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メディアグランプリ

脱いだ靴を揃えることと、選挙に行くことの共通点


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ブロムベリひろみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
アメリカのドラマや映画を見て育ち、成人してからは40カ国以上を訪れてフランスやスペインにも住んだことがある経験から、私は日本以外の国では、家の中でも靴は履いているものとなんとなく思っていました。
 
それが、たまたま縁があり引っ越してきたスウェーデンは、日本と同様家の中では靴を脱ぐ習慣のある国でした。それを知った時の喜びは、なんというか、まだまったく知らない国だったのに優しく迎えてもらったような温かい懐かしさがありました。
 
でも喜んだのもほんのつかの間。靴を脱ぐところまでよかったのですが、スウェーデン人には脱いだ靴をきちんと揃えるという習慣がない! ということに気づいた時のがっかりの大きかったこと!
 
友人や知人のお家にお呼ばれの時などはもちろん家の玄関はとても美しく整えられ、整理整頓どころかスタイリングまでされています。でも機会はそんなに多くはないとはいえ、大人数が一度に同じ場所で靴を脱ぐようなところでは「あー、エライことになっています!」状況で、靴がぐちゃぐちゃと揃えられないまま脱ぎ捨てられていることも多い。
 
そしてさらに驚いたのが、その状況を気にしている人は私以外にはいないらしいこと。あまりにも気になるので一人で靴を揃えていたら「靴ドロボウと思われるかもしれないから、やめたほうがいい」と、スウェーデン人の夫から苦情がはいる始末。
 
こざっぱりとすっきりした印象のスウェーデン人たちなのに、なぜ靴を揃えない? そういえばセルフサービスのカフェでも、なぜみんな散らかしたままで店を出るのか? なぜ? どうして? と悶々としていた頃、ある仕事で小学校を訪れることがありました。
 
その小学校でも入り口で子どもたちは靴を脱いでいました。しかしその脱がれた靴たち、脱がれたジャンバーたちが、これまた入り口で「エライコッチャ!」状態で散らかされています。
 
それをみて「そっか! 私達日本人が靴を脱いできちんと揃えることができるのは、学校でそう習ったからか!」と改めて気づきました。
 
個々の家庭でのしつけが大人になって取る行動に大きな影響を与えているのは当然ですが、私達は学校でも脱いだ靴を揃えることに始まり自分たちで使った教室も掃除したりと、身の回りをきちんと整えることの重要性をとてもよく教えてもらっています。
 
これが行き過ぎるとなんだかよくわからない意味のない校則になったりもするのでしょうが、まずは、自分たちの生活の場を整えることが自分たち自身の尊厳を高めるということを学ぶ意味でも、学校で毎日整理整頓、お掃除に励んだ経験は、知らないうちに受け取った宝のようなものだと思うようになりました。
 
スウェーデンでは、こどもの仕事は遊ぶこと。着ているものが汚れることなんてまったく気にせずに、ドロドロで遊ぶ姿は素晴らしい。しかしこの国では学校では教室の掃除はプロのお掃除の人がやってくれます。自分たちが使った場所を自分たちで責任をもってきれいに整えることを教えようという価値観は、この国の学校現場にはないようです。
 
 
靴を脱ぎ散らかしても悪気のひとつもないスウェーデン人と靴ドロボウと間違われても靴を揃えずにはいられない私の間で違っているところがあるとすれば、その習慣を学校で教わったかどうか、それだけのように思います。これが学校教育ということか! そのパワーなのか! とつくづく思いました。
 
さて、次の週末は選挙です。日本の投票率はフランスと比べても特別低いわけじゃないという記事も読みましたが、選挙の投票率が90%に近い国、スウェーデンに住んでいるとやはり日本の投票率はもう少し高くならないのか? と気になります。
 
でも、そういう私もいまでこそ、隣国デンマークの首都コペンハーゲンの日本大使館までわざわざ国境を超えて日本の選挙に行くようになりましたが、選挙権をもらってから日本を離れるまでの7年位の間で、投票に行ったのはほんの数回だけ。そしていまだからわかるのですが、当時の私が特別ひどかったとか、そういうことではなかったのではないかという気がしています。
 
私はただ単純に、選挙とは何なのか、その時何を考えるべきなのかを人生の基礎問題として、個人が属する集団に対し責任をもって取り組むべき事柄であるということを学校でしっかり学んでいないのです。
 
スウェーデンでは、小学校の低学年でも授業で各政党の論点をまとめたり、模擬投票を実施したりしています。だからこそ投票できる年齢になれば選挙に行くことは誰にとっても当たり前だし、政治に関心の高い若者も多い。私達が「脱いだ靴は揃える」ことが習慣になったように「選挙があったら投票に行く」ことが習慣になった。そういうことなのではないかと思っています。
 
私はスウェーデンの子供にも靴を揃えることで生活や気持ちが整うことを知ってほしいので、近くの子供に靴を揃えることを教えています。大抵の子は、靴を揃えるというコンセプトを知らないだけので、指摘するとおもしろそうにやってくれます。
 
日本で、政党とか社会問題について関心をもったり、選挙にいくことも同じようなところがあるのではないでしょうか。私達はこれまでどうやって実行するのか知らなかっただけで、やり方を学べばたぶんちゃんとできる。そして一生続けたい習慣ならやり始めるのは早いほどいいはず。小学生と政治の話? とか思わないでお子さんと選挙について話して見るのもいいかと思います。スウェーデンではもうずっとやっているので、たぶんそんなに難しいことでもなさそうです。
 
さて、私は、日本の学校で知らず知らずの間に身についた数々の習慣に感謝しつつ、今日もこっそり靴を揃えたり、カフェで人が散らかされたテーブルを片付けたりしようかと思います。靴ドロボウやお掃除の人の仕事をとる労働犯罪人! として捕まったりしませんように。
 
 
 
 
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2019-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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