きものという、自分たちの文化
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:英凉 <はなぶさ りお> (ライティング・ゼミ日曜コース)
ここ15年近く、自分で「きもの」を着るようになり、その魅力にはまりました。平均すればほぼ毎週のように、積極的に袖を通しています。
ところできものは、普段わたしたちが着慣れているTシャツと共通する点があります。それは、始めは下着だったということ。
諸説ありますが、ヨーロッパ派生のTシャツはアメリカ兵(海軍)の制服の “下着“となり、彼らが退役後、鍛えられた身体の上にTシャツだけを着て街を歩く姿が注目され、1930年代ごろからアウターとして一般に広がった、とも言われています。
「きもの」も元は「小袖」といって、平安時代までは「唐衣(からぎぬ)」「表衣(おもてぎ)」などアウターの下に着用する“下着”でした。戦国時代に入ると、邪魔なアウターを脱ぎ去った動きやすい小袖姿が定着していったようです。
細かく想像すると、きものもTシャツも、若い世代が下着をアウターとして着始めたのだろうな、としか思えません。「下着で歩き回るなど、今どきの若いもんは!」と、上の世代は眉をひそめていたことでしょう。昔も今も感覚は全然変わらないものです。
こうして、下着からアウターへと変化し、シンプルだったきものもTシャツもどんどん洗練されていきます。特にきものは数百年かけて、当初の白地から色地に変わって柄が乗り、織られたものや染められたもの、素材も絹・木綿・植物の枝葉など、多様をきわめてカジュアルからフォーマルまで幅広く進化しました。ついに大正時代には、現代のアイドルもびっくりの、ステージ衣装のようなカラフルで大胆なデザインのきものが、おしゃれ着として出回りました。
そしてきものは、
・日本の気候にあっている。体温高めの男性も、ネクタイは無いし下はスースーでさわやか。
・特に女性にはうれしい効果がたくさん。体の芯が全く冷えない、姿勢良く優雅に見える、きものと帯が複数あれば組み合わせて違ったコーディネートを楽しめる、エトセトラエトセトラ。
きものと帯の取り合わせだけでなく、実は重要なのが帯締めと帯揚げ! 帯のちょうど真ん中あたりに締めている“紐”と、帯ときものの間を埋めている布のことです。言われてもすぐに頭に浮かばないくらい小さな存在、だけどその威力は計り知れません。ここを変えれば、きものと帯が一緒でも全体の印象をガラッと変えられるくらいの力があります。逆に、帯締めと帯揚げがイケてない着こなしは、カラメル無しのプリン、またはワサビ抜きのお寿司くらいに、ふぬけたものになるので要注意。
そして何と言っても私が魅了されたのは、きものが「自分を着飾るためにあるのではない、相手のために着るものだ」ということです。例えば、結婚式の時には、新郎新婦を祝う気持ちを表すために、松や鳳凰、吉祥文様などの柄が入ったきものや帯を着用して、場を盛り上げるのです。とても日本らしく、素敵な考え方ではないでしょうか。
一方で、壁もあります。自分で着られるようになった時にどすんとぶつかるのが、「半衿」の壁。衿を取り替えるためにいちいち裁縫するのがめんどくさい!確かにそうなんです。けれど、何度もやっているうちに不思議と乗り越えられます。そしてボタンつけなど日常で針を持つのがおっくうにならなくなるというメリットも!
高いという問題もありますが、安いきものも増えてきました。また一度手に入れたら一生着られるので、長い目で見れば得な部分もあります。そしてこれから需要が増えて、一人の職人さんを多くの人が支えるようになれば、伝統的な手法で作られたきものも、手に入れやすい価格になるでしょう。
伝統の技がなくなってしまう前に、第二次世界大戦で断ち切られてしまった、装いというジャンルの自分たちの文化を取り戻したい、と願うばかりです。
私も、以前はきものに全く興味がなく、自分で着られるようになりたいという気は起きませんでした。難しくて帯結びなんて壊滅的だし、不便だし、第一なんだか古臭くてダサいのよね、と思っていました。そして、たまにきものを着る時は、半分コスプレ気分でした。
おそらく、どなたも似たような感覚をお持ちなのではないでしょうか。
そんな自分ではありましたが、今は猛反省! 知れば知るほど「こんなに素敵で、奥が深くて、色・柄・テクスチャーを考えながらのコーディネートが楽しいものって他にない!!」という思いが強くなっていきます。ただの食わず嫌いで、きものに触れずに来てしまい、ああ、なんてもったいない時間を過ごしてしまったのだろう! と。
仕事で日本文化の発信に取り組み始め、きものの一つも着られないのでは説得力がない、と考えたことが、自装(自分で自分に着付けること)の教室に通い始めたきっかけでした。でも、きものについて勉強するうちに、どんどんその素晴らしさに気づき、すっかり魅力にはまってしまったのです。
みんなが当たり前にきものを着る時代が戻ってきてほしい、というのが私の願いです。古いものでも何でも良いので、もし機会があれば、一度きものを着てみませんか。
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