fbpx
メディアグランプリ

勉強娯楽説の解法 「プレバト!!」 《ウォッチャー谷中田のTVの話をしよう》


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:谷中田 千恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「勉強は、一番の娯楽だよ」
校庭で、談笑をしていた私たちに、先生はきっぱりと言い放った。
 
当時、高校生だった私たちは、毎学期テストに追われ、次の年には大学受験を控えていた。正直、勉強なんて言葉にはうんざりしていたし、嫌々こなすタスク以外のなにものでもなかった。
 
教育実習生としてやってきた、若く美しい先生は、こう続けた。
 
「勉強って、新しい知識を得ることでしょ。新しいことを知るって、ワクワクするじゃない。こんな娯楽、他にはなかなか見つからないよ。」
 
そこまで、聞いても、ちっとも腑に落ちなかった。
怠惰で勉強嫌いな私は、勉強に楽しみを見出す人がいるなんて、とても理解ができないことだった。
 
大人になっても勉強嫌いは、相変わらずだ。
資格取得などは、できるうる限り、避けてここまで社会人生活を続けてきた。
これからも勉強の楽しさを、見出す機会などないのではと思っていた。
 
そんな私が、最近、「勉強娯楽説」について、考えを改めなくてはならなくなってきている。
 
きっかけは、「プレバト!!」というバラエティ番組だ。
 
「芸能人には本当に才能があるのか」と掲げ、番組内では、人気芸能人がいろいろな技能に挑戦し、その道のプロの評価を受ける。
ある時は、華道に挑み酷評を受けたかと思えば、陶芸をして絶賛の嵐を浴びることもあり、挑戦のお題は常に変化に富む。
その中の人気コーナーに、俳句の才能を査定するというものがある。
 
出演者は、お題に一枚の写真を与えられ、俳句を作る。
その俳句を、プロの俳人が査定を下し、丁寧に解説、添削までするのだ。
査定を下すプロの添削の切れ味であったり、名人として名前を連ねる出演者の話術の巧みさ、司会の明るいキャラクターなど、人気の理由はたくさんある。
その中でも、何よりの成功のポイントなのは、作り手が、「勉強は娯楽」信者だからだと私は断言したい。
 
このコーナーの見どころである添削の中では、「助詞」や「感嘆詞」など、遠い昔に国語の授業でうっすら聞いたような、文法用語がたくさん飛び出す。
 
助詞の「に」と「を」の違いの説明や、感嘆詞の与える影響など到底興味など持てるはずもなかった話題を、プロの丁寧な説明と絶妙に、はさんだ再現映像で、納得へと導いていく。
 
さらに、驚くべきは、その文法的納得を、番組の山場として効果的に使ってしまう。
 
民放のTV番組にとって、どこでコーマシャルをはさむかは非常に重要な問題だ。
広告収入で、成り立っているため、宣伝の時間は必ず設けなくてはならない。
しかし、コマーシャル中にチャンネルを変えられてしまうわけにいかないので、どの番組もこのCMまたぎに、一番引きの強い話題をぶつけてくる。
 
ある回のこと、添削が始まり、提出された俳句は、みるみるうちに、プロのそれへと変貌をとげる。
ぼやっとしていた輪郭が、くっきりとしだし、今まで見えてこなかった時間や匂い、手触りまで感じられる作品になってきた。
 
いよいよ、これで完成、残すところは、お尻の一字のみという段になった時、「あなたなら、ここにどんな一字を入れますか?」のナレーションが入った。
すると、一瞬で画面は切り替わり、コマーシャルが始まったのだ。
 
その瞬間から、視聴者は、どんな一字を入れるのか、TVの前で悩み始めたことだろう。
ある家庭では、「へ」ではないか「で」ではないかとワイワイと会話が始まったかもしれない。
コマーシャル明けの答え合わせを待ち遠しくて仕方なくなってくる。
 
たった一字の助詞である。
勉強の機会がたっぷりとあった、高校時代でさえ、助詞について考えることなどなかったのではないだろうか。
少なくとも、私はなかった。
 
製作陣は、たった一字の助詞、文法的納得、さらには、「学ぶは楽しい」をエンターテイメントへと昇華させた。
 
このことは、ほんの一例だ。
ご覧になっていただくとわかるが、番組の全てから、「学ぶは楽しい」「知るは快楽」とのメッセージが聞こえてくるようなのだ。
 
たった一つの季語が、たくさんの背景を描きだすこと。
日本の言葉の美しい響き。
思わずうっとりとしてしまうような、新しい語彙。
 
どれもが、「勉強は娯楽」と強い説得力で訴えかけてくる。
 
もちろん、「学ぶは楽しい」と思っただけでは、エンターテイメントまで引き上げることなどできない。
「楽しいを伝える」という、強い熱意と努力がこれを成立させている。
 
たった一つの助詞を説明するために、パターンの違う2つの再現映像を用意すること。
納得を得るために、解説のサポートのナレーションを効果的に入れること。
コツコツとした、手間の積み重ねにより、私たちは安心して、「学び」の波へと身をゆだねることができるのだ。
 
スマートフォンや、パソコンの急激な普及により、TVは衰退したという声をよく耳にする。
 
幼少期からTVが大好きで、家族の一員だとすら思っている私は、そんな声に寂しい思いをする。
 
それでも、こんなにも、新しい価値観を届けようとする情熱とアイディアがある限り、TVの未来はまだまだ明るい。
 
TVというもの力を信じる、「楽しい」の力を信じる人たちの熱意により、新しいTVの時代はすぐそこまできているに違いない。
 
プレバト!! TBS系列 毎週木曜 夜7時〜
 
 
 
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《7/28(日)までの早期特典あり!》

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事