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音楽ライブは、シャカシャカポテトだと思う。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:g.shikada(ライティング・ゼミ特講)

音楽のライブは、シャカシャカポテトと良く似ている。
シャカシャカポテトというのは、フライドポテトとスパイスの粉を同じ袋に投入して封をして、シャカシャカと振ることでフライドポテトにスパイスをなじませてから食べる商品で、某人気ハンバーガー店の人気メニューのひとつだ。
ライブに参加したときに「いま、自分たちはシャカシャカポテト状態だな……」と思ったことがあった。なんでそんなとんちんかんなことを考えたのか、説明するために自分のライブ体験を思い出してみる。
もともと自分は、ライブに良く参加する人間ではなかった。少し前まで、音楽のライブの楽しみなんてひとつも分からなかった。
CDに収録されているライブの音源を聞いても、スタジオで録音した曲に比べるとノイズだらけで、CD音源の劣化コピーにしか聞こえなかった。こんなごちゃごちゃした音のなにがいいんだろう。きっと皆、アーティストのトークとかライブのグッズ目当てで参加してるんだろう、という程度の浅い理解をしていた。
こんな調子だったのが、ある映画に出会って考え方が少し変わった。
数年前に公開されたとあるSF映画の劇中で、主人公の相棒が「音楽は耳で聞くんじゃなくて、骨で感じるものだ」と語るシーンがあった。この「骨で感じる」という言い回しがなぜかずっと記憶に残っていた(そのセリフは映画の核心的なシーンではないのだけれど、映画自体は本当に面白くて、その後何度も繰り返し見ることになる)。
そのときに知った「骨で感じる」という未知の感覚がずっと心のどこかに引っかかっていた。その後しばらくして、とあるライブのお誘いが来た。それまではあまり考えずに断っていたけれど、その時は「これはひょっとして、例の『骨で感じる』やつが体験できるのでは……?」と思い直し、参加してみることにした。
結果、その「骨で感じる」感覚を、もろに実感することになった。ライブで観客に襲いかかる音量はめちゃくちゃに大きくて、その轟音をまともに全身に浴びて、床がビリビリ揺れて、その揺れが自分の足を駆け上って全身に伝わって、なるほどこれは普段イヤホンを耳に突っ込んで聞いている音楽とはまったく別物の体験だな、と思った(その瞬間はそんなに冷静ではいなかったけれど)。普段は聴覚だけで音楽を聞くけれど、ライブになると触覚にも音楽がごりごり働きかけてくる。音が空気の振動だってことは頭では理解していたけれど、今回そのことが体で理解できた。「骨で感じる」ことができた。
ライブハウスという狭い箱のなかで、大音量の音を受けて、観客たちは洪水と竜巻と地震がいっぺんにぶつかってきたような状態になる。このときの観客は、ちょうどポテトの一本一本のようなもので、ライブハウスという袋に詰め込まれて、音楽というスパイスと混ぜ合わされて全身を揺さぶられる。そうするともちろん冷静ではいられない。全身をガタガタと動かされて、脳みそをかき混ぜられるような衝撃を受ける。そうすると人間関係とか仕事とか、日常のささいな悩みは全部吹き飛ばされてしまう。ライブハウスを出る頃には満身創痍で、一回死んでから違う自分に生まれ変わったような気分になるのだ。
もちろんライブに行ったくらいで悩みのもとが消えることはない。ライブハウスを出れば今までと同じ日常に戻るだけだ。
それでも、ライブには強烈な力があると思う。人間をはでに揺さぶって、日常生活を送るうちに全身にこびりついた垢をふるい落として、新しい自分に生まれ変わったような錯覚さえ覚えさせるだけの力が。

もしこの文章を読んでくださっている方のなかで、ライブに参加したことがない、もしくは食わず嫌いをしている人がいらっしゃったら、ぜひ一度参加してみてほしい。できれば狭いライブハウスのなかに、人がぎゅっと詰まっている会場がいい。その方が、音楽を骨で感じて、心身を強く揺さぶられる感覚を味わえる(もちろん、あまりにハードすぎるライブに初心者が参加すると怪我のおそれもあるので注意が必要だけれど)。
慣れていない人にとっては、シャカシャカされることは不快で苦しいことかもしれない。しかし、勇気を持って飛び込んで、それを乗り越えた先には、きっとスパイスの利いた一味違う自分が待っているのだと思う。

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2019-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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