あの体験が白昼夢にまで出てくる。NYに行ったら絶対見るべき、「没入」という名の体感型ショー。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:ヘルズキッチン(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
「誰にも教えたくない。でも共有したら、話したくてたまらないパフォーマンス」
と知人に誘われ、ブロードウェイ街よりちょっと外れたエリアに足を運んだ。
このNYで、ショービズのもっとも最先端なのはイマーシブ(没入型)シアターだ。没入型演劇とよばれ、一癖も二癖もあり、通のニューヨーカーに愛されている。
観光でNYに行ったら「ライオンキング」や「オペラ座の怪人」、はたまた話題のブロードウェイミュージカルを観劇する方も多いだろう。言葉がわからなくてもキラキラした世界に誘われ、楽しくも美しい音楽やセット、素晴らしい歌唱に酔いしれる。
反面、そんなNYに、それらとは一線を画し一部の人がリピーターとなって熱狂する、奇妙なシアターが数年間話題を集めている。
それは「スリープノーモア」というイマーシブ(没入型)シアター。
なぜ、これがこんなにもウケているのか。
誰もが体験したことのないいくつもの裏切りがあるのだ。
ネタバレでは言い尽くせないぐらいなので、触りだけを語ろう。
まず、ストーリの基本はシェークスピアの「マクベス」。
その場その部屋で行われているパフォーマンスから、その話を知らなくても、ストーリーを自分なりに推測していくという不思議な構成。
知らなくても想像力が膨らむし、知っていればなおさら奥深く物語に入って行ける。
まず、シアターとの違いは、言語が無く、何人もの妖艶なパフォーマーが予測不可能に突如現れ、観客全員が会場を歩き回れるということだ。
会場は迷路になっており、いくつかの階層に分かれているが、広さはトータルで東京ドームぐらい広大な一棟ビル。
入場して、最初に通されるのは、スモーキーなジャズバー。きついアルコールを配られ、何だかそれですでに気分が舞い上がる。
一杯飲んだら、観客全員が白い不気味なマスクを被らなければならない。
「全員が同じマスク! 誰が誰だかわからない! 不安しかない!」
そしてエレベーターで上階に誘導された後、観客はバラバラにさせられるのだ。
部屋は100近くあり、廃墟になったイギリスのゴシックな病院のイメージ。
ほぼお化け屋敷!
ただ、センスはデカダンスな大人の世界で、どこか洒落ている。
友人と行ってもいずれ行方不明になる。
そして自分の気になる役者を追っかけて、どこまでも、どこまでも進んで行けるのだ。
私も友人数名で行ったのだが、いつのまにかはぐれて、誰も居なくなっていた。
突然、きしんだドアからブロンドの妖艶な女性が出てきて、何も言わずに私の手を取り、小さな部屋に一人連れていかれる!
「えっ!?ちょ、ちょっと、俺一人??」
小部屋で彼女は、小さな紙に書かれたメモを渡してきた。英語で書いているが、読んでみてもよくわからない。彼女は私をガン見している。ブロンドの女性に見つめられたことのない私は、汗がじわっと出てくる。
「何を伝えようとしているのだろう」
五感はフル稼働。ただ、予測のできないパフォーマンスをしてくるので、戸惑いしかない。その小さなメモを私の胸ポケットに入れて去って行った……。
次々に展開されるその芸術的なパフォーマンスは、2時間後あたりから終わりを迎える。
いつの間にか、この広大な建物から、観客ほとんど全員が集まり、集会のように最後を見届ける。
その神秘な儀式は、前世で見たイニシエーションのようであり、幻覚のようで、夢のような瞬間なのだ。
会場のビルを出た後、私はその夢から覚めず、とても奇妙な気分になっていた。
デジャブ。
心理的なところまで入り込んだイマーシブシアターは、予想を上回り、イメージとして私に「憑いて」くるようになった。
没入型というより、憑依型?
ただ、それは美しいアートで肉体と芸術の究極的に美しいインスピレーションの憑依なのだ。
ものを生み出す人、クリエイターやアーティスト、新しいものを求めている人にはぜひ体感してもらいたい。
それぐらいに、あの瞬間のイメージがフラッシュバックのように日常にあらわれる。忘れられないものだ。
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