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「男飯」作る理由はその笑顔。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:しん(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ねえ、ねえ。今日は何作るの?」
「さぁ、何が出来るかな? 冷蔵庫の残り物に聞いてくれ」
 
週末の私のルーティンに「ご飯を作る」というものがあります。
 
料理するなどという、おこがましいレベルのものでなく、冷蔵庫に
あるもので短時間で作る程度の賄い飯。いわゆる「男飯」です。
 
ご飯を作るのが、趣味なわけではありません。
高級な食材も香辛料も使いません。
手の込んだ調理方法なんか、そもそも分かりません。
 
・一人当たりの材料費は100円以内。
・できれば残り物で済ますことが出来ること。
・調理時間15分以内。
・それでいて見た目は手の込んだ料理に見えること。
・洗い物など、後片付けが極力簡単に済むこと。
・そして、なにより食べてうまいこと。
 
これらが、私の男飯の定義です。
 
では、なぜ週末のルーティンに「ご飯を作る」のか?
 
そもそもが、料理をするという習慣自体が、私にはありませんでした。
「おれは稼いでるんだから家のことはやらない!」「男子厨房に入るべからず!」を地でいく、古い価値観の日本のお父さんでした。
 
ある日の休日。
遅く起きてリビングに入ると、そこには不機嫌なオーラを纏った家人がソファーに座ってスマホをいじっていました。なにか文句を言うわけでも、態度が荒々しいわけでもないのですが、明らかにいらだっていることが彼女の放つ空気感から伝わってきます。
 
「おはよう。飯は?」
「私お腹減ってない」
 
私お腹減ってない……。
 
「なにをぉ~!!! てめーの腹具合聞いてんじゃねえよ! 娘に飯は食わせたんか! 俺は一家の大黒柱だ。それが休みに飯も用意されてないのか!? てめぇ、それでも主婦か!?」なんておっかなくて言えないので、娘にそっと聞いてみました。
 
「朝ご飯はたべたのか?」
「うん。パンケーキ食べたよ」
「ママ、なんで怒ってるんだ?」
「知らない。なんか疲れてるんでしょ」
 
疲れてる……。
家にこもりがちな、専業主婦を良しとしない家人は、パートで働いています。週に3日程度ですが、平日は家事と仕事の両立で、自分のための時間はほとんどありません。子供の習い事の送り迎えも、隣家に住む義父の食事のフォローも、平日は家人の役割です。確かに疲れるでしょう。確かに休日の食事くらいは私が作って、彼女に休息の時間が出来れば、家庭は穏やかになるだろうし、何より言葉だけでない、感謝の気持ちを伝えることができる。
 
こうして、家人のご機嫌取りのために、私は休日の食事をつくることにしました。
 
初めて作ったのは「もやし炒めトマトソース風」
大量のもやしをフライパンで炒め、そこに、残り物の豚バラ肉とトマトを適当に切って、合わせてさらに炒める。塩胡椒と顆粒コンソメで味整えて出来上がり。
 
大したものではないけれど、黙って作って、食卓に並べ、家族に声をかけました。
低カロリー、低予算でお腹を膨らませるために作った昼ごはんです。
 
ところが、これが娘に大好評! 一口食べると目を見開き、満面の笑顔で、こういったのです。「おいしいねぇ~。なにこれ? もやし? パスタみたい! いけてるじゃない!!」
 
次の日も「パパ、もやしぃ〜」と満面の笑みでおねだりされました。
家人も「意外とやるじゃない。後片付けもできてるし、どこで覚えてきたの? ありがとう。」と穏やかな笑顔で食事のリクエストをしてきました。ソファーに寝転がりながらではありましたが……。
 
ドーパミンどっかーん!!!
 
家族に限らずですが、私は人から喜ばれると調子に乗ります。
「周囲を笑顔にする名バイプレーヤー」これが私のセルフイメージです。
 
自分の行動の影響で、人が笑顔になることで、自己肯定感が急上昇するのです。
名脇役がその演技で、主演俳優を輝かせ、作品全体を素晴らしいものへと高めた時の達成感、満足感のようなものでしょうか。
 
家族の笑顔とテンションに触発され、調子に乗った私は、その日以来、休日になると冷蔵庫や戸棚を覗き込み、今ある食材で、何ができそうかと考えるのがとても楽しくなりました。
 
いや、正確に言えば、考えるのが楽しいのではありません。
 
作った男飯を、楽しそうに食べる家族の笑顔を見るのが、たまらなく嬉しいのです。
以来、大したご飯でもないくせに、様々な男飯を作っては「どう? どう?」と感想を強要して、いささかうっとおしがられている今日この頃です。
 
家人のご機嫌取りで、ご飯を作ることだけがゴールだったなら、多分すぐに飽きていたでしょう。面倒臭く感じて、もう作らなくなっていたかも知れません。
 
ご飯を作るという、ゴールの先にあるものがイメージできた時、ワクワクして、「ありがとう」という言葉と笑い声が聞こえてきて、家族の笑顔が目に浮かび、ご飯を作ることがルーティンになったんです。
 
ご飯を作ることだけでなく、私は何かを始めようとしたとき「それをやったらどうなる?」とゴールの先を想像してみます。そこに誰かの笑顔が浮かんだら……。
 
ドーパミンどっかーん!!!
自然と体が動き出します。
 
単純で、お調子者の、私なりのモチベーションの作り方ですが、意外と霊験あらたかです。
 
 
 
 
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2019-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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