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お墓まいりのススメ


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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松尾 美紀(ライティング・ゼミ特講)
 
「お墓まいりにいってもいい?」
と休日の朝、主人が言った。
(えっ!? 今日はモーニングついでにモールでお買い物がしたかったんだけどなあ)
と思いつつ
「え〜っと……いってもいいけど」
と不機嫌そうに答えてしまった。
このニュアンスが伝わらないはずもなく
「なんでそんな言い方するの。いつもそうだよね。イヤならイヤって言えばいいのに」
と険悪なムードが漂う。
(あらら、やっちまった。どう返す?)
と悩んだが
「今日はモールへいきたかったんだけど、お墓でいいよ」
と正直に話した。
 
モーニングを食べて、供花を買って、主人の祖父母が眠るお墓へいく。
 
ほぼ月一の決まりごとである。
 
お墓まわりの雑草を抜いて、枯葉をはき、お花、ろうそく、線香を供える。
清められた空間で、義理の祖父母にいっぱいお願いごとをする強欲な孫嫁。
おじいちゃんはきっと笑っているであろう。
おばあちゃんはちょっと苦笑かな。
 
祖父母とも主人が小学校にあがる前に亡くなっており、主人の祖父母の記憶もあいまいだし、私は全く知らない。
 
ほぼ月一のお墓まいりをしだしたのは、ワタシである。
 
我が家は超零細工場を営んでいる。
これが浮き沈みの激しい業種で、沈みきったときに
(おばあちゃんに報告しないと……)
となぜか思った。
主人のあいまいな記憶によると、義祖母は下駄屋さんを営む働きもので、昼間は下駄屋さん、夜は繕い物と常に身体を動かしていた人らしい。
義祖父が亡くなり、数年後に義祖母が亡くなったあと、義父が超零細工場を立ちあげた。
「おばあちゃんが健在だったら、反対されて立ちあげられなかっただろう」
とは主人の見解である。
その後、数十年も続けられているのは、義祖母の見守りもあるのかもとワタシはにらんでいる。
ならば報告しないとが最初だった。
 
昼休みに
「ちょっと出かけてくる」
と主人に言い残して、お花屋さんで一番高い供花を買って、バビューンとお墓へ走り
(おばあちゃん、ご無沙汰しております。お義父さんが立ちあげた工場がちょっと危ないです。シゲちゃんもワタシも踏ん張ってますが、おばあちゃんもどうかお守りください)
とおまいりして帰った。
 
その後、超零細工場はなんとか浮かんだ。
 
それから事あるごとに、ひとりでお墓へ報告しにいくようになった。
それがほぼ月一だった。
 
主人が付き合ってくれるようになったのはいつごろだったからかは記憶にないが、いつの間にか、ふたりで行くようになった。
 
お墓のある町内は、主人が中学卒業まで育ったところである。
ワタシたち夫婦の仲人さんも同じ町内でお茶屋さんを営んでいらっしゃった。
お墓まいりするたびに、仲人さんご夫婦に会いにいき、お抹茶とお茶菓子をご馳走になったり、周囲を散策して思い出話を聞いたり、お墓のある寺院の変わっていくさまに目を見張ったりで、ワタシたちの思い出も一緒に紡がれていく。
 
お墓を整え、お墓に手を合わせて、このひと月にあったことを報告して、長い長いお願いごとをするだけだが、気持ちの整理整頓にもなる。
 
人間関係が希薄になり、混沌とした現代社会において、ワタシにとっての義祖父母のお墓のように、聞いてくれるだけの存在は、誰にとっても必要なのかもしれない。
 
パワースポット巡りや御朱印集め。
人はいつの時代にも人智を超えた存在に願いをこめる。
その存在がワタシにとっては、義祖父母のお墓のようだ。
 
数年前に義父が
「墓じまいして、お世話になっているお寺さんの納骨堂にお骨を移そう」
と提案してきたことがあった。
ワタシは自分の気持ちをすくい上げてくれる場所が亡くなることが、淋しかったこともあるが、よくよく調べてみると、墓じまいが簡単ではないことが解った。
書類をかき集めるために、各所に足を運ぶのはワタシの役目となる。
嫁であるワタシは、ある書類以上を取得するには委任状を必要とする。
委任状を持って、時間のある時にせっせと動かねばなるまい。
 
しかし、このタイミングでの墓じまいにメリットを感じなかった主人の意見で、この話はご破算となった。
義父は、お寺さんの手前、ちょっとご機嫌斜めになっていたらしいけれど、仕方あるまい。
 
でも、いつかは墓じまいをしなくてはいけないとは考えている。
主人とワタシと両家のお墓をだ。
両家とも跡継ぎがいないため、周囲のご迷惑になることが必至だからである。
 
主人の家のお墓は寺院内の共同墓地、ワタシの家のお墓は地区内の共同墓地にある。
ワタシの側は墓石の数も多く、ご先祖様がどのくらい眠られているか把握していない。
記録魔だった父が何かに記録していたかもしれないが……。
 
それまで月一のお墓まいりは欠かさずしよう。
義祖母が喜んでくれそうな、豪華なお花を供えて、いっぱいいっぱい報告して、いっぱいいっぱいお願いしよう。
 
お盆があったのに、今月はまだ顔を出せていないので、そろそろおばあちゃんに報告しにいこう。
なんとか生きてるよ〜って。
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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