メディアグランプリ

クラフトビール一杯800円は高いですか?


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:堀越のりこ(ライティング・ゼミ1DAY講座)
 
空前のクラフトビールブームを迎えている今、感じることがあります。
クラフトビールがあまりにも好きすぎて飲み会の計画が持ち上がると、必ずと言っていいほどクラフトビアバーなどに誘ってしまうのですが、それほどまでにブームの到来を感じていない方から必ずといって良いほど聞く言葉は、「クラフトビールって高いよね」。
 
確かに巷の居酒屋では競うように「生ビール250円」「ハイボール190円」などのポスターが貼られています。ハッピーアワーにいかに安く多くお酒を飲むか。これは私も常にチャレンジ意欲を高く持って臨み続けている課題のひとつです。充実したハッピーアワーを過ごせたら満足度激高。しかしそれは経済的効果によるものが大きく、「美味しいものを食べた」という美食的満足度とはちょっと異なります。
 
ではなぜ、美味しいものは「高い」のか。
北海道から直送した旬のいくら。
静岡の標高800mの山間で栽培された高級煎茶。
その希少性の高さや生産にかかる手間、製造に必要な特殊な技術、搬送にかかるコストなど価格が高くなる要因は多々考えられます。それでも購買者が、そこに付加価値を見つければ、その値段は「高い」とは感じないはず。オークションなどが良い例ですが、珍しいキャラクターのシール一枚に数万円払う人もいるなど、本当に欲しいと思う人にとっては、値段はただの数字でしかなく、「貴重なものを手に入れた」ということ自体が大事だったりすることもあります。もちろん自分なりの価格のリミットはあるにしても、他の人から見たら「何であんなモノに、あんな値段を……」なんて感じることも少なくありません。要するに「高い」と感じるのは、モノそのものの値段というよりも、値段とその人が感じる価値のマッチングではないかと思うのです。
 
クラフトビールは、大手ビールとは違い、ほとんどの醸造所が個人で運営されている小さなところ(いわゆるマイクロブルワリー)が多いです。2018年にクラフトビールブルワリーは全国300カ所を超えました。全国47都道府県のうち、ブルワリーがないのは長崎県だけ。同じ市内に複数のブルワリーを構える土地も少なくありません。それぞれの土地に根差した名産物を使用したり、地域そのものに強い思い入れがあったり、そしてそこからクラフトビールという手段で思いを発信したいと願う醸造家さんたち。私の大好きなブルワリーに岩手県盛岡市の「ベアレンビール」というメーカーがあるのですが、陸前高田産の北限のゆずを使った「ゆずヴィット」、岩手県野田村産の山葡萄の果汁を絞った「山葡萄ラードラー」など、季節ごとに岩手ならではの素材を使ったビールを発売されるため、1年を通じて飽きることなくビールを飲み続けることができます。また東日本大震災の際には、ビールを買うと購入額の一部を復興支援に使用することもいち早くスタートされ、大好きなメーカーの大好きなビールを飲むことで、大好きな街を支援することができるという取り組みは、地域創生について改めて考える機会をいただきました。
 
クラフトビールを選ぶことは、その様々な地域に思いを馳せることであり、造り手は、その思いを届けるために手間暇をかけ手て醸造に向き合っています。イメージ通りの味をカタチにするため、原材料の選定から、ホップなどのブレンドの割合、発酵の温度・期間などなど、こだわりにはきりがありません。ビールを作ったことがないので正確なことは分かりませんが、1つの味を生み出すまでに、多くの人の手と想い、そして努力と技術が集結されています。
 
春には桜、夏には桃、秋には栗、冬には柚子…と季節を感じる味を楽しめるのもクラフトビールの魅力です。その時々に、今しか飲めない旬の味を、それぞれのブルワリーらしいカタチにしてくれるから、長年同じブルワリーのファンでも飽きることがないし、同じ原料を使ったビールでもブルワリーごとの違いがあって、それもまた楽しいのです。
 
そして、ブルワリーの想いが詰まったクラフトビールを世の中にリリースするときに欠かせないのが注ぎ手の技。サーバーを通じて、醸造所の想いをどう表現するか。原材料の生産者、醸造家、配送、と様々なバトンを受け継いで最後に消費者に届けるためのアンカーであり、クラフトビールの味を決定づける最後の砦。それぞれのクラフトビールに合わせて、サーバーのセッティングを調整して、醸造家の想いを見事にカタチにしていく職人技。同じクラフトビールでも注ぐ人によって味わいが変わると言われているほど。
 
だからこそ、私たち消費者もあのクラフトビールはどのお店で飲むか、という楽しみが増えるのです。
今、目の前にあるクラフトビールにどれほどの想いと技術が詰まっているのか。
そう考えると毎回、有難くて幸せな気持ちになります。
クラフトビールに関わる全ての人に「ありがとう!」と叫びたいです。
そして今日もまた、どこのクラフトビールを飲みに行くか考えるだけで楽しくなるのです。
 
 
 
 
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2019-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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