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メディアグランプリ

人見知りにもできるコミュニケーション


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:水口綾香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は人見知りだった。当たり障りのない日常会話ぐらいは何とかなるが、人とプライベートな話題を話せるようになるまで最低でも1年近くかかるタイプだ。
そんな私が転勤で、富山→大阪→千葉→鹿児島→仙台と4年連続で毎年引っ越していた時期があった。
転勤生活で出会った人は全員もれなく人見知り対象となった。
仕事でかかわる最低限の人と、非常に事務的で最低限の会話だけで過ごす浅くて狭い人間関係。
職場を1歩出れば誰からも声をかけられることのない、人見知りにとっては大変快適な環境のおかげで、人見知りに磨きをかけながらぬくぬくと数年過ごしてしまっていた。
 
そんな生活が激変したのは、出産後初の引っ越しの後だった。
出産を機に退職して専業主婦になっていたので、職場の人との最低限の会話すらなくなっていた。
夫は忙しく平日はほとんど家に帰ってこなかったので、まだ言葉を話さない1歳の息子とほぼ2人の生活。下手したら24時間息子の発するアブアブ以外に誰とも話さない日が何日も続いた。
これには、磨きのかかった人見知りの私も、さすがに焦った。
 
まずい!このままでは、コミュニケーション能力が低いだけではなく、退化する……!
誰か大人と「会話」しなければ……。
 
でも、引っ越したばかりで会話しようにも知人もいない。とにかく、いつもの公園に行く途中、いつものスーパーに行く途中で見かけるご近所の方には挨拶をすることにした。
 
通りすがりの人だけでなく、庭に出てきていた方にもできる限り挨拶をした。
中には突然声をかけられて、ギョっとした顔をしている方もいたが、あまり気にせず続けることにした。誰かと「会話」するきっかけを作らないと、本当に退化してしまいそうだったからだ。
 
ところが、何度か挨拶をしているうちに、ギョっとした顔をしていた方が挨拶を返してくれるようになったのだ。
 
「おはようございまーす!」
「はい、おはよう」
 
ビックリするほど短いが、まぁこれも会話の最小単位だろう。人見知りにしてはよくやった。
一人会話ができる人が増えた。
 
そう喜んでいたら、翌日、なんとギョっとしていたおじさんはこっちに手をふってくれた。
 
「おはようございますー!」
「はい、おはよう!えらいね、挨拶して」
「ありがとうございます」
「ねぇ、この近所の人かい?」
「はい、そうなんですよ、最近近くに引っ越してきました」
 
なんと、会話ができた。
最初はギョっとしていたおじさんが、話しかけてくれたのだ。
聞けばおじさんは、最近の人は挨拶しても挨拶を返してくれないし、迷惑がられても困るから知らない人には挨拶をしなくなっていたそうだ。
それで、突然挨拶をされて戸惑ったのだそうだが、挨拶をしてもいい人もいるんだと嬉しかったそうだ。
それからそのおじさんはこのあたりの小学校の事など、地元情報をいろいろと教えてくれて、最後に「応援してるぞー!」と笑顔でエールを送ってくれた。
 
その2件隣のおじいちゃんとおばあちゃんも次第に挨拶していたら話かけてくれることが増えた。
やっぱりおじいちゃんおばあちゃんも、先のおじさんのように挨拶をしたら迷惑に思われるのではないかと思っていたそうだ。
おじいちゃんは3人の息子を育てて今ではひ孫もいるそうだ。ちょうど私の息子がひ孫と同じぐらいらしく、顔を見るのを楽しみにしてくれた。時にはお菓子を用意して待っていてくれる事もあった。
 
そんなこんなで、挨拶ついでにお話しできるご近所の方が少しづつ増えてきたころ、驚くことが起こった。
 
引っ越した家のすぐ目の前が町内会のゴミ収集所だったのだが、燃えるゴミの日の度に毎回カラスがゴミを荒らしていた。うちの敷地の中まで荒らされたゴミが散らばっていることがよくあった。
それを、ご近所のゴミ当番の方がウチの敷地のゴミまで片づけてくれることが増えたのだ。
 
賃貸に住んでいる私たち一家は町内会に入れなかったので、ゴミ収集所のそうじ当番は回ってこない。だから本来なら町内会の方はウチの敷地を掃除をする必要もなかった。
それでも掃除してくれたのは、挨拶した時に小さな子を連れていたから大変だろうと思ったからだったそうだ。
 
ただ会話がしたくて始めた挨拶は、わらしべ長者の物々交換のように応援や、お菓子や、掃除にグレードアップされて返ってきた。そしてそれは、賃貸にすんですぐに出て行ってしまう人という扱いではなく、そこに住んでいる人としての人間関係のスタートだった。
 
それ以来、どこに引っ越しても挨拶をするようになった。
最近では小学生になった息子が学校に行く途中でご近所の方に挨拶をしているようだ。
私はあまりお会いしたことがない方でも、
「あなた、あの子のお母さん? 息子さんがいつも頭を下げて挨拶をしてくれて、本当に偉いのよ」
と私まで挨拶できる息子の母としてお声がけいただく事が増えた。
 
挨拶は、会話が苦手で磨きがかかった人見知りにでもできる最小のコミュニケーションでありながら、地域の方と結ぶ最強のコミュニケーションだ。
ウソだと思う方にはぜひ、試してほしい。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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