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メディアグランプリ

「憧れの場所」のリアルを知って


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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氏名:Momo(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
Facebookが時々知らせてくれる、過去の思い出。つい先日、そこにカンボジアに着いた初日の夜、みんなで夕食を食べた時の写真が流れてきた。
 
カンボジアに引っ越し、仕事を始めて、1年。振り返ると、あっという間だった気もするし、長かった気もする。未だにカンボジアに住んでいるということが信じられず、朝起きたら実は全てが夢だった、なんてことがあるんじゃないかと思ったりもする。
 
こっちに来て、住んで、働いてみて、感じたことは山ほどあるが、一番強く感じるのは「憧れの場所は辛さ、苦しさ、難しさで溢れていた」というリアルだ。
 
大学から、途上国開発の仕事に憧れていた。まずは企業で力をつけようと、新卒で民間企業に入り、4年間夢中で働いたのち、転職。
国際協力系のNGOで、寄付を集める資金調達部門に入った。しかし、この部門は日本が主な活動地であるが故に、支援している現場が非常に遠く感じた。自分が何のために寄付を集めているのかも良く分からなくなり、よく知らない現地のことを我が物顔で話して、寄付を募ることへの罪悪感が日に日に心に蓄積されていき、自分のモチベーションが保てなくなった。
もっと、現場の近くに行きたい。現場の最前線で、受益者の顔を見ながら働いてみたい。そうしたら、何か変わるかもしれない。
 
でも、現場経験はないし、英語で仕事したこともないし、中途半端な私が行っても役に立てないかもしれないし……と行かない理由を並べつつ、でも行きたいんだよなぁと、うだうだする時間が1年ほど続いた。
 
しかし、そんなタイミングでプライベートに変化があり、長年付き合っていた彼氏と別れることになった。実は毎日が喧嘩ばかりだったにもかかわらず、ずっと固執していた彼との関係を手放すと、不思議なほど毎日が爽やかで、軽やかなものになった。
手放す、という決断をしてみると、こんなに世界が変わって見えるのか。
その経験は、私を変えた。
 
行ってどうなるか、は行かないと分からない。
今の不安を手放し、決断して一歩踏み込めば、このもやもやした毎日が変わるかもしれない。爽やかで、軽やかな毎日が待っているかもしれない。
半ば勢いで、カンボジアへの転職を決めた。
 
あれから、1年。
 
カンボジアに来て感じたことは、山ほどある。もちろん良いことも、悪いことも。
 
カンボジア人の屈託のない笑顔と、おおらかさ。
心が空っぽになり、そこに温かいものが満たされていくような、農村の豊かさ。
そこに生きる人たちの、しなやかな強さ。たくましさ。
 
でもこの1年どうだったか、と聞かれると、辛くて、苦しくて、難しい、1年だった、と答えると思う。
 
憧れていた現場の仕事は、想像以上に難しさと苦しさに溢れ、日本で働く以上に、もやもやだらけだった。
 
途上国に住むこと。
価値観の全く違う人と働くこと。
農村に住み、厳しい環境下で暮らす女性たちが抱える問題を一緒に解決すること。
そして、その一つ一つのプロセスの中で、嫌というほど自分に向き合わされること。
 
海外の現場に行けば、きっとモチベーションは自然に上がり、毎日エネルギーに燃えながら、働ける。そんなことを夢見ていた。でも、私にとって、現実は理想と違った。もちろん楽しさややりがいもあるが、それを圧倒的に上回る難しさや苦しさがあった。思った以上に自分のモチベーションが保てなかった。現地の人たちのために、働ききれない、むしろ、スタッフには不信感が募ってしまう自分がいた。それに気づき始めた時は、ものすごく自分を責めた。
 
でも、現場の「苦しさ」を知れた、ということが、私にとってはカンボジアに来た最も大きな収穫だったのではないかと、1年経った今は思う。
 
現実は、自分が思っていた理想とは大きく違ったが、ここに来ていなければ、想像と違うということすら知ることはできなかったから。そうでもなければきっと、日本でずっと現場を夢見て、行こうかな、行けるかな、でも…の繰り返しを限りなく続けていただろう。
憧れの場所のリアルを知る、というのは、私にとってものすごく大きな意味があった。
 
そんな私は今、また悩んでいる。
もちろん、もう1年くらいは、現場で頑張ってみようと思う。でも、ずっと長年憧れてきたこの現場は、私が心からわくわくと働ける場所では、ないのかもしれない。というか、私自身、開発の仕事に固執していたのかもしれない。
それを手放すとするならば、一体次はどこで、何をするのだろうか。また、もやもやしている。
 
でも、それは不思議と、重苦しいものではなく、わくわくしたもやもやだ。
私にとって、この新しいもやもやに出会うためにも、現場のリアルに出会うことがきっと必要だったんだと思う。
 
自分が持っているもの、憧れているものを勇気を持って手放す。悩んでいることに、腹をくくって、飛び込んでみる。そうすると、見える景色がある。
私自身も、自分のこれからに、どんな景色が広がっているのか楽しみだ。
 
 
 
 
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2019-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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