70代でも少年、少女のように輝いている人たちがいた
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記事:佐藤薫 (ライティング・ゼミ平日コース)
「私も子供の頃は勉強することが大好きだったのよ。若い人たちは良いわね」
話の途中で義理の母が言った。
若いと言っても50歳に近い私は世間的には決して若くはない。
そんな私は今、女子大生だ。
といっても私が勉強している大学とは、ある大学の通信学部。
通信学部なので在宅での勉強。テキストを使って学習し、課題のレポートを提出する。レポートを出すと日本各地の試験会場でテストを受けられる。レポートとテストの両方を合格して初めて単位を取得できるというもの。
このレポートもテストも難しいと評判で、評判通りほんとうに簡単には合格できない。
また、夏には横浜の大学でスクーリングもあり、普段は一人孤独に勉強している人たちが全国から集まってくる。
夏のスクーリングが1週間から3週間なので、働いている人は会社を休んでくるわけだ。
私も8月の初めにスクーリングに参加してきた。
毎日8時45分から17時15分までびっしりと授業がある。
「今更なんで勉強?」と大学に行っていることを話すと周りの人には言われるけど、楽しいんだからしょうがない。大学で勉強することを自分で選んだのだから、勉強が好きなんだと思う。
最近、ツイッターで「大学はいかなくてもいい」という人と「いやっ大学はいくべきだ」という人でバトルしているのをみかけたが、そもそも大学って何のために行くものなんだろうなとふっと思った。
大学卒という学歴の為という人もいるかもしれないが、単純に勉強したいという理由で行くのが一番、自然な気がする。
私の子供も大学2年生だが、ほぼ嫌々行っているのに私立大学なので年間、学費だけで110万円もかかる。「この授業は行かなくても単位くれるから行かない」と平気で遅刻や欠席を繰り返す。
「勉強が嫌いなら大学に行かなくていいのに」と思うが、今どきの子供たちはそう簡単には行かないらしい。勉強したいからというより皆が行くからとか、行かないと就職の時に不利になると思い込んでいる。
そういう私も自分の高校時代、大学にいく意味が分からないまま受験し、そして不合格になった。その時、簡単に浪人するつもりだった私を母は許してくれなかった。結局、どうしても大学へ行きたいという情熱も無い私は母を説得することもできず、専門学校へと進んだ。
「あなたが本当に勉強したいと思った時に大学へ行けばいい」母に言われた一言がずっと忘れられなかった。
あれから年月が流れ、子供が大学に行くような年になり、やっぱり勉強したいなという思いがムクムクとわいてきた。
「とにかく何か勉強したい」そんな思いで調べた結果、通学のように学費が高くない通信制の大学を見つけた。昔から興味のあった哲学や心理学を勉強しようと思って入学した。
スクーリングのために実際に大学へ通うと驚くことがたくさんある。
まず、来ている人の年齢層の幅広さ。若い人はもちろんだが、70、80代も普通にいる。
授業の中でディスカッションもあるが、同世代のような感覚で話ができる。
そう、義理の母世代の人たちがまるで少女のように目を輝かせながら勉強に励んでいるのだ。
だから、この大学では「何のために勉強しているんですか?」なんて質問はヤボな気がしてしまう。
そして、学生たちの熱量がすごいのだ。みんな地方からお金、時間をかけてやってくる。
1週間、2週間と仕事を休むのだって大変だったに違いない。
だから「先生の話を全部、吸収したい。もっといろいろ教えてほしい」という思いがあふれているのだ。なので、授業中「何か質問ありませんか?」と先生が聞けば、どんどん手が挙がる。それは授業の内容を超えて、深いところまで聞いてくるから、先生も本気じゃないとしどろもどろになる。
実際、今回のスクーリング中の学生の質問に対して先生が「すいませんっ、その質問は持ち帰らせてください」という場面が幾度かあった。
長い授業時間中も寝ている人の姿はなく、休み時間も質問したい人で列ができているのだ。
なんだか、この光景に感動してしまった。
私はスクーリングに参加して「もっと貪欲に。学ぶということに集中しないと恥ずかしい。生半可な気持ちじゃなく、この機会にもっと深く勉強をしよう」という気持ちで帰ってきた。
この話を義理の母にしたら「もう、わたしなんて勉強してもしょうがないわ」という答えだった。同じ70代でも「もう、勉強しても仕方ない」と思うのか「勉強することが楽しくて幸せで仕方がないのよ」と言って、ただ勉強をすることだけに喜びを感じることができるのか? とても大きな違いがあるような気がする。
「知らないことを知ることは楽しい」というただ、それだけ。「何のために大学に行くのか?」とか、「将来、役に立つ勉強をしないと」なんて考えずに、ただ、ただ勉強を楽しみたい。勉強とは本当に心躍ることだと思う。
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