カベは乗り越えるもの?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:赤木 広紀(ライティング・ゼミ日曜コース)
「これが本当のスクワットというものか!」
近所に小さなジムが新しくできた。
以前に通っていたジムは、勾配差50メートル、20階建てビルの屋上まで一気に駆け上がるような坂の上にあった。自転車で行っていたので、いつもジムに着くまでにヘトヘトになる。
「もう、これだけで十分トレーニングになるんじゃない?」と、だんだん億劫になり、いつしか足も遠ざかってしまった。
新しいジムは、なんと家から歩いて3分!
シューズは預かってくれるし、タオルも貸してくれる。
Tシャツと短パンという普段着で、散歩がてらそのままふらっと行ける気楽さ。
しかも、オープンしたばかりで会員がまだ少ないからか、行くといつもマンツーマンレッスン!(経営的にどうかという疑問はさておき……)
腰の痛みにはスクワットが効く。
整体の先生の教えを忠実に実践し続けて以来、腰の痛みは出ていない。
そんな話をジムのインストラクターにすると、「じゃあ、ちょっとやってみてください」とスクワットを促される。
家でいつもしているスクワットをインストラクターの前でやってみせる。
「なるほど、わかりました。じゃあ、今度はおしりをもっと後ろに突き出してやってもらえますか?」
ある年齢より上の人はご存じだろう、昔の学校のトイレにあった和便こと、和式便器。あそこにしゃがむときの姿勢と同じ感じだ。
言われた通りおしりを突き出すと、身体の重心が後ろになるので、しりもちをつきそうになる。慌てて何とか姿勢を保とうとすると、背中とおしり、太ももの筋肉がプルプルしだす。
「その姿勢でスクワットをすると、体幹が鍛えられるんですよ」
インストラクターも隣で同じ姿勢になり、スクワットを始める。
大きな鏡に映ったインストラクターの姿を見ながら、自分も一緒にスクワットをする。
が、インストラクターは身体が上下に安定して動くのに、
僕はというと身体が前後にグラグラしながら、辛うじて立っているのが精一杯。
「これが本当のスクワットというものか!」
あまりにも自分がやってきた動きと違い、がく然となる。
インストラクターから教えてもらった「本当のスクワット」を知ったことで、これまでの運動がスクワットではなく、単なる屈伸運動だったことに気づいてしまったのだ。
本物のダイヤモンドだと思っていた指輪が、単なるガラス玉だったと知ったような衝撃。
自分ではできている、うまくいっているとドヤ顔だったのが、そうではなかったと知って何ともバツが悪い。
でも、前より脚の筋肉もついたし、何より腰の痛みが無くなったからいいじゃないか。ガラス玉の指輪でもキレイじゃないか。と、自分を納得させるように言い聞かせる。現実を素直に認められないし、認めたくなかっただけだが……
が、そんな認めたくない気持ちも、インストラクターの一言で木っ端微塵に砕け散る。
「前の姿勢でスクワットすると、膝を痛めやすいんですよ」
えっ、ちょっと、なんで知ってるんですか?
腰の痛みが無くなったからと調子に乗って、スクワット(という名の屈伸運動)をやり過ぎて、逆に膝が痛くなったことを!
分かるのだ。
専門家、プロと呼ばれる人から見たら、一目瞭然だったのだ。
正しいスクワットをすると、ふくらはぎと太ももはもちろん、背中とおしりにもしっかりと筋肉が付く。
けれども、膝が痛んだということは、実際はふくらはぎや太ももにも大して筋肉がついていなかったのだろう。
教え上手なやさしいインストラクターに、僕はさっさと白旗を上げて降参。
自分のやり方に意固地にならず、素直に教えてもらった姿勢でスクワットをする。
そうすると、最初はプルプルしていた背中とおしりにもちゃんと筋肉がついてきて、インストラクターが最初にやってみせてくれたように、安定して上下に動くようになった。体幹も鍛えられた結果、最近は片足でスクワットもできるようになった。
もし、ずっと我流でスクワットならぬ屈伸運動をやっていたら、いつかきっと膝を痛め、スクワットもやめてしまい、また腰の痛みに悩まされていただろう。スクワットで30年来の腰の痛みも治った! と喜んだのもつかの間、また違う施術を求めてさまよう「ジプシー」になっていたかもしれない。
試行錯誤しながら、我流でやってみることは大事だろう。
自分の頭で考え、身体を動かすことで、初めて自分の血肉となる。
だから、自分が良いと思ったことは、我流だと言われようが絶対やったほうがいい。
けれども、我流で続ける限り、必ず限界がやってくる。
どうやっても、どうあがいても、乗り越えられない限界という名のカベが目の前に現れる。
この乗り越えられないカベが現れたときは、どうすればいいのか?
僕はこう思う。
「カベを乗り越えようと、これ以上頑張らないこと」
カベの正体は「これまでのやり方では限界が来ているよ」というサインではないだろうか。
もしあなたが歩いている道がカベで行き止まりになったら、乗り越えようとせずに、もと来た道を引き返し、別の道を探すだろう。カベを乗り越えようとするのは警察に追われている犯人ぐらいだ。
自分のやり方や歩んできた道の限界を認めるのは、恥ずかしかったり情けなかったりするかもしれない。
でも、そんなとき、ちょっとだけ勇気を出して、違うやり方を試してみてほしい。
信頼できる人の言葉に耳を傾けるのもいいだろう。
きっとカベを越える以外にも道があるということに気がつくだろう。
あなたが越えたかったカベの向こう側に行けるのは、案外そんなときかもしれない。
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