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目的なき語学学習は無駄なのか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Mami Osawa (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「あなたはどうしてこの言語を勉強しようと思ったのですか?」
 
「お仕事で使うの?」
 
「恋人が外国人ですか?」
 
もう聞き飽きたこの質問。
目的なく外国語を学んではいけないのだろうか。
それは無駄なことなのだろうか。
 
私は英語が話せない。
典型的な中年の日本人である。
中高で習った英語は文法と日本語に訳すことが中心。
ネイティブっぽい発音で教科書を読めばクラスメイトに笑われる。
そんな田舎の学校だった。
高校を卒業するまでほぼ英語圏の外国人に会う機会もなかった。
 
東京に来てみたら、外国人がいっぱいいた。
学校の英語の講師はテレビで見かけたことのある有名な先生だった。
だけど、私にとって英語は週に1コマだけの教養科目でしかなかった。
毎年、海外旅行をするようになった。
英語くらい話したい、そう思ってテキストを買い、ラジオを聴いたりテレビを観たり。
ちょっとだけ英会話スクールに通ってみたり、通信講座を申し込んでみたり。
一人で旅行するくらいの英語は覚えたが、英会話を楽しめるほどには上達しなかった。
英語への苦手意識が年々強くなった。
 
私はそんなにセンスがないのか?
それとも、自分が自覚している以上におバカなのか?
その答えを知りたくて、私は暴挙にでる。
 
全く未知の言語を学んでみることにしたのだ。
選んだのはアラビア語。
世界的には話者人口の多い言葉だが、日本では人気のない言語だ。
 
日本の学校の英語教育が悪かったのか、私の頭が悪いのかをはっきりさせたかった。
ただそれだけ。どの言葉でも本当は良かった。
知識ゼロで、初めからネイティブに習ったら話せるようになるのかを知りたかったのだ。
 
アラビア語を選んだのは、たまたま家の近所にアラビア語を学べる施設があったという、それだけの理由だ。もしも近所に違う言語の学校があればそちらに行っていたことだろう。
 
「アラビア語を勉強して何になるの?」
ごもっともな言葉を何度も言われた。
ちょうどテロも多発していた時期なので、変なものに勧誘されたり洗脳されたりしないかと心配までされた。
 
さて、アラビア語のクラスメイトを見渡すと
イスラム教徒
恋人または夫がアラビア語圏の人
ベリーダンサー
中東関連の仕事をしている人
中東情勢に興味を持っている大学生
中東でボランティア活動したい人
 
私のように、アラビア語、アラブ諸国と一切の関わりがない人間はそこに存在しなかった。
それはそうだろう。みんな忙しい。忙しい時間をやりくりしてわざわざ難しいと言われるアラビア語を習う。そこに目的や強い興味がなければ続けるどころか始めようとも思わないだろう。
 
その頃の私には時間だけはあった。病後で体力がなくなっていたので、学校に通うことが社会復帰への第一歩のつもりでもあった。ほかのクラスメイトに比べて圧倒的にヒマがある。これだけがわたしの唯一勝っていた部分。とにかく休まないことだけを目標に通い続けた。
学校に通ってアラビア語を話せるようになりたい。私の目標はこれだけだった。
アラビア語を話す恋人を見つけたいわけでもないし、イスラム教徒になりたいわけでもない。アラビア語を習った先のことは何も考えていなかった。目的なく外国語を勉強する私は、他人からは奇妙に映るらしかった。
 
結論から言うと、1年以上通ったのに、わたしのアラビア語はお粗末なままで止まっている。
英語さえもろくに聴き取れない私の耳には、アラビア語はもっと聴こえなかった。
私には、外国語を聞き取る耳がないことがわかった。物覚えも悪い。
一緒に学んだクラスメイトの中で私はデキの悪い生徒だった。
 
しかし、アラビア語を始める前の私と今の私を比べるとこの2年は決して無駄ではなかったと断言できる。知らず知らずの間に、私は言語だけでない学びを得た。
 
気が付けば、ふつうの日本人の中では中東、アラブ、イスラム教に詳しくなっていた。
全く社交性がないけれど、それなりにアラブ圏の人と知り合う機会もあった。
イスラムの社会を覗く機会はそれまではなかった。少し話せるだけで世界が広がった。
世界には私が思いもつかない違う考えがあることを知った。
 
結果として、アラビア語は少ししか話せないままなわけだが、少しでも話せる人がほとんどいないのが日本である。
 
私はこのお粗末なアラビア語力を買われて仕事を得た。
私は、仕事を見つけるために語学学校に通ったわけではない。
でも、学んでみたらこんな世界が待っていた。
自動翻訳機もどんどん進化している。
私も翻訳機を持っている。
この先は旅行なら自動翻訳機で十分だとも思う。
それでも、自分の口で別の言語を話せるというのは面白いことだ。
 
意味がないと思うことでもやってみたら想像もしなかった未来が開けることもある。
きっと、学んだ時間は無駄にならない。
 
そう信じて、性懲りもなく私は今、ロシア語を学んでいる。
世界の共通語、英語は……そのうちまたチャレンジするつもりだ。
いつになるかは未定である。
 
 
 
 
***
 
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2019-06-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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