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ハシビロコウが更年期を緩和する


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤根悦子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
ああ! どうしよう!
また時間が足らなくなる。
もっと早く始めればよかった。
昨日、あんなに丁寧に掃除なんかしなきゃよかった。
 
そんなふうに、いつも締切日ギリギリまで、仕事に追いつめられる自分。
いや、そうじゃないだろう。
自分を追いつめているのは仕事じゃないよ。
自分自身じゃないか!
 
どれだけ時間の使い方が下手なのだろうか。
そして、時間が無いときに限って、やたらと掃除がしたくなる。
 
まさに現実逃避だ。
心理学的な理由はあるらしいが、自分はドップリとその淵にはまっている。
 
仕事は協会に属して講師をしている。
講座の他にも、レシピの作成や原稿など、協会から依頼されるものや、個人的に企業から依頼されるものもある。
ほとんどのものに、締切日が存在するのだ。
これを守らなければ、一気に信用を失ってしまう。
それほど重要なことなのに、なぜもっと余裕を持って取り組めないのか、自分で自分が情けなくて嫌になってくる。
 
その上、主婦であり家族がいる。
炊事、洗濯、掃除、買い出し、全てが自分に課せられる。
仕事が終わっても、主婦業は終わらない。
一日中走り回って車輪を回す、ハツカネズミのようだ。
 
しかし、ときどき電池切れを起こすことがある。
体力の限界というやつだ。
特にそれは、高齢の母の病院への付き添いの日に起こる。
体力も限界を迎えるが、精神的なストレスは、それを上回るようだ。
 
帰宅後に私はダウンして、数時間の眠りについてしまう。
ひどいときには、そのまま夜まで眠ってしまうことがある。
目が覚めたとき、どうしようもない後悔が私を襲い、慌てて夕飯の支度を始めるのだ。
 
そして終わらない仕事を、夜中にゴソゴソと始める。
それはハツカネズミなんて可愛いものではなく、もはやゴキブリだ!
 
結局、睡眠不足となり、翌日の倦怠感に繋がり、またもや仕事から逃避をしてしまう。
こんな状態が良くないことは十分に承知しているが、自分ではコントロールできない理由がある。
それは更年期だ。
 
ホルモンバランスの崩れによって、精神的にも生理的にも健康状態に狂いが生じる。
病院でホルモン剤を処方されれば緩和するはずなのだが、私はそれをしていない。
理由は単に病院と薬が嫌いだから。
しかしそれが仕事に影響を与えるなら、さっさと病院に行けばいいと思われるかも知れない。
嫌いな病院に行くことも、私には大きなストレスになるのだ。
だから母の付き添いであっても、病院に行くことで異常に疲れる。
 
こんなとき、カメラに入れてあるSDカードの中の写真を整理していたら、上野動物園に行ったときの画像が出てきた。
 
その中に写っているハシビロコウは、私をとても驚かせた。
動かないことで一躍人気となったハシビロコウだ。
身長は120センチくらいで体重も5キロくらいと、鳥としては大きい方だが、何と言っても目つきが悪い。
そして何を考えているのか、いつまで経っても動かない。
 
「これは、ずっと見ていたら飽きるな」と思ったとき、小さな子供がやって来た。
するとハシビロコウは、体を膨らませて羽を大きく広げた。
 
「動いた!」
どうやら、子供の突拍子もない動きが嫌いなようで、威嚇を始めたのだ。
子供は驚いて親の元に走って行った。
威嚇成功だ。
 
そしてまた、じっと立っているだけになった。
閉園時間のアナウンスが流れたので、移動しようと思ったときだった。
バケツを持った飼育員がやって来た。
するとハシビロコウは、まるで別の生き物のように、スタスタと走って飼育小屋の中に消えて行った。
 
走った!
その動きは、コントのようにユニークな走り方だった。
想像を裏切る行動だったが、ハシビロコウだって自然界では敵に襲われることもあるだろう。
逃げなければ命がないので、走っても不思議はない。
別に驚くようなことではないのだ。
嫌なものが来れば威嚇をする。
エサが来れば追いかける。
ハシビロコウにとっては、自然の行動なはずだ。
 
それなのに私は感動すら覚えた。
なぜなら、いっさい無駄がないからだ。
 
じっと立っているのは、ボーッとしているわけではない。
目と神経は周囲のリサーチをしている。
だから必要なときには、サッと行動に移る。
 
なんと素晴らしい!
私とは真逆だな! と、自己嫌悪に陥った。
完全に負けているじゃないか!
 
いくら更年期だからといっても、仕事の言い訳にはならない。
ハシビロコウより落ちる生活など、いい加減にケリをつけるべきだ。
 
ハシビロコウ以下から脱出する方法は、夜はしっかり睡眠をとることで、人間として自然な生活をすることだ。
 
理想の睡眠時間は7時間前後だといわれているが、私は4時間程度しか寝ていない。
睡眠時間が少ないことを自慢げに話す人がいるが、それは決して自慢にはならず、健康リスクが高いことを認識しなくてはいけない。
 
免疫システムの弱化、体重増加、ストレスの増加、認知機能障害、気分の変動、血圧の上昇、事故増加のリスク、慢性疾患のリスクと、考えただけでも恐ろしい。
 
更年期に睡眠不足が加わると、更年期の不快な症状が強化される。
正に負の連鎖だ。
体は眠っている間にメンテナンスされるのだ!
 
しかし、逆に睡眠時間が長すぎるのも死亡率が高いという報告がある。
どちらも極端なことは自然に反する。
適した時間で質の良い睡眠をとることが、人間として自然な生活だ。
それは更年期の困った症状の緩和にも、繋がるに違いない。
 
 
 
 

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2019-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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