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メディアグランプリ

願いが天に届く祭り


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉田 倭子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
あなたが夏を感じるのはどんなときだろうか。じりじりとした暑さにセミが鳴くときだろうか、それともすいかにかぶりついているときだろうか。私は、あるときから夕方になって鈴の音が鳴るのを聞くと夏を感じるようになった。傘踊りの練習の音だ。
鳥取県の夏祭りに「鳥取しゃんしゃん祭」 という祭がある。この祭のメインイベントが「傘踊り」 だ。竹で組まれた傘の骨組に赤、青と色付けされた和紙が貼られ、金色の短冊で飾りつけをされる。傘の中ほどには鈴が付けられていて、その傘を使って踊るのだ。回したり振ったりしながら踊ることで「しゃんしゃん」 と涼やかな音色が鳴り響き、色付けされた傘は踊りの最中、華やかに空中を舞うかのように動かされる。
「鳥取しゃんしゃん祭」 の傘踊りに参加するグループを連というのだが、大人も子供も様々な団体が連をつくって盛り上げる。一斉傘踊りの時は壮観だ。参加連も多く、踊りもバリエーションに富み、どの連も本番に張り切っている。様々な衣装を身に着け、音楽に合わせて、傘を振り、しゃんしゃんと鈴の音を鳴らしながら踊り歩く踊り子の姿は、いつになく鳥取に活気と熱気を感じさせる。実は「世界最大の傘踊り」としてギネスにも認定されているものだ。
私も何年か踊り子として参加していた。サークルのように何人かが集まって連を作り、しゃんしゃん祭を目指して練習をするのだ。しゃんしゃん祭の音楽の4曲のうち、2曲は全員が同じ踊りを踊る基本踊り、残り2曲は各連で踊りを創作する。各連の技術や創作力、特徴の見せ所でもあり、見る側にも、連ごとに異なる踊りを見られる楽しみがある。踊り子として参加したから分かったけれど、実は踊りには振り付けをする人の特徴が現れる。女性が振り付けをすると柔らかい女性らしさや色気を感じさせる踊りになったり、男性が振り付けをすると機敏で勢いを感じさせる踊りとなったりするようだ。各連の踊りをみてどんな人が振り付けをしたのだろうと想像するのも楽しいかもしれない。
私の参加した連は、1年中、毎週1回、曜日を決めて集まり踊りの練習をしていたけれど、ゴールデンウィークを過ぎたあたりから、だんだんと本番を目指して練習に熱が入り始める。日中は仕事をして、夕方から練習に行き、夜の10時、11時まで練習をするのだ。私は、もともと友人から誘われ遊び半分で参加していた。けれどなんだか、周りの熱に影響されて何時の間にか本番へと意識が向くようになっていた。
きっとどこの地元でもこうやって夏祭りのメインイベントのために必死で練習したり、準備をしたりと祭にかかわる人は多いのだと思う。なんでこんなに準備や練習が大変なのに祭に参加するのだろう。その頃の私にとっては、どこかピアノの発表会のように自分の練習の成果を披露する場のような感覚だったように思う。けれど、今思うと祭はふるさと納税のようなものだ。
鳥取県という人口の一番少ない県。県庁所在地であるにも関わらず、普段の鳥取駅の駅前はいつも閑散としている。人通りも疎らで、お年寄りの姿ばかりだ。けれど、祭の日だけは違う。子供から大人まで、踊り子も見物客もどこにいたのだろうと言わんばかりの局所的な人口密度となる。鳥取駅の駅前通りは踊り子たちが道路一杯に広がって踊り、歩道も見物客がひしめきあう。8月の半ばと暑い時期だけれど、その暑さに文句を言うこともなく3時間近くの間、傘踊りは続く。踊り子は、何よりも踊れる楽しさを満喫し、観客に楽しんでもらえることを喜び、それはそのまま踊るエネルギーとなる。観客もひっきりなしに踊り続けられる傘踊りを楽しみ、踊り子達の熱意と活気からエネルギーをもらうのだ。
しゃんしゃん祭りの一斉傘踊りの時は、鳥取市の市内が一年で一番活気づくときだ。人口が一番少ない県に、こんなにも熱意があったのか、こんなに生き生きとした若者たちがいるのか、働きざかりの年代の大人達が熱中するものがあったのか、ふるさとに活気を与えられる人たちがいたのか、と可能性を感じられるひとときだ。そして、祭に参加する人は誰もが笑顔だ。お金を払わずとも、何か物をもらわずとも、ただ、自分達が祭に参加することで、この地域へ力を与え、この地域との繋がりを感じられるのだ。それは、鳥取しゃんしゃん祭だけでなく、それぞれの土地の祭も同じだと思う。そこに参加して楽しむだけで、ふるさとは活気づけられ、参加した人は確かに地域との繋がりを感じ、そこにいる人々との一体感を感じることができる。
今年の夏のご予定はお決まりだろうか。まだ決まっていなければ、地元のお祭りに行ってみてはどうだろう。ただ楽しいだけでなく、きっと、その土地との一体感、活力そんなものを感じられるのではないかと思う。地元のお祭りがなければ、鳥取しゃんしゃん祭りに是非訪れてほしい。ちなみに、今年の鳥取しゃんしゃん祭は、8月13日から15日。一斉傘踊りは14日だ。ただし、傘踊りは雨ごいの踊り。翌日15日の花火大会はたいがい雨が降るので雨具を忘れずに。
 
 
 
 
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2019-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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