“違和感”という名の光を見過ごさない
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:結珠(ライティング・ゼミ平日コース)
最初に”違和感”を感じたのは、帰国後初めてスーパーに行った時だった。
きれいに陳列され、鮮やかに彩色されたような野菜。
虫食いの穴が空いていたり、大きすぎたり小さすぎることもない。
どれも均一で、同じように美味しそうな野菜たちである。
そんなごく一般的で普通のスーパーの野菜を見て”違和感”を感じたのは、私がそういう意味での「普通」でない環境に住んでいたからかもしれない。
大学卒業後、私は青年海外協力隊隊員として東南アジアの最貧国と呼ばれるラオスに住んでいた。
更にラオス国内の17県の中で特に発展の遅れている数県の1つに派遣された私は、その街の学童のような施設に配属し、2年間ボランティアをしながら生活していた。当たり前だが、日々の食事は自分でやりくりしなければいけない。
その街にはスーパーもコンビニも無く、必要な食材は全て現地の人々が集う市場で買っていた。
壁がないプレハブ小屋の下のコンクリートの床の簡素な建物の中で、木製の机やシートの上に野菜や肉を置いて売っているような市場だ。
当然、肉用の冷蔵庫無ければ野菜を袋分けするような事もない。
大きさも不均等で、虫食いがあるものも当たり前に並んでいる野菜。
蝿がたかり、どこの部位かも分からない豚や牛の肉塊。
そのままローストチキンに出来そうな羽と内臓を取っただけの鶏肉。
そんな食材が売られている中で、私はまだ新鮮そうな肉や丸々のままの鶏肉、比較的新鮮そうな野菜を選んで買う必要があった。
そんな野菜から虫食いの部分を取り除き、豚肉の使える部位を自分で切り分け、鶏はYouTubeを見ながら捌き方を覚えて食材としていた。
そんな2年間を過ごしたからこそ、日本に帰国したときの”違和感”は
「きれい過ぎないか?」
で、あった。
「なぜ、スーパーの野菜はどれも虫食いが無く、形も均一なのか」
かなり極端ではあるが、極端である分、その”違和感”は分かりやすい大きな気付きとなって私に疑問を持つきっかけを与えた。
そんな折、あるドキュメンタリー映画の鑑賞会がある事を知人から聞き、行ってみることにした。
タイトルは、「ゼロ円キッチン」
映画の監督であり、物語の主人公であるダーヴィットグロスというジャーナリストが、廃油で走るキッチン付きの車でヨーロッパ五カ国を回るストーリーだ。
規格外のため売れない農産物や賞味期限切れの食品、自然界の果物など本来なら調理されずに捨てられてしまう食材を使って料理を作り、振る舞う旅をしていく。
映画の中では、毎年全世界で生産される食料品の1/3が廃棄になっているフードロスという問題に対して、有機野菜の農家やホテルの食堂などを訪れ、この問題が起きている原因にスポットライトを当てると共に「まだ食べられる」事を伝えることで解決に取り組んでいるダーヴィトの物語が映し出されている。
ヨーロッパでの食料問題を扱った映画だが、その内容に込められたメッセージは全世界の人々が考えるべきテーマであり、私の小さな”違和感”に答えを教えてくれた。
映画の中で、ダーヴィトが訪れたドイツの農場でスーパーに出す規格に合わないために捨てられてしまう農産物があるという場面があった。
その捨てられてしまうはずの野菜を食べながらダーヴィトが
「まだ食べられるのに勿体無い。規格外の野菜のほうが美味しいのに」
と言ったことがとても印象的だった。
「そういうことだったのか」
そう。これは私が感じたスーパーに置かれている野菜への”違和感”に対する答えだ。
売れないような本当は食べられる野菜たちは、農場で消費者に気づかれないうちに捨てられてしまうのだ。
日本でも年間632万トンの食料品が捨てられているという。これは、国民あたり毎日お茶碗1杯分の食材が廃棄されている換算になるらしい。
日本でも映画の中のドイツの農家の現状のように、規格外の野菜が捨てられてしまうという話を後々聞いた。
普通に生活しては見過ごしてしまうようなような当たり前の景色にの裏には、こんな現実も隠されている。とても衝撃的だった。
これは一例に過ぎない。
私達は日々生きていく中で様々な場面で「違和感」を感じているはずだ。
「違和感」とは気づきであり、それは自らの興味と学びへの行動力に繋がるのである。
世の中で隠されていたり、普段は見過ごしてしまうような真実を見つけ出すトリガーとなりうる。
私は、途上国と日本の食環境の違いから、”違和感”を感じたことで、今まで知らなかった世界の真実を知ることが出来た。
今では食材を買うときは有機野菜を積極的に選び、食べ残しは極力無いように自炊のバランスを取るように心がけている。
(それでも作り過ぎてしまった時は自戒を込めて、最後まで食べたり、同居人に分け与えるようにしている。)
“違和感”という小さな感情の種や疑問に少しだけでも気にかける意識を持ちたいものだ。
そんな小さな気付きこそ、物事の本質や隠された真実の扉から見える一筋の光なのだから。
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