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サラリーマンに告ぐ「カナリアを追え!」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 清水佳哉(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「いいかい? 考えたほうが良いよ」
 
初老の紳士は続けた。
 
「あなたが慕う優秀な先輩、あるいは上司かな。そういう人が、いや、そういう人に限って去っていくような、そんな組織だったら、本当にもう、よく考えなさいってことなんですよ」
 
銀行で総務を経験して何十年。
その方が私に向けて放ったセリフ、それが、ことのほか重くひびいた。
 
当時の私は、駆け出しの営業マン。
通い詰める得意先のご担当として、その方は居た。
 
何度も、何度も通って、設備投資に関する具体的な打ち合わせを進めていく。
そんな中で、先方も感じるところがあったのだろう。
 
若い営業担当は来るけれど、先輩社員の同行も、上司らしい人物の同行もなく、いつも独り。その、目の前の営業マンだって、前任者から交替したばかりで、要領を得ない。
 
「この会社、どうも社員の定着率が悪そうだ」
「何か組織的な問題を抱えているに違いない」
 
銀行で総務のベテランともなれば、そんなことは簡単に見抜けてしまうものなのだろう。
 
「さて、清水さん、少しお尋ねしたいのですが、今のあなたの会社の状況というのはこんなふうになっていたりしませんかねぇ?」
 
立場上、答えられないような質問も、イエス・ノー形式にされると、こちらの表情などで答えを引き出されてしまう。
 
私はまるで、ウソ発見器にかけられた、事件の容疑者のようなものであった。
 
「清水さん、私はあなたを応援します」
「でもね、あなたの信頼する人が、次々と去っていく。だとしたら、本当に考えたほうが良いですよ」
 
重いセリフを心の奥に飲み込んだまま、私はなお働き続けた。
 
それから5年ほど経ったある日。
私は、その時の方とはまた別の方と面談していた。
新しく赴任した転勤先の土地で。
 
その日はコンサルタントの先生との面談であった。
 
実は、私から申し入れた面談で、以前研修会でお世話になった先生が相手であった。
 
先輩や同僚が、次々に辞めていく、居なくなっていく。
そんな中、今度は私から先生への「相談」だった。
 
「こういう状況です。どうしたものかと考えているんです」
 
「清水さん。もしね、あなたが信頼する先輩たちが、順番に居なくなっていくようなら、その組織に居続けるべきなのか否か、きちんと考えた方が良いですよ」
 
驚いた!
5年前のあの方のセリフと、まるで同じじゃないか!
 
つまりは、まともな考え方を持った人間、先輩であれ、上司であれ、そういった人たちが居て、でも、そういった人たちが息苦しくなって、「とてもじゃないがこんなところには居られない!」と逃げ出すようなところなのであれば、それはもう、「息も出来ないくらいにひどい環境なのだから、さっさと逃げ出すべきだ」というのである。
 
まっとうな人、まともな人では息が出来ない。
 
「そんなところに居続けたら、あなたも、やられてしまうよ」
「だから逃げなさい!」
 
「それは、いけないことでも、恥ずかしいことでもなんでもないですよ」
「自分の命を守る、唯一の方法なのかもしれないのですから」
 
そうは言われたものの、
私が決断をするまでには、そこからさらに6年半の月日を要した。
 
どうやらその頃すでに、私の身体には毒がまわっていたらしい。
今にして思うと、もう完全にマヒしてしまっていたのだと思う。
 
「緊急脱出」というオプションの存在を、常に「意識」しておかなければならない。
そうでないと、異常が日常になってしまう。
 
毎日毎日、私のように知らないうちに毒に侵されて、身体も思考も、自由がきかなくなってしまうことすらあるのだ。意識がもうろうとして、「自分の意志では動けなくなってしまう」ことがあるのだ。
 
だから、出来るだけ早い段階で、自分の現状に気づいた方が良い。
 
自分自身の意識がはっきりしているうちに、身体が自由に動かせるうちに、組織という部屋の扉をこじ開けないといけないからだ。
 
「ガス室のカナリア」という話がある。
 
カナリアは、「その部屋に毒ガスがどのくらい充満しているのか」を知る、バロメーターなのだという。
 
あなたが慕う先輩は、あなたにとってのカナリアなのかもしれない。
 
日頃からよく見ておくことだ。
 
そして、「カナリアを追え!」
 
カナリアが逃げるなら、自分も逃げないとダメだ!
 
人生は一度きりだ。
でも、就職はいつでも、何度でも可能だ。
 
どちらを選ぶのか?
おのずと答えは見えているはずだ。
 
頑張ることは尊いが、頑張りすぎることは自滅を招く。
 
あなたが輝く場所は、あなたが今、居る場所ではないのかもしれない。
 
もし違うのであれば、探しに行かなければならない。
そして結局、今の居場所を飛び出すことになる。
 
頑張りきれずに逃げ出すのではない。
自分の幸せを探しに外に出るのだ!
 
新しい可能性に、チャレンジしに行くのだ!
 
さぁ、外に飛び出そう!
 
未来があなたを待っている。
 
 
 
 
***
 
 
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2019-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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