メディアグランプリ

コーチングは、人生のナビゲーター


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ひめさとこ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あー! もう、イライラする!」
待ち合わせのカフェの席に着く瞬間、
彼女は、険しい表情で、当たり散らすように言った。
 
「どうかしたの?」
 
「子どもよ! 子ども。
子どもに、つい、イライラしちゃってね」
 
まぁ、よくある話だなぁ~と思いながらも、
なぜ、彼女が、そんなに感情を取り乱しているのか? 気になった。
 
というのも、彼女は、メンタルコーチ。
心を扱うプロフェッショナル。
日本では、まだまだ、聞きなれない職業だが、
カウンセリングがマイナスからゼロだとしたら、
彼女のやっているコーチングは、ゼロからプラスといった感じだろうか。
 
そのプロである彼女が、穏やかでないのが気になった。
 
と言っているあたしも同業者だ。
心を扱うプロとしてのスイッチが自然と入ってしまった。
 
「子どもと何かあったの?」
 
「いつものことよ。
約束は守らないし……
言うことは聞かないし……」
 
まぁ、そうだよね。
言うことを聞く子どもの方が問題だ。
 
プロとは言え、人間だから、さすがに身内のこととなると
プロではいられなくなるよな……。
そんなことを考えながら……次の質問を繰り出した。
 
「それで、どうなったの?」
 
「いつも、同じよ。
つい、怒っちゃって……
イライラして、こうやって、出掛けて気を紛らわせてるの!」
 
なるほど。
どうやら、これが、彼女のパターンで、
そのパターンに、たまたま、あたしとの約束がいい具合にハマったってわけだ!
 
「それで? 帰るとどうなるの?」
 
「帰ると?
子どもが玄関に来て、謝るから、それ以上、怒れなくなって終わるよ。
でも……なんにも、反省してないから、その繰り返しね」
 
そこで、あたしは、この問題を整理してみたくなった。
 
「ねぇ、ちょっと、書いてみてもいいかな?
言うこと聞かない。イライラする。出掛ける。帰る。謝ってくる。だよね?」
 
「うん」
 
自分の行動を紙に書き出されて、彼女は落ち着きを取り戻しつつあるようだった。
 
「ねぇ。他のパターンってある?」
 
「そうねぇ……。
旦那がいると、上手に子どもを諭してくれて、
子どもが、謝りに来るかな」
 
「そしたら、どうなるの?」
 
「えっ?
謝りに来て……私の気持ちが落ち着くかな」
 
「なるほどねー
謝って欲しいの?」
 
「そうねぇ……そう言われれば、そうかも?
でも……本当は、そうじゃないよね?」
 
「じゃあ、本当は、どうなったらいい?」
 
コーチングで使う王道の質問だ。
いろんな制限や、しがらみがあるだろうけど……。
本当は、どうなったらいいか?
理想の状態を考えてもらう。
 
「本当は?
言うことを聞いてくれたらいいけど……。
他人は、コントロールできない。だね。
あー! 私、子どもをコントロールしようとしてたね」
 
さすがプロ!
 
「本当は……私がイライラしなくなればいいよね」
 
「じゃあさぁ、この言うこと聞かない。があっても
イライラしない。になればいいんだね?」
 
あたしは、紙に書いたメモに、
矢印とイライラしない。を書き足しながら、言った。
 
「ということは……
言うこと聞かない。があったら、
今は、どんな風に捉えてる?」
 
「言うこと聞かない悪い子だね」
 
「まぁ、そうだよね。
それで、どんなことを考える?」
 
「そうね。またかよ! いい加減にしてよ! って思うな」
 
「それでイライラするだね?」
 
また、紙に書き足した。
 
「じゃあ、ここだね。
この言うこと聞かない。があった時に、どう捉えたら、
イライラしない。になりそう?」
 
「う~ん。自分軸がある?
なんか、違うなぁ~
主体性がある? うん! 主体性がある! だ!」
 
「じゃあ、主体性がある。って捉えたら、どんなことを考える?」
 
「どうして、それを優先してるのかな? って思うね。
うん! それだと、コーチ的だね!」
 
「いいね!
じゃあ、イライラしなくなって、そのあと、どうなりそう?」
 
「イライラしなくなって、穏やかに、
そう! 旦那みたいに、落ち着いて……
それでいて、コーチ的に聴けるかな?」
 
「なるほどね!
ここまで話してみて、どう?」
 
そう言いながら……二人で、目を合わせて、笑った。
 
この言い方も、コーチング独特のもので、
プロふたりで、このやりとりをしているのが、おかしくなってきたのだ。
 
「やっぱ、コーチングっていいよね!」
彼女は笑った。
 
本当なら、具体的な行動まで、探していくところだが……
相手もプロだし……
そもそも、あたしは、コーチングをしに来たのではなく、
彼女と打合せをしに来ただけだった。
 
「さぁ! ミーティング始めるよ!」
彼女は、わざとらしく、笑いながら、はっきりとした声で言った。
 
コーチングは、人生のナビゲーター。
本当は、どうなったらいいか? どうしたいか?
理想の目的地を探すコミュニケーション技法。
日本では、まだまだ、知らない人も多い。
 
コーチングを広めるためのミーティングが始まった。
カフェには、彼女たちの笑い声が響いていた。
 
 
 
 
***
 
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/zemi/86808
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事