。
 
もっと言うと、それを知った今でも、長年の癖で、ロービームで走行することの方が多い。市街地では街路灯もあり割と明るいのでロービームでも走れてしまうのだ。
そして、ロービームで走行している車の方が多いという現状もまた、ハイビームで走ることをためらわせる一因でもある。
 
一つ救いなのは、警察では、ロービームとハイビームに関する違反行為の取り締まりは行っていないという。
 
天然の青いクラゲは、どこかの海か、誰かの頭になんとなく出現してしまうものかも知れないが、夜間走行中の青いクラゲは、意識的に配慮をもって出現させなければいけないものであった。
 
青いクラゲに、自戒の念を込めて。
 
 
 
 
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2019-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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