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人生は何度でも生き直すことができる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:浦井啓子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「人生は一度きり。だから悔いのないように生きよう!」
 
こんなメッセージをあちこちで見かけることが多いが、私はそうは思わない。
人生は何度でも生き直せると思っている。
 
私は三姉妹の末っ子として育った。末っ子特有の〝甘え上手で、人の顔色をうかがう術に長けた〟要領のよい、ませた子どもだった。常に「人のことを見て、相手にとってどう見えるか」を考えて行動するような、それでいてそんなそぶりを全く見せないでやってのける子どもでもあった。父も母も私のことは、何の問題も起こさない、手のかからない素直ないい子としか思っていないようだった。
 
そうとは知らない大人たちから、ちやほやされ可愛がられていたが、年の離れた姉たちから見れば、それが鬱陶しかったのだろう、なんとなく自分に対して冷ややかな姉たちの態度に、自分の狡さを見透かされているような気がして、いつも顔色をうかがっていた。
 
自分の周りの人や身近に起こっている様々な出来事を観察し人や環境に自分を合わせるクセはこのころからついたのだと思う。誰かに正直に自分の気持ちを話すことも、本当の気持ちを悟られることもなく、いつでもどこでも明るく元気に明るくふるまう自分が出来上がっていた。気が付くと誰といても相手のことを考えすぎてしまうがために本当の自分を出せなくなってしまっていた。
 
この性質は、集団の中でそつなく協調するためには能力を発揮したが、自分よりも他人を優先し、嫌なことでもつい我慢してしまうという負の側面がついてまわるため、その後の私の人生をストレスまみれの人生へと大きく変化させていってしまうこととなる。
働き始めてからも、必要以上に人に合わせたり無理をしてしまうことで、体調を崩すことが多かった。何でも話せる親友と言えるような友もおらず、何をやってもうまくできない自分、というレッテルを自分に貼り、ますます自己嫌悪に陥る負のスパイラルから抜け出すことは、簡単ではなかった。
 
今なら分かるが、自分の素直な気持ちを表現できないのは、自分を信じて認めることができないからだ。
自分が自分を受け入れられないうちは〝自分の人生〟を生きることなど絶対にできない。素直な自分の気持ちを出すこと、本当の自分としてふるまうことができないというのは、自分のための人生を歩むことができない、ということなのだ。
 
こんな私に転機が訪れたのは、心理学の勉強を始めたことだった。勉強をすすめていく中で、少しずつ本当の自分のことについて知ることになった。
 
「本当の私は、何を感じていて、本当はどうしたいと思っているのか?」
 
自分でも分からなくなっている自分の気持ちを見つめることで、少しずつ自分自身と向き合うことができるようになった。自分の中にある、これまでの忘れてしまいたい記憶や、蓋をしていたような思いに触れる機会があるうちに「これらは苦痛だけれど、今の自分を苦しめている何かを開放するためには意味ある体験だ」と感じていた。
 
そんなある日、不思議な経験をした。
 
朝、なんとなく目が覚めたものの、頭がぼぉっとしていて起きられずうとうととまどろんでいた時だ。突然、子どもの頃に意識が飛んだ。封印されていた、そんな私の記憶が突然よみがえったのだ。
 
小学6年生のある日、スポーツクラブ活動の後、帰りが遅くなるので母が学校へ迎えに来ると約束した日のことだった。約束の時間を30分過ぎても母は迎えに来なかった。何が起きたのか分からず軽いパニック状態だったが、もう下校時間はとうに過ぎていて学校内は暗い。母に何かあったのではないかと心配だけれど、とにかく帰ろうと一人で歩いて帰った日のことだった。
不安でたまらなく泣きそうだったその時の感情が突然あふれてきたのだ。その日の幼い私は、不安と寂しさと一生懸命戦っていた。自分は大切にされていないのだと思い、とても悲しかった。
 
当時と同じくらい強く感情が揺り動かされたが、同時に、理性をもちあわせていた。意識の中でこれは現実ではなく、一時的に記憶が過去に戻っているということを理解していた。
不安でたまらなかった幼い自分を、大人になった自分が「不安だったね……。怖かったね……。もう大丈夫だよ」と抱きしめてあげたとき、心の中の一部が癒されていくのを感じて目が覚めた。
 
そんな経験があってからというもの、私は自分のその時の感情だけを感じることから、もっと客観的に自分を見つめることができるようになっていった。心が癒されたことで、自分を信じる力が少しずつ戻ってきた。
 
不思議なことに、これまでの人生で、辛かったことや苦しかった思い出や、うまくいかないと思っていた人間関係も、一つ一つ振り返ることで、自分の人生を肯定的に捉えなおすことができるようになっていった。
 
経験そのものは同じであっても、そこに、「どのような意味づけをするか」という解釈の仕方によって、過去の経験は見違えるような経験となっていった。
 
時間軸でみれば、確かに人生は一度きりだと思う。
しかし、その経験をどう意味づけするかによって、自分の経験そのものの役割の意味を変えることができるのだ。その時、人生は違う角度から光を当てられることで、再生することが可能だ。人生は何度でも生き直すことができる。
 
 
 
 
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2019-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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