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人前で自己紹介をするのが苦手だった私が、セミナー講師になれた理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:植咲えみ(ライティング・ゼミ夏期特講)
 
 
「自己紹介ってなんとなく苦手」
そう思っている人は少なくないだろう。私もその一人だ。
しかし現実には新しい人と出会う度に自己紹介せざるを得ないし、仕事をするからには自分に興味を持ってもらわなければならない。
 
「私の自己紹介ってこれでいいのかな」
と相手の反応を見ながら探り探り、いまだに正解にはたどり着いていないような気がする。それでも苦手だった自己紹介がちょっとだけ得意になり、セミナー講師にまでなることができた経験から、自己紹介に対して気後れしてしまっている人にその秘訣を伝えてみたいと思う。
 
小学校のころを思い出して欲しい。
クラス替えの度に「あいうえお順」に自己紹介をした経験はないだろうか。
私はマ行だったから、ア行の人から次々と自己紹介していくのを見て、こんなことを言ったらいいのかな、こんなこと言ったらどう思われるのかな、と無駄にプレッシャーを募らせじっと順番を待っていた。
 
「サ行くらいの苗字だったらよかったのに」
なんてどうしようもないことを考えたりしていたのだから呆れてしまう。
それなのに、たまに先生が気分を変えて「今日は後ろから自己紹介しようか」なんて言われようものなら、心の準備ができず思ってもいないことを口走ったりして自己嫌悪に陥ることがよくあった。
 
とにかく、私は自己紹介が苦手だったのだ。
 
自己紹介も後半になるとだんだん間延びしてきて、「もしかしたら自分の自己紹介なんて誰も聞いていないんじゃないかな」と開き直るようになり、結局誰にも注目もされない、笑われもしない、無難な自己紹介をしてやりすごしていた。
 
私が働くようになると、今度はお客様に自己紹介をするようになった。正確に言えば、私は理学療法士として病院で働いていたので「患者さん」に対しての自己紹介だ。
初対面の患者さんには「私は理学療法士です。これから〇〇さんのリハビリを担当します。よろしくお願いします」といった内容だ。
 
理学療法士の仕事をしていたときは、これ以上の自己紹介を求められることはまずない。
仕事は毎日勝手に与えられるし、そもそも病院の中にいる限りは自分を売り込む必要は全くなかったからだ。
 
それから15年後、長年勤めていた病院を辞め、私は病院勤めという組織の後ろ盾も、課長という役職も何もなくなり、無職に限りなく近いフリーランスとして野に放たれた。
 
しまった、自己紹介の仕方が良く分からない。
 
無難な自己紹介をしていた学生時代、個性よりも技術を求められる職業を長く続けていた自分が、今更まともな自己紹介ができるわけがない。
 
何か参考になる自己紹介はないだろうか。そんなとき、私は小学校で強烈な印象を受けた自己紹介を思い出した。
 
「すんちゃんって呼んでね」
すみれちゃんという名前のその子は恥ずかしげもなく、自己紹介でそう言い放った。
衝撃だった。自分で愛称を強要するなんて、そんな恥ずかしいこと私はとても言えない。想像しただけで赤面してしまう。
でも、大人になった今でもその透き通った明るい声は私の脳裏に焼き付いている。
 
私はフリーランスになってからしばらくして、必要に迫られてセミナー講師になった。
冒頭での自己紹介も毎回お約束のようにもちろんあるが、どうしてもあたりさわりのない無難なものになってしまう。セミナーのアンケートを見ると内容に関してはある程度満足してもらえているようだったが、セミナーが終わるとみんな足早に帰ってしまう。セミナーの内容に私という存在が完全に負けてしまっていた。
 
「誰がやっても同じようなセミナーなら私じゃなくてもいいかも……」そんな思いが頭をよぎる。
 
セミナーで疲れた体をひきずりながら、ソファーに倒れ込んでいると、やたら元気のいい声が聞こえてきた。
 
「たった一つの真実見抜く、見た目は子供、頭脳は大人、その名は探偵コナン!」
 
私は度肝を抜かれた。毎週聞くあのフレーズ、だけどなんか最後まで聞いてしまう力強い声。
 
「これだ!」と私は思った。
 
全然意味のわからないことを紹介しておきながら、しかも自分で名探偵とか言ってしまっているのに、とても引き込まれるような説得力がある。なぜだろう、と考えた。
 
あ、この感じ、小学校のすみれちゃんと一緒だ。
 
自己紹介における秘訣は「根拠のない自信」だと私は確信した。自尊心、もしくは自己肯定感とも言い換えられるかもしれない。すみれちゃんとコナン君に共通しているのは、自分に対する自信があふれ出ているのだ。すみれちゃんは「すんちゃん」という愛称を誇らしげにみんなに伝えていたし、コナン君は体が小さくなっても変わらない自信を持ち続けている。
 
そうか、私に足りなかったのは自信だったのかもしれない。
 
それからというもの、私は自己紹介のときは根拠のない自信を身にまとい、コナン君のようにどや顔で自己紹介をするようになった。すると不思議なことに、セミナーの雰囲気が一気に変わった。手元のレジュメではなく、キラキラした目で私を見てくれている。
 
私は確信した。
 
あの力強い声、頼りがいのある自己アピール、もしみなさんが自己紹介をする機会があったらためしに名探偵コナンになり切ってみて欲しい。
 
 
 
 
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2019-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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